プロローグ
この国に突如として侵攻を開始した鉄車帝国と、その野望を食い止めるべくどこからともなく現れたチャリオットスコードロンの戦いは、世界の全てを変えてしまった。
もちろんもっとも大きな変革を求められたのは舞台となったこの国であり、その後の世界をこの国が生きるには今まで存在した三軍の防衛組織だけでは足らない処まで追い込まれてしまう事態となる。
何もできず良いように国土を蹂躙されてしまっては、専守防衛を専門としていた武装組織の存在理由を問われる有り様だったわけだ。しかし、それだけ手出しができないほどの脅威でもあった、この二つは。
そんな常識を超えた強さの二つへ対抗するために、この国には陸海空以外の防衛組織がいくつか創設されることになる。
それでも新たな戦いの為の準備をしている殺伐とした空気はなく、どことなくのんびりとした雰囲気なのはなぜだろう。
常識外の戦いがようやく終わってくれたというそんなゆるやかな開放感に包まれた中、この国は新しい時代へと進み始める。
――しかしこれは、この国が実際に歩んできた歴史なのか、それとも彼女の為に用意されたものなのか。
だがそれは、一度終わってしまった世界のサイハテの向こう側へ行くことを決めた彼女が選ぶことなのだから、我々には知り得ないことである。
そして全てを知るのはW.R.T.のみ。