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精霊姫の章5

「本当に行くのー?」

「えぇ、私がやらないわけにいかないでしょ」


旅支度を整えたカインの隣でニアが腰に手を当ててみせる。

「村の復興も心配だけど……俺はニアの契約者だからね。一緒に行くよ」

「あったりまえでしょ!契約した精霊と人間は離れれば力が弱まるんだから」

少し前までカインを毛嫌いして邪険に扱っていたニアはどこへ行ったのか。

ふん、と偉そうに腕を組んでいるもののしっかりと隣を陣取っている。


「こっちはディーネがいるから大丈夫よね?」

「はい、お任せください。姫様」

「本当にディーネに任せて大丈夫なの~?」

淡々と頭を下げるディーネに心配そうにノームが何も映していないような瞳を覗き込む。

どんよりと昏いディーネの瞳にはノームが見えているかもわからなかった。

「大丈夫よ。本当ならディーネと契約してくれる人間も一緒に残しておくのが確実だけど……私がいなければ私の世話をしなくていいから警備に集中できるはずよ」

ディーネは基本的にニアに忠実だが現在キャパシティが小さく複数の命令を同時にこなせない。


"ニアの身の回りの世話をする"


という役目から解放されれば


"森の警護をする"


に集中できるはずだ。


「ニア、俺がディーネと契約すれば……」

「だっダメダメ!なんでそうなるのよ!」

遠慮がちに声をかけたカインに慌ててニアが言い返す。

僅かに頬に赤みを帯びてカインの腕を引く様子は人間味があった。

「カインは私の契約者でしょ!?」

「重複契約もできたと思うけど……」

ニアがなぜ慌てているのかわからないといった様子のカインにノームが微笑ましげにくすくすと笑う。

「理論的には可能なの。でもやめておいた方がいいと思うの」

ノームに笑われたカインはきょとんとして顔を上げる。

「精霊の位が高ければ高いほど契約者の人間にかかる負担は大きいのよ。姫は精霊の中で最高位に属しているからさらに次点のディーネと契約なんてしたら貴方の生命力がすぐに尽きてしまうの」

精霊の女王テイターニアと契約した時点でカインに掛かる負担は相当なものだ。それに負けずサラマンダーと契約した人間を撃破したことはそれだけで相当な素質があったことを伺わせる。


「とにかくっ!カインは私の契約者!ディーネは強いし心配いらないからカインは私と一緒にサラを追うわよ!わかった!?」

「わ、わかったってば……ニア、なんで怒ってるの?」

「怒ってないわよバカイン!!」


どう見ても怒っているニアにカインは困惑しノームはさも面白そうにくすくすと笑っていた。

怒鳴られたカインはそれ以上フォローの仕様もなく首をすくめた。



「じゃあ、ノームは別行動で情報収集をお願いね。お互いに契約してなくてもサラと戦おうとしちゃダメよ」

「うみゅ~……わかってるの」

本日何度目かになるかわからないニアの忠告にノームが聞き飽きたというように困った表情を浮かべる。

「いいわ。じゃあここで解散するわよ。いい、全員無事にまた再会しましょ」

「かしこまりました」

「はいなの!」

「うん!!」

ニアの掛け声に三者三様の返事をするとにっこりと笑みを浮かべる。もちろんディーネだけは変わらず無表情だったが。


人間と精霊。

平穏が保たれていたふたつの種族の均衡が崩れようとしている。


争いを阻止するため小さな共同戦線の幕開けだ。


願いはたったひとつ。

どちらの種族も争うことなくどうか平和な世に。


旅が、始まる――――




精霊姫の章・完

こんにちは、夏生レイです。


まずはここまで読んでいただいたみなさん、ありがとうございました。

10年ほど前に二次創作小説(原作の世界観を元にした創作キャラのお話)を書いていた人間なので久しぶりの文章執筆と初めての完全一次創作小説でした。

多々拙いところもあったかと思いますがおひとりでも気に入ってくださる方がいれば光栄です。


本作は一応練習を兼ねた短編として書き出したものですのでここで一旦完結です。


ただ、書いているうちにモブキャラとして出したディーネさんの過去を書きたくなったりしたので一応続けてもかけるように精霊姫の章とサブタイトルを付けました。

ファンタジー系のゲームなどをやっている方には薄々(はっきりと?)気づいているかもしれませんがディーネの真名はウンディーネです。なので水精霊の章はこんなことを書きたいという構想があります。

続けるなら今回裏切り者キャラとなってしまったサラマンダーとの対決も書かなきゃなぁ、となると火精霊の章か?というところから水と火を書くなら今回サポートに徹してくれたノームの土、未登場の風精霊の章も書かないと、というところで書くかどうかは未定です。

カインとニアのふたり旅もドタバタしそうなので面白くなりそうですが…(笑)


本来テイターニア(国によってティターニアやタイターニアともいうようです)は精霊ではなく妖精なのですが今回はごちゃごちゃになることを防ぐために精霊で統一しています。読んでいてあれ?と思った方は正しいです。また、作中で女王、姫というふたつの呼称が出てきますが精霊の女王ではあるけれど幼い外見なので周囲にいる近しい精霊は親しみを込めて姫と呼んでいます。


続編については読みたいというご意見を頂ければ書こうと思います。感想欄やtwitterでもいいのでいただければ嬉しいです。

私の考えているお話が長くなりそうなお話ばかりなので次はどれにしようかと悩み中ですが近いうちに新しい連載を始めようと思っています。


カインとニア、新連載のキャラクターともどもよろしくお願いします。



夏生レイ 2015.06.22

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