第5話 差し込む光
天井の穴が広がって、上の階のさらに上から光が射し込む。
ガラガラという音……
幻聴ではない確かな音を響かせて、無数の瓦礫と二つの人影が降ってくる。
瓦礫は床にたたきつけられたけど、人影は空中で止まった。
二人それぞれの腰に結わえたロープで引き止められたのだ。
そしてそのままクルクル回る。
二人組……
だけど二人ともベルナリオさんやギロームよりもずっと小柄だ。
「……誰?」
答える余裕はなさそうだ。
しばらく待つと、回転が緩やかになってきて、二人が身につけている金属の鎧兜が見えてきた。
「亡霊……じゃあないわよね」
亡霊にしては二人とも、やけに健康的なお肌だ。
そういえば、と、視線を下ろすと、あたしを襲った亡霊達は、いつの間にか一人も居なくなっていた。
頭上の珍入者に、亡霊なりに危険を感じたのかしら?
やがて回転が収まる頃、天井の穴の縁で削れてロープが切れて、一人が墜落。
それを見たもう一人は、自分のロープをナイフで切って、あたしが居る床に着地した。
「ユリ姉、大丈夫ですかっ?」
「んー、じょぶじょぶ」
二人目が一人目を助け起こし、一人目は鎧についた塵を払って、あたしの方に顔を向けた。
「勇者系美少女シスターズ参上~!」
妙なポーズを決める一人目がユリアさんだってことは、割りと早い段階でわかっていたけど。
その横で恥ずかしそうに会釈する二人目がセリアさんなのには、たった今、気づいた。
「紹介するね! この子はあたしの妹のセーちゃん。こっちが例のハーちゃん」
「はっ、はじめまして! セリア・ワトキンスです!」
「どーも。どんな“例の”なのかは存じませんが、ハリエット・ハミルトンです」
舞台を観たことについては、面倒臭いので黙っておいた。
だってもし感想を言えとか求められても、棒読みと厚化粧の印象しかないし。
だけどこうして普段の姿を見てみると、なかなか清楚な、育ちの良さそうなお嬢さんね。
着ている物がちょっと意味わかんないけど。
ユリアさんの鎧は、伝説の勇者の遺物だって言われても納得のいくような、装飾だらけの華やかなデザイン。
対してセリアさんの鎧は地味で、お芝居で言えば勇者の引き立て役の一般戦士風の、実用一辺倒の物のように見える。
が。
どこの国の軍隊も当たり前に鉄砲を持っていて、鉄板ぐらい簡単に撃ち抜いてしまうこのご時世に、鎧なんぞ着込んで実用もへったくれもったもんじゃないわな。
見てるだけでも重たそうだし。
「ところでハーちゃん、何でこんなとこに居んのぉ?」
「その緊迫感のなさからすると、お二人はあたしを助けに来てくれたわけじゃあないみたいですね」
「やー、うちのお姉ちゃんを捜しててさー。
黒衣城の一階部分を探索してたら、突然、床が抜けちゃってねー。
用心してロープつけてたのはいいんだけど、これが長すぎちゃってー。
地下一階に落ちたと思ったら、また床が抜けて地下二階。
さらに床が抜けて地下三階……っとくり返して、ここまで落ちてきたってわけ。
しっかしこのお城がこんな地下深くまであったなんて初めて知ったわ。
もしかしてハーちゃんが第一発見者?」
「いえ。たぶん第三ぐらいです」
ギロームとベルナリオさんが居るから。
「んじゃ、あたしらは第四発見者かー。あたしが四番でセーちゃんは五番ね」
「お二人とも、もっと早く来れば一番になれたかもしれないのに。昨日とかその前とか」
そうしたらあたしもこんな目に遭わずに済んだかもしれないのに。
「いやーあんまり派手なことして死霊魔道を刺激しちゃマズイかと思って様子を見ててさー。
そしたらベルさんがナンかもっと派手なコトしてイバラを強行突破したなんて聞いちゃったもんだから。
こりゃ、あたしらもグズグズしてらんないってんで、大急ぎで気球を用意したのよ」
「って、気球でイバラを越えてきたんですかっ? ベルナリオさんよりもよっぽど派手ですよ!」
「それよかハーちゃん、うちのお姉ちゃん見かけなかった?」
「見てません」
会ったのは男二人だけだから、少なくとも姉ではないでしょう。




