4.はじめてのダンジョン、はじめての戦闘
洞窟入りま~す。
戦闘入りま~す。
ゴブ数匹は雑魚? いやいや、油断大敵ですよ?
□ードスリプレイであの騎士が思わぬ不覚で事故ったのは当時有名でしたからね。
「ち、仕方がねー、いちお、やってやる」
エアは(プレイヤーも)頭を抱えた。
さてメンバー構成が変わったのだ、隊列も考え直さねばならない。前線で戦える戦士が三人、出たら死にそうなのが二人。そして洞窟は二人並ぶのが精一杯。最初から選択肢はなさそうだ。
「俺とキートンが前、ローマスが中衛でキルシュとエルグが後方、でいいのかな?」
バックアタックされると怖いが、武器を振るう時でなければ脇を移動するくらいはできる。今回はそう気にすることもないだろう。
「俺はキートンの後ろがいいな」
エルグが言った。
「弓を持ってるんだ。キートンは背が低いから、頭上を通過できるだろう?」
「あ、それいいな。とすると」
ドワーフは背が低く、対してエルグはそこそこ長身ということで認められたけど、本当はどうなんだろう?
まあ、まだワールドガイドもなく、魔法効果なども改定前だった頃の話だし。
しばしごちゃごちゃと相談していたが、やがて決まった隊列で一行は洞窟へと踏み込もうとした。
「うー、なんかヤな感じぃ」
とキルシュ。
「ちょい待った。キートンなら見えるだろうけど、俺たち人間には闇の中は見えないんだぞ」
本来洞窟で生活するドワーフには、種族特性として暗視がある。完全な暗闇でも彼らの目ははっきりと物を見ることができるのだ。
「俺もインフラビジョンがあるから」
エルグが威張った。精霊使いであれば、精霊たちの働きを「視る」ことができる。それによって、暗視ほどではないがある程度の視覚を確保できるのだ。
「じゃあお前先頭行けよ」
エアが意地悪く言った。
「俺じゃみえないんだもんな。頑張れよぉ」
「はいはい、明かり点けるから」
ほんとーに、大丈夫なんだろうか。こいつら……。
などというGM、及び一部のプレイヤーの危惧もものとせず、この急拵えの珍奇な五人パーティは(半分も亜人間なんてのは一般的に珍しい方だろう)、たいした怪我も負わずにゴブリン共を撃破しつつ洞窟の奥へと順調に向かって行った。
エアがマトックを外しまくったのは予定外だったが、データを確認すると当たればダメージは出るが、非常に当てにくい。武器は命中率を重視したほうが良さそうだ。やはり選択は他人に任せるものじゃない。
村長の娘を見つけられないまま、一行は洞窟の奥へと進んでいった。それも、自然洞窟ではない。途中から何者かの手が入った様子がはっきりと見て取れた。ゴブリンが掘ったのだろうか。奴らは何が目的で娘を連れ去ったのか。
特に手がかりも得られず、不安だけが募っていく。
そんな彼らの行く手を扉が塞いだ。
「どうやらここが最奥部らしいな」
扉を一目見ただけでエルグが断定した。
「どうして判る?」
「ゴブリンの知恵なんてたがが知れてる。奴らの欲求の度合いもな。
しかしこの扉は、随分と新しくて豪勢じゃないか」
彼の指摘のとおりだ。その扉は単なる洞窟、それもゴブリンの巣には不釣合いなほど立派だった。ということはそれを設置した、ゴブリン以上の知性を持つものが居るはずだ。あるいはそいつがゴブリン共を操っているのではないか。
さて、と一行が暫し立ち止まっていると。
「ね、エア。魔法使わないんでしょ? ちょっと精神点分けてちょうだい」
キルシュが尻尾のようなエアの後ろ髪を引っ張った。彼女の唱える魔術師魔法は小さな魔物を易々と打ち倒してきたが、その代償に多くの精神力を消耗していた。
「俺にも頼む。ファイア・ボルトは疲れるんだ」
こちらはエルグ。彼が操るのは、この世界に数多いる精霊たちの力を借りる精霊魔法だ。気難しい精霊たちを誘導するのも生半なことでできはしない。
エアとキートンだけが今のところ魔法を使っていない。というのも治癒魔法はローマスに任せ、戦士ふたりは作戦通り(つまり、「おまえ突っ込め、俺も突っ込む」式)に戦ってきたからだ。
「ん、わあった。どのくらい?」
「こっちもいいぞ。どうだ、ローマス?」
ドワーフももう一人の神官戦士を見上げて申し出た。
神官魔法にはほとんど直接攻撃的なものは無い。が、守り癒すことに掛けては他の追随を許さない。中でも先の治癒魔法もだが、精神点移譲というのは初歩魔法であるが非常に便利でかつ重要なものだ。精神力が尽きて魔法を唱えられなくなったり失神したりした者も、これで精神力を分け与えれば目を覚まし、あるいは新たに魔法を唱えることができるようになる。手っ取り早くいえば、予備バッテリーだ。
戦士ふたりがぶっ倒れない程度に精神点移譲を行ってから、盗賊の心得を持つ半妖精が扉に向かった。その鋭敏な感覚で扉を丹念に調べ始める。
その背後で、四人は各々武器を握り締めていた。
鍵はさほど面倒じゃない。だが扉の向こうに何者かの気配を感じた。それが村長の娘なのか否かまでは判別付かない。もしそうでも、ゴブリンが残っていないとも限らない。扉を開けて自ら確かめるしかないようだ。
カチリと小さな音がして、エルグはゆっくりと振り向いた。
「開いた」
一旦エルグは下がる。替わりに鎧の厚い戦士たちが前に出て、一気に扉を開いた。
ソードワールドの、当時ちょっと気になるポイントの一つが、「当たらない」。
低レベルだけじゃなく寧ろ高レベル帯での発生。
まあ避ける避ける。で、うっかり当たるとトンデモダメージで即瀕死という恐怖。
この冒険の後、武器を買い直しましたよ流石に。だって命中マイナス2じゃ、器用度ボーナスと相殺しちゃうんだもの。当たるわけない。




