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到着、王都ベルベゴード

 その日、休憩小屋付近は危険かもしれないため、次の休憩小屋までそのまま進むことになった。

 日が沈んでもお構いなしに進み、パズとクリスは油断なく辺りを警戒していた。


 俺はというと、完全にビビっていた。

 認識が甘かった。

 この世界に来たのは殺し合いのためなのだということを、改めて痛感した。


 そんな俺に気を使ったのかトムが珍しく話し掛けてきた。


「そういえばキラ君、記憶の方はどうだい?」


「へ?」


 記憶?

 ああ、そう言えば記憶喪失という設定にしたんだったな。


「いえ、特に何も思い出しませんので、記憶のことはしばらく諦めようかと思います」


「というと?」


「ええ、なんだか物騒な世の中みたいですし、自分の身は自分で守れるようにしたいと思ってます。

 どうやら俺は魔術が得意なようですので、王都に着いたら魔術を教えてくれる人でも探して生きていこうかと」


「それなら王立アベノ学院に入ってみたらどうだい?そこなら魔術や剣術の他にも、いろんな授業を受けられるよ」


「でも、お高いんでしょう?」


「三年で金貨三枚、先払いだね。でも君なら金貨三枚なんて簡単だろう?」


 トムのウインクが炸裂した。

 確かに、おっしゃる通りです。

 一日あれば金貨三枚作れます。


「誰でも入れるもんなんですか?」


「人族なら金さえあって犯罪歴がなければ誰でも入れるよ。人族以外はギルドで発行された身分証と、読み書きのテストを受ける必要があるよ」


「人族以外ってどんなのがいるんですか?」


「大きく分けると、人族、獣人族、魔人族、亜人族の四つに分かれているね」


「へ、へぇ…。」


「この調子なら明後日には王都に着くけど、人族以外を見ても驚いたりしてはいけないよ、失礼だからね」


「わ、わかりました」


「何か困ったらあったらマートン商会を訪ねるといい、そこが僕の所属する商会さ。正直君の魔術を逃すのは惜しいとすら思ってるんだ。

 あぁ、もちろん君のことは他言しないから安心してくれ」


「ありがとうございます、トムさんにはお世話になりっぱなしになりそうですね」


「はは、気にしないでいいよ。僕の方は君に出会ったおかげでかなり黒字だからね」


 トムはポケットから金貨を取り出してそう言った。


「その金貨、もしかして俺が作ったのですか?」


「その通り、普通魔力で作った物は本人の手を離れるとすぐに消えちゃうんだけどね。君の作った物は未だに何一つ消えていないよ」


 この辺が魔術と魔法の違いなんだろうか。


「そーだ、金貨一枚ってどれくらいの価値なんですか?」


「え、そこから?金貨一枚あれば二か月以上遊んで暮らせるよ?」


「なんですとー!!」


「おい、坊主。あんまりデカい声出すな」


 パズに怒られた。

 だがトムとの会話のおかげか、だいぶ落ち着くことができた。

 トムに感謝だ。











 この世界の夜は暗い。

 月明かりのみで馬車は長い時間走っている。

 そろそろ夜も明けようかという頃、次の休憩小屋に着いた。

 その後、昼まで交代で睡眠し、再出発。

 途中で二回ほど商人らしき馬車とすれ違い、そのたびにトムさんは何か話していた。

 多分昨日の死体の件だろうな。

 夜にはまた休憩小屋に着いた。

 この日は誰からも魔術のおねだりがなかったので、ズボンのポケットの中でひっそりと金貨三枚を作った。

 これで王立アベノ学院の入学費用は足りるはずだ。

 そして次の日の夕方、ついに王都に見えてきた。

 まず驚いたのは、王都がでかい壁の中にあるということだ。

 王都はどれくらい広いのかと聞くと、半径五キロメートルくらいらしい。

 なんという広さだ。

 門の入り口でトムさんが門番と何か話した後、積み荷を軽くチェックされてから、通ってよしと言われていた。

 ちなみにその時俺はかなりひやひやしていた。

 君、ちょっと身分証見せたまえ、とか言われたら漏らしていたかもしれない。

 俺の所持品は金貨(偽造)×3しかないのだ、焦るのもしかたがないだろう。

 それにしても王都の中は人が多い。

 この世界にもちゃんと人がたくさんいることがわかって、少しホッとしている。

 たまにリアル猫耳(だが男だ)やふさふさ尻尾の獣人が歩いているため、見ていて飽きない。

 どうやか本当にいろんな種族が存在するみたいだ。

 そんな感じで馬車の荷台から人間ウォッチングを楽しんでいたら、不意に馬車が停まった。

 どうやら目的地に着いたらしい。


「少し待ってて」


 トムが一人で建物に入っていった。

 木造二階建て。


「到着ですか?」


「ああ。ここがマートン商会だ」


 よく見たら入り口の横に看板がある。

 日本語で「マートン商会」と書いてあるな。

 二人が馬車から降りたので俺も降りるとしよう。

 お、トムが建物から知らない人二人と出てきた。


「じゃあ荷物はいつものところによろしく」


「「はい!」」


 どうやら荷運び要員らしい。


「パズとクリスにはこれを、はい、お疲れさま」


「何ですか、その紙は」


「依頼完了証明書だ。これを冒険者ギルドに提出すると報酬が貰えるってわけだ」


 冒険者ギルド!?

 何それ異世界っぽい!


「今から行くんですか?俺も着いて行っていい?」


「ああいいぞ。ついでに坊主も冒険者登録しておくか?冒険者カードは身分証に使えるから便利だぞ?」


「するする!」


「よし、クリスも行くだろ?」


「ああ」


「じゃあ行くか!またなートムー」


「また機会があったら頼むよ二人とも!それとキラ君。困ったらいつでもおいで。受付でトムの顧客だと言えば会えるから」


「ありがとうございます、トムさん。その時はよろしくお願いします!」


 さようならトム、お前のことは忘れないぜ。











 十分程歩いて、俺達三人は冒険者ギルドの前にいた。

 大きな建物で、正面に大きな両開きの扉がある。

 思わず「バンッ!」と派手に突入したくなる、なんとも男心をくすぐる扉だ。

 そんなことを思っていたらパズによって実行された。

 両手でドーンと扉を開いて建物に入っていく。

 実に気分が良さそうだ、今度俺もやろう。

 中に入ると結構人がいるが、建物自体が広いため、窮屈ではない。


「俺とクリスは報酬もらってくる。坊主はあそこの受付で登録してきな」


「え!一人で?」


「心配しなくても大丈夫だ、キラ。難しいことは何もない」


「は、はあ。」


 ドキドキ。

 あそこの受付か。

 他の受付は若くて美人な人がそろってるのに、あそこだけおばさんだ。

 いや、別に不満があるわけでは…。


「あのー、すいません、冒険者登録をしたいんですけど」


「かしこまりました。まずはこちらの説明をお読みください。字は読めますか?」


「はい、大丈夫です」


 えーと…。

 冒険者にはランクがあり、上からS、A、B、C、D、E、Fがある。

 初めはFからスタート。

 依頼達成を何回も達成して、実力を認められると、ギルドの判断でランクが上がるらしい。

 逆に依頼に失敗、リタイアをした場合、違約金が定められている依頼の時は、その金額を払わなければならない。

 失敗やリタイアが多いとランクダウンもある。

 基本的に自分の身は自分で守ること。

 他人に迷惑をかけないこと。

 犯罪行為や悪事が確認されると、ギルドの判断で冒険者資格の剥奪もある。

 エトセトラ、エトセトラ…。


「この説明書、もらってもいいですか?」


「ええ、どうぞ」


 一通り読んだので折りたたんでポケットへ。


「ご了承いただけましたら、登録に移ります。こちらに必要事項を記入にて下さい」


 名前 キラ・キイラ

 年齢 15歳

 種族 人族


 え?こんだけ?


「最後にこちらに両手を置いてください」


 水晶玉二つ、受付の机の上に置かれた。


「こうですか?」


「はい、そのまましばらくお待ちください」


 ……ダイジョブか、これ。

 後ろから見ると多分、俺がおばさんの胸を鷲掴みしてるように見えるんじゃ…。

 やばい、なんか汗かいてきた。

 て、手汗が…。

 おや、右に水晶が光ってる?


「はい、もう結構です」


「あ、はい」


「こちらが冒険者カードになります。紛失の際は、こちらの登録窓口までお越しください。これで登録完了です。お疲れ様でした」


 もう終わった。


「あ、ありがとうございました」


 ランク F と書いてある。

 これで俺も冒険者か。

 振り返るとパズとクリスがいた。


「すぐ終わっただろ?」


「はい、正直拍子抜けですね」


「じゃあ俺はもう行くぜ。クリス、坊主、またな!」


「ちなみにどこ行くんですか?」


「報酬も貰ったし、歓楽街にちょっとな。ここからは大人の時間だ、ムフフ」


 パズが下卑た笑みを浮かべる。


「パズの兄貴、ぜひご一緒させてくだせえ!」


 このチャンス、逃してなるものか!


「キラ、そういうことにあの金貨を使うのは感心しないな。私の言いたいことが、わかるな?」


 クリスの手が俺の肩を掴む。


「や、やだなあクリスさん。じょじょじょ冗談に決まってるじゃないですか」


 痛い、わかったからその手を離せ!


「残念だったな坊主。じゃ、俺は行くぜ~」


「(チッ)ええ、パズさん、お元気で」


「ああ、またな」


 パズはスキップで日が暮れようとしている街の中に消えていった。

 べ、別に羨ましくなんてないんだからね。


「で、キラはこれからどうするんだ?」


「適当に宿を探します」


 正直パズと違って長旅で疲れた。

 暖かい布団で寝たい。

 風呂に入りたい。

 うまい飯が食いたい。


「ならこの道をまっすぐ行くと『小春亭』という宿屋がある。そこなら店の人もいい人だから安心だろう」


「クリスさんはどうするんですか?」


「私は家に帰るよ」


「ではここでお別れですね。いろいろとありがとうございました」


「これも何かの縁さ。ではな」


 クリスは少しだけ微笑み、去っていった。

 なんだかんだでいい人達に拾ってもらってラッキーだったな。

 こうして街まで連れて来てもらったし。

 いつか機会があったら恩返ししよう。







 小春亭はすぐに見つかった。


「すいませーん」


「はいよ~」


 40代くらいのおばちゃんが現れた。


「泊まりかい?」


「はい、とりあえず三泊で」


「一人部屋で一泊銀貨一枚、飯は一階で別で注文しな」


「じゃあこれで」


 金貨一枚を手渡す。


「金貨って、どこの坊ちゃんだい、あんた…」


 露骨に嫌そうな顔をされた。

 なんでや。


「クリスさんの紹介で来たんですけど」


「クリスちゃんの友達かい?そいつは無下にできないね。ちょっと待ってな」


 おばちゃんが店の奥に戻っていく。

 あれ?金貨持ち逃げっすか?

 あ、戻ってきた。


「はい、お釣りだよ」


 おばちゃんはどん!と重そうな布袋を置いた。

 ああ、お釣りが多くなるから金貨は嫌だったのね。

 今度から気を付けよう。


「部屋は三階の33号室だよ。これが鍵」


「どうも」


 三階の33号室…。

 あった、ここだ。

 部屋の中はベッド、テーブル、窓。

 シンプルですな。

 とにかく腹が減った。

 一階に降りて夕飯にするか。

 テーブルとカウンターがあるが、俺はボッチなのでカウンターに座った。

 すると若い女の子の給仕が注文を取りに来た。


「何にしますか?」


 この世界に来て初めて若い女の子との会話だ。

 別に緊張などしていないさ。


「え、あ、き、今日のおすすめで」


「はい、わかりました。銅貨三枚になります」


 さっき貰ったお釣りの布袋からジャラジャラ銅貨を探す。

 給仕の子がちょっと驚いてるようだ。

 財布か?財布がしょぼいのがいかんのか?

 てゆーか銅貨なんてなかった。


「銀貨一枚からで」


「はい、お釣りの銅貨七枚です」


「あ、あと水もらえませんか」


「小銅貨一枚になります」


 水に金取るのかよ!

 小銅貨…。それっぽいのはないな。


「じゃあ銅貨一枚からで」


「はい、お釣りが小銅貨九枚になります」


 布袋内のジャラジャラ感が半端ないことになってるな。

 ちょうどいいから宿代のお釣りも含めて確認してみた。

 今の俺の所持金は、ポケット内も含めると、金貨二枚、大銀貨九枚、銀貨六枚、銅貨六枚、小銅貨九枚だ。

 そして謎解きの結果、金貨一枚が大銀貨十枚、大銀貨一枚が銀貨十枚、銀貨一枚が銅貨十枚、銅貨一枚が小銅貨十枚だとわかった。

 金貨の上、小銅貨の下があるかどうかは不明だが、多分小銅貨の下はないだろう。

 本日のおすすめを仮に日本円で千円と仮定すると、金貨一枚の価値はだいたい三十三万円くらいか。

 わお。

 頭使ってたら疲れてきた。


「おまたせしましたー!本日のおすすめ、鶏もも肉の甘辛焼きとホワイトシチューでーす」


 料理が運ばれてきた。

 やべえ、ハイパーおいしそうだ。

 考え事は明日にしよう。


「いただきまーす」

気合の続く限り毎日18時に投稿し続けるます!

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