第2話 すすり泣き
階段を降りる。
道を塞ぐのは亡霊だけではなくて、瓦礫のせいで通れなくなってる場所もある。
ただの瓦礫を吹き飛ばす時、見知らぬ亡霊を吹き散らす時、ベルナリオさんを追い払う時。
ギロームの表情は全て同じだった。
ギロームは通路を進む。
あたしはギロームの肩の上で寝たフリを続けながら、逃げ出すタイミングを計る。
ギロームの“太もも”を蹴りつけて、相手が痛がっている隙に……と……頭の中でシミュレーションをしていると……
どこからか、すすり泣きのような声が聞こえてきた。
(……?)
その声は複雑な通路の壁に反響したり、壁の穴を通り抜けたりしながら、近づいたり遠ざかったりをくり返した。
男の人の声ではない。
大人の声ではない。
死霊魔道に殺された人の亡霊は、今までに見てきたのは大人の男性ばかりだったのに。
それに、今までのやつらは誰も、声どころか物音一つ立てなかったのに……
唐突に、その声から反響が消えた。
すすり泣く声が、曇りなくあたしの耳に届く。
ギロームと思いがけず鉢合わせして、真っ赤に泣き腫らしたマリアちゃんが、ビクリと立ち止まった。
「…………」
ギロームは何の感情も見せず、瓦礫や亡霊にしたように、マリアちゃんに向けて魔法攻撃の構えを取る。
マリアちゃんはすくんで動けない。
いけない!
あたしはギロームの“股間”をハイヒールで思い切り蹴飛ばした。
キックの力ではなくて、銀であることが魔の者に効いたのだと思う。
部位の問題については知らない。
ギロームは、珍しくうめき声を上げて床に膝をついた。
「こっちよ!」
あたしはギロームの腕から抜け出し、マリアちゃんの手を引いて走り出した。




