ゴジラとインコの一日
おバカ短編小説シリーズです。ストレスをなくすためにみんなでぼけまくりましょう。でも、世の中こんな人いたら、大変になるでしょうね。
私は、西江 郁。40代、れっきとした“おにいさん”である。
特技はマジック。趣味はゴジラ崇拝。ここ、大事だ。
その日、私は仕事で東京に来ていた。
――ならば行くしかない。
トー横のゴジラへ、参拝に。
都会の喧騒の中、私は一人、神々しいゴジラ像を見上げていた。
ああ……尊い。
背びれの造形、完璧。破壊神としての威厳、満点。
完全に“入って”いた、その時だった。
「ねえ、おじさん。私、買ってくれる?」
……来た。
突然すぎる現実の侵入。しかも角度が雑だ。
私は、ゴジラへの信仰心を一瞬だけ脇に置き、ゆっくり振り返る。
そこには、超・短いミニスカのギャル。
なるほど。そういうことか。
だが、こちらもただの40代ではない。
「えっ、飼うの?」
私は真顔で言った。
「う~ん、欲しいけどね。うちではちょっと飼えないかなあ」
ギャル、固まる。
よし、第一段階成功。
さらに私は追い打ちをかける。
「それとね、“おじさん”じゃない。“お・に・い・さ・ん”ね」
――ドヤ顔、決まる。
普通なら、ここで相手はフェードアウトする。
しかし。
「じゃあさ~、おにいさん。ゴジラじゃなくて、私を買ってよ」
……しつこい。
しかも、ゴジラを見ていたことまで把握している。
観察力だけは一流か。
(仕方ない……奥の手だ)
私は小さく、しかし確実に呟いた。
「……淫行」
ギャル、首をかしげる。
「え?」
その瞬間。
私はスッと左手を上げ、
「セキセイ!」と叫ぶ。
そして軽く咳払い。
すると――
なぜか、左手から小鳥がポンッと飛び出した。
『インコー、インコー』
……セキセイインコである。
しかも、絶妙にまずい単語を連呼している。
ギャル、完全フリーズ。
私は何事もなかったかのように踵を返し、新宿駅方面へ歩き出す。
左肩には、インコ。
歩きながら、私は満足げに呟く。
「今日はツイてるなあ。ゴジラ参拝もできたし、娘にも自慢できるし」
思わず笑みがこぼれる。
「ふっふっふっ……なあ、インちゃん?」
『サイコー、サイコー』
……いい相棒である。
一方その頃。
しばらく固まっていたギャルは、ゴホッと咳き込み、ふと真顔になった。
「……真面目な大人になろ」
その一言が、彼女の人生の分岐点になるとは、
この時、誰も知らない。
――こうして、西江郁とインちゃんの、ちょっと不思議で、とても平和な一日は幕を閉じたのだった。




