エピローグ
これにて完結致します。
長く更新が止まっていたにもかかわらず、今日までお付き合いくださいましたこと、大変有り難く感じております。閲覧、お気に入り、感想、評価、まことにありがとうございます!
「確かにどこへでもとは言いましたが、さすがに国境をこえるとは思いませんでした」
真白は数度瞬き目の前の景色に唖然としていた。彼の視線の先も私と同じ、木々に覆われた森が広がっている。確かにちょっと場所を変えましょうのノリで国を変えられたら驚くわね。
「心配しなくても無事に家まで送り届けるわ。規約違反なら心配無用、私には上位権限があるの」
「そうまでしてここへ?」
「ここはかつてルベイラ家のあった場所だから」
「ルベイラというと、連盟でも重役を勤めている魔法界きっての名家?」
「君がたくさんあんなことを言うから……私も懐かしくなったみたい。こっちよ」
慣れ親しんだ山道を歩けば波音が聞こえ始める。たとえ生まれ育った家がなくなったとしてもここは変わらない。海を見渡せる開けた丘には小さな碑石が立っている。
「ここに私の家族が眠っているの」
「それって……」
「私はリリーシア・ルベイラ。かつて公爵令嬢と呼ばれ、歴史的には死んだことになっている女よ。君が家族の話ばかりするから、私も会いたくなったのね。残念ながら話すことはできないけれど」
「どうして僕を連れてきたんですか?」
「私の自慢の弟子だから。弟子で……大切な人だから」
「七夏さん!? それどういう意味ですか!?」
追及され、返す言葉に迷う。確かに答えは決めたけれど、送るための言葉までは考えていなかった。情けないことに緊張しているみたいだ。
「……来年のクリスマスも、一緒に過ごすという意味よ。頭がいいんだからあとは察して!」
「いいんですか? 都合の良い解釈をした上で捏造するかもしれませんよ!?」
執拗に追いかけてきたくせに、真白はただ驚くばかりだ。やられっぱなしも悔しいし、少しだけ気分が良かった。
「好きにすればいい。この七年ずっとそうだったじゃない。その度に折れるのは私で……」
私の長すぎる人生のうちでは七年なんて一瞬のはずが、真白との七年はやけに濃かった。
本当に嫌なら逃げる手段はいくらでもあった。他人なんて気にせず冷徹に振る舞えばよかっただけ。でもそうしなかったのは、今日までこの関係を続けたのは私の意思。
少なからず真白に期待をしていた。呪いをといてくれるかもしれないから――いいえ、それだけじゃない。私を孤独から救ってくれるかもしれないと、期待した。
「君との八年目を始めてもかまわないと、それくらいの感情は抱いているのよ」
「式はいつ挙げますか! あ、その前に入籍ですね!」
気が早いにもほどがある。私、別に告白の返事をしたわけじゃないのよ? そうよね!?
「君、私は八年目を始めても構わないと言っただけ。さっそく捏造しないで」
けれどきっと、また折れるのは私なんだと思う。なんとなく、そんな予感がある。
「でもまずは――」
あれこれ未来予想を語っていた真白はとたんに黙り込み碑石へと向き直る。
「ルベイラ家のみなさん、初めまして。連条真白です。彼女は僕が絶対に幸せにします。七年後も百年後であろうともそばに居続けます。ですからどうか安心してください」
ああもう――
これだから真白はっ!
まるで彼の想いに応えるように風が吹き抜け、波は見守るような調べを奏で。真白はすべてわかっているとでも言うように微笑み、優しく眼差しを和らげる。
「僕の愛は深くて重いので、覚悟してくださいね」
我慢も限界。今度こそ私は涙を流していた。
「望むところよ。私の呪い歴を甘く見ないことね」
そう、私は呪われている。
あまたの呪いをこの身に受け、長い長い時を生き続けた。そうしてこれからも生き続けるわ。この時代を――真白と。これが現代まで生きてしまった呪われ魔女の出す答え。
呪われ魔女完結!
言ったり言い返されたり、してやったりやり返されたり。そんな日々を繰り返しながら二人はこの先も一緒です。たとえ呪いという障害が立ちはだかろうと真白はめげませんので。
最強の主人公だけど年下の天才に振り回される話が読みたい一心で書き始めた本作ですが、心の同志様がいらっしゃいましたら有り難く思います。最後は季節ネタということで本来タイムリーにクリスマス付近に投稿する予定で執筆しておりましたが……書いても書いても何か違う、二人はこうじゃない! という想いから改稿に改稿を重ね――現在に至りました。本当に長くお待たせしてしまいましたこと、申し訳ありませんでした。最終話、少しでもお楽しみいただけておりましたら幸いです。
お付き合いありがとうございました!




