第1話の1 「お~、これはすごい光景です」
農作物に恩恵を与えた雨季が終わり、強い日差しと真夏の空が広がっています。
吹き抜ける風は穏やかな一方、蒸し暑さもありました。
がたごと、ガタゴト。
夏の日差しを浴びてカラカラに乾いた峠の道を、繕いのある幌で覆われた小さな荷馬車が、ゆっくりと進んでいました。
道は砂利の混ざった緩やかな坂道で、頻繁に往来があるのか、深い轍が出来ていました。
両脇は深い樹木の森が広がっています。
風に揺れる枝葉のざわめきと、どこからか獣のような鳴き声も聞こえていました。
この道を小さな荷馬車は『イシキリの町』へと進み続けていました。
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色々な荷物が詰め込まれた荷台の一番後ろには、大きなリュックと頭陀袋に寄りかかるようにして、小さな角の生えた少女が一人、すやすやと静かな寝息を立てて眠っていました。
時々荷馬車が大きな揺れを起こしても、全く目を覚ます様子がありません。
首から提げた大きながま口が、時々少し大きめの胸の上で跳ねていました。
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少女の名前はミノア。
種族はその名の由来にもなっているミノタウロス族でした。
眼鏡をかけたあどけない丸い顔立ちに、少しもっさりとした癖のある長い黒髪をポニテ風に束ねています。
全体的に成長期の少女に見られる少しふっくらした体型でした。
白っぽい半袖の肌着の上から、牛柄模様のワンピースを身に着けています。
大きめのサイズでしたが、身体の発育が良いので、前ボタンの胸の辺りだけ、三つほど外していました。
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ミノアはこの日、ふるさとの農村から遠路はるばるここまでやってきました。
およそ十日の一人旅でしたが、幸いにして最後の数日間は同じ方向に向かう幌馬車に同乗させてもらいました。
彼女の目的地はこの先にある『イシキリの町』…ではなく、同じ土地にある『イシノクツ砦』。
これから三か月程度の試用期間を経て、住み込みで働く予定になっていました。
いわばミノアは出稼ぎ労働者。
そばにある大荷物はそのためのものでした。
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「お~い。牛のお嬢さんや~。もうじき『イシキリの町』に到着するぞ~」
手綱を操っている髭を生やした行商人魔族の声が聞こえ、ミノアは『ハッ』と目を覚まし、反射的に身体を起こしました。
いつの間にか蒸し暑くなり、首筋や胸元に少し汗をかいていました。
ミノアはシャツの襟元を掴んで、首筋や胸元の汗をぬぐうと、のそのそと四つん這いになって前の方に移動しました。
重力に引っ張られた胸のお陰で、服の胸元が広がると、心地よい涼しい風が、汗ばんだ胸に入り込んできました。
「ほれ、これがあんたが行こうとしている場所だ」
行商人魔族は前方を指さしました。
「お~、これはすごい光景です」
ミノアは眼鏡いっぱいに大きく目を見開きました。
峠を越えたその先に広がっていたのは、両側から囲まれるように山々に挟まれたなだらかな凹凸のある地形。
そこに小さな森林が点在し、幾つも支流を持つ大きな川が、うねるようにして流れています。
川沿いには広い畑も作られ、集落と思しき低い建物の集まりも幾つか見られました。
何基かの風車小屋が、今も羽根車をのんびり回していました。
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更にその先にはもっとたくさんの建物が密集しているのが見えました。
「ほれ。たくさん石造りの建物が集まっているところがあるだろ? あれが『イシキリの町』だ。あんたが行こうとしている『イシノクツ砦』は、その町を抜けた先、右側にある山並みをたどっていった奥の方、中腹くらいにあるよ。ここからだとちょっとまだ見えないな」
その時、少し大きな石を車輪が踏んだのか、車輪の片方が大きく跳ねると、ミノアの少し大きな胸も同じように跳ねました。
(つづく)




