第6話 銀髪のソフィア
「う~ん、まいったなー」
ユリアさんが腕組みをして天井を見上げる。
「黒衣城って、思ってたよりもずっと広いみたいですし、いったいどこから捜せばいいのか……」
セリアさんは不安げに、瓦礫に埋もれた通路を覗く。
「いや、それもなんだけどさ、どうやって上へ上がろうかって」
「へ?」
「だってほら、ロープ、あの高さじゃ届かないし」
「あ……」
「てか、何でセーちゃんまで降りてきてんの? 上に残って引っ張り上げてくれれば良かったのに」
「えええっ?」
「あたしのロープはあの高さでちぎれちゃってるからどーしよーもないけど、セーちゃんのは切らずに解けば使えてたかも」
「ど、どうしましょう……マーちゃあん! マーちゃあん!」
「庭園までは聞こえないでしょ。気球のそばを離れるなって言ってあるし」
「で、でも待ってれば、様子がおかしいって気づくかも……」
「待つのは苦手」
そういうとユリアさんは、何を思ったか壁の一点をガシガシと蹴りつけ始めた。
すると。
ガラガラガラガラ……!
見る間に積み石が崩れ、その向こうにある別のスペースと繋がった。
「いやぁ、他の壁は穴だらけで後ろの土が見えちゃってんのに、この壁だけキレイだから何かあるなって思ってさ」
「わあ! ユリ姉、さすがです!」
……他の壁だって自然に壊れたわけじゃあないんだけど、それには気づいてないみたいだな……
頬を指で掻くあたしをよそに、ユリアさんはのんきな仕草で肩かけカバンのフタを開けた。
何を出すかと思っていると……
さらり。
銀色の髪の束が、カバンの中から流れ出た。
「あたしら四姉妹の長女のソリアお姉ちゃん!」
いきなりあたしの鼻先にヌッと突きつけられたので、最初はソレが何なのかわからなかった。
ガラス玉のような紫の瞳に、すべらかな肌。
人形のように小さな体……
いえ……
それは“のような”ではなくて、正真正銘のぬいぐるみだった。
「本当はソフィアって名前なんだけど、それだと一人だけ仲間外れみたいだからソリアってしてるのね。
この人形は末っ子のマーちゃんが夏休みの宿題で作ってね、ソリ姉にそっくりなんだ。これがあってホント助かったわー」
……人相書きのつもりだろうか。
だけどこれでは目と髪の色ぐらいしかわからないし、それに……
その色が、ギロームの目や髪の色とおんなじで……
たまたまだとは思うけど、何だか嫌な感じがする……
左目の周りの刺繍はモノクルのつもりかしら?
だったらギロームとは違うわよね。
「ソリ姉、黙ってないで、あいさつしてよ」
ユリアさんが人形の頭を指で小突く。
……亡霊とかとは別の種類の怖さがあるんですけど。
その横でセリアさんもリュックサックをガサゴソしているのに気がついて、今度は何を始めるのかと、あたしは一歩、後退りした。
けれど出てきたのは至ってマトモなランタンだった。
「そんじゃ、レッツ・ゴー!」
ユリアさんはセリアさんの手からランタンを引ったくり、先陣を切って通路に踏み込んでいった。
あまりの強引さにあたしは目をまんまるくしたけれど、セリアさんは気にする風でもない。
セリアさんはリュックからもう一つランタンを取り出して、お先にどうぞとあたしを促し、列の最後尾についた。




