土下座から始まるプロローグ
ど素人がボケ防止の為に書いてます。誤字脱字はお友達。不定期更新。目標は完結。
「それではお嬢様。お覚悟はよろしいでしょうか?」
「はぁ」
やる気の無い小さな返事に、女性が「チッ」と舌打ちをした。右手のひらをグウに握りしめマッハの速さで下から斜め左上に空を斬る。…シュバッて音がした!シュバッて音がしたっ!!
空に掲げたグウを今度はパアにして、背後に設置してあるホワイトボードに向かってバァンと叩きつけた。ボードには大きく「心を揺さぶる土下座」と書いてある。
「覇気がねぇっ!!」
「ぴピャイっ!!」
「……まだ足りないよーですねぇ?!そーですか、そーですか…そーですよねぇ?じゃあ、追加っ!!!!」
(まじかっ!?)
女性は周りを気にせずに遠慮なく怒声を上げた。
最新の防音が施されたピアノ用のレッスンルームだからだろう。恐ろしくドスの利いた声に、漏らしそうになったのは仕方のない事だと分かってほしい。
…漏らしていませんけれどね!
女性=使用人は涼しげな目元に黒い瞳、肩まである艶やかな黒髪を首の後ろで1つにきっちりと纏めた、二十代のスレンダーな知的美人だ。
その使用人の彼女にお説教を受けているのは、きつめで大き過ぎる淡いピンク色の瞳、モヤシのように白い肌、毛先だけがクルックルでふわっふわで纏まりの無い白銀色の髪を持つ幼い六歳の少女。
ソファーの上で正座の形を崩さずに恐々と聞き入れているのがワタシ、いや、わたくしこと『御星 咲沙良』だ。
気分は山姥に捕獲され逆さ釣りにされた子ウサギちゃん。プルプルと震えて言うこと聞くしかないんですぅ。
ヨボヨボとした足取りでソファーを降り、改めて床に正座をして姿勢を正す。
スゥと息を吸い込み、左右の指先をピシッと揃えて、ゆっくりと両腕を頭の上に持ち上げた。垂直になる位置でピタリと止めて、また今度は揃えたままの状態で勢い良く腕を振り下ろしながら腰を僅かに後ろに引き上げおでこを床に擦り付けたら完成だ!最後まで気を抜いてはいけない。
「もーしわけごさいませんっしたー!!」
うん!完璧ですわ!
わたくしこと『御星 沙沙良』はスーパー土下座を覚えた!ってくらい美しい土下座だったのではないのかしら?
フフンといい気になっていたら、またもや使用人の美しい口から「チッ」と舌打ちが聞こえた。
「おいコラッ!!お嬢様、お前は何処ぞの舎弟かよっ」
「はひぃっ!すんませんっ…あっ!」
どうやらトークが使用人の認めるレベルではなかったらしい。しかし舎弟って何なんだよ。じゃあユーは姐御なのかっ?!
わたくしの心の声が聞こえたのか、涼しげな目元をすうっと細めて彼女がうっすらと笑う。あら?後ろ手に長い棒らしき物が見えない?…やだ!ウソ竹刀かしら?…マジかよ!顔は勿論ボディもやめてちょーだい!
わたくしは心を込めて土下座の訓練を再開させた。
さて、一見おかしなやり取りだが、これには深い訳がある。
ここは一体何処なのか?何故こんなにも追い詰められているのか?何故令嬢が使用人の彼女にこんな態度を取られているのか?……色々と何故が湧き出てくると思う。
て、いうかわたくしはあと何回土下座の練習をしなくてはならないのでしょうか?
とにかくこれからしなくてはならないお勤めの為、わたくし自身が落ち着く為にも、今一度現状の再確認をしてみましょう。




