17:まほアクのキャンペーン
「雪村くん、今日のまほアク見た!?」
日曜日の午後二時。
私は自分の部屋のベッドに座り、雪村くんとライン通話していた。
「見た。衝撃だった。まさかオルカが正式に仲間入りするなんて……!!」
雪村くんも動揺しているみたいだ。
今日のまほアクで、イルカちゃんの双子の弟・オルカくんは魔法少女ならぬ、魔法少年に変身した。
そして、悪の組織と戦う主人公たちの仲間に加わった。
これまでの魔法少女アニメの長い歴史の中で、一時的に動物や男の子が変身することはあった。
でも、女の子以外が『正式に』仲間になるのは初めて!!
ネットはもう、大騒ぎ。
『魔法少女アニメなのに、なんで男がメンバー入りするんだ! そもそも男は魔法「少女」じゃないだろ!』
『いやいや、男の子だって魔法を使って良いと思う。魔法少年、全然アリ』
視聴者の声は大きな嵐を起こし、SNS『ツブヤイター』のトレンドもまほアクのことばかり。
でも、ざっと見た限り、好意的な反応が多かったと思う。
さらに、このタイミングで、まほアクの公式SNSはこんな告知を出した。
『まほアクのオープニング曲『マジカル☆レボリューション』を踊ってSNSに投稿しよう! 抽選で100名様にオリジナルアクリルキーホルダーをプレゼント! 女の子も男の子も、お母さんもお父さんも、大きいお友達も大歓迎! みんなで楽しく踊ってね♪ 詳しくは公式チャンネルをチェック!』
まほアクの公式チャンネルでは、参考用のダンス動画が公開されていた。
「まほアクのSNSも見た?」
「みんなで踊ろうっていうやつだろ? 見たよ。プレゼントのアクキー、可愛かった。みんな、フリフリのドレスで、星と花がいっぱい飛んでて……アクキー自体もキラキラ光ってて……ああ、もらえる人がうらやましい……」
うっとりしたような雪村くんの声には、心の底からの『ほしい』がにじみ出ていた。
雪村くん、めちゃくちゃほしいんだ……。
だったら、私がいま言うべきことは一つしかない!
「……ねえ、雪村くん。アクキーが当たるかどうかはわからないけど、ダメもとでチャレンジしてみない?」
私は酷い運動音痴で、体育のダンスも「ロボットダンスみたい」って笑われちゃったけど。
でも、雪村くんがこんなにほしがってるなら、頑張ってみたい!!
「えっ。踊るってこと?」
相当びっくりしたらしく、雪村くんの声がひっくり返った。
「うん。男の子も、大きいお友達も大歓迎って書いてあったし。私たちが踊ってもいいでしょ。多分、私たちが入るサイズのコスプレ衣装は売ってないから、自分たちで作ろうよ。抽選って書いてあるけど、魂を込めて作った衣装を着て、一生懸命踊れば、アニメスタッフさんの目に留まると思うんだよね。目立つことができれば、当たる確率も上がる気がするし。どうかな? やってみない?」
私はドキドキしながら雪村くんの返事を待った。
もし雪村くんが嫌だって言えば、すぐにあきらめるつもりだった。
十秒くらいして、雪村くんは小さな声で言った。
「……でも。まほアクの曲なんて踊ったら、ファンだってバレる……」
「!」
思わず、スマホを握る手に力がこもった。
踊ること自体が嫌ならどうしようもないけど、ファンだとバレるのが嫌っていう理由なら、いけるかも!?
「そこは大丈夫! ちゃんと考えてるから!」
私は自信たっぷりに言った。
「私が頼み込んだってことにすればいいんだよ。『ど~してもアクキーがほしいっ! イケメンの雪村くんと一緒に踊ることで目立って、少しでも当選確率を上げたいの!!』って、私に泣きつかれたから、仕方なく、ってことにすればいい」
「いや、それじゃ花崎さんが悪者みたいになるだろ。嫌だよ」
雪村くんは困惑しているみたい。




