もっとエッチな雷魔術
またしてもボッチの呪いが発動。
俺は今、冒険者ギルドにいる。
目の前では楽しそうにおしゃべりをする女性二人。
俺の従者の(はずの)エレナと、冒険者エリ。
エレナがこんな楽しそうにしているのは初めて見る。
しかし、いつまでおしゃべりは続くんだろうか。
暇だ。
目の前の二人はまだ話し続けている。
この二人が俺の存在を忘れてしまったのかと思うぐらいに。
「ねえねえ、エレナ、お腹すかない?」
「そうですね、もうそんな時間ですね」
やっと終わったか。
ったく何時間待ったと思ってるんだ。
「お昼食べに行きましょうよ!」
「なら、私のおすすめのお店があります」
そう言って二人はギルドから出ていく。
…………俺を残して。
「あれ?」
冗談だよね?
ホントに俺の存在忘れてない?
エレナさん、あなた、俺の従者なんでしょ?
監視が任務なんでしょ?
十分程待ったが、彼女らが戻ることはなかった。
「…………帰ろう」
今まではエレナが鬱陶しい存在だとは思っていた。
しかし、忘れられるのがこれほど切ないとは思わなんだ。
「……グスン」
家に帰ろう。
家に着くと、門の前でうろうろしてる人影が見えた。
金髪がふりふりと動いている。
「ミリアか?」
話し掛けると、ビクンと驚いた様子で振り返った。
「キキ、キラじゃない、偶然ね!」
いやいや、偶然じゃないだろう。
「どうしたの?」
「あんたの新しい家がこの辺りだって聞いたから、ちょっと見に来たのよ」
なんだろう、遊びに来たのかな?
そういや校長に、ミリアに構ってやってくれって言われてたな。
「遊びに来たのか?なんなら上がってく?」
「え! いいの!?」
「いいよ。よくミリアの家でご飯ごちそうになってるしね。お昼はもう食べた?」
「ううん、まだ!」
「じゃあ食べてく?」
「うん! わたし他の人の家にお邪魔するの初めて!」
なんだかうれしそうだな。
少し癒された気がする。
「ただいまー!」
「お、お邪魔します」
二階から階段を下りてくる足音がする。
「おかえりなさいませ、キラ様。そちらはお客様ですか?」
我が家の猫耳メイド、ナーナのお出迎え。
「うん、学院の友達で、ミリア・ラスターさんです」
「と、友達……!! ミリアです!」
「いらっしゃいませ、ミリア様」
「ナーナ、悪いんだけどお昼まだでさ。俺とミリアの二人分作ってくれるかな?」
「かしこまりました。少々お待ちください」
パタパタと足音を立ててナーナがキッチンに入っていく。
「ねえねえ、キラ、探検してもいい?」
「いいけど、なんにも面白い事ないぞ?」
「いいのよ、うちとは何もかも違うんだもん!」
ミリアはそう言って我が家の探検を始めた。
そういや、ラスター家のメイド曰く、ミリアは学院に入るまではほとんど家の中で過ごしてきたらしい。
庶民の家が珍しくて仕方がないのだろう。
微笑ましいな。
……楽しいのだろうか?
「おーい、ミリアー。ご飯だよー」
「今行くー」
ミリアがドタバタと階段を下りてくる。
「すごい!お魚料理ばっかり!」
それはうちのメイドの好みだ。
「じゃあ食べようか。いただきまーす」
「? い、いただきます」
「あれ、ナーナの分は?」
「私はキラ様が御帰りになる前に済ませましたので」
「そっか。どうミリア、おいしい?」
「悪くないわね!うちと違って野菜が少ないのがいいわね!」
いや、栄養バランス的には野菜が欲しいんだけど。
「ナーナは魚料理が得意なんだ」
放っておくと魚しかでないんだ。
「キラの家でご飯作って待っててくれる人ってメイドだったのね!」
「冒険者ギルドで雇ったんだ。馬の世話のできるし、実に優秀だぞ」
「ありがとうございます、キラ様」
ナーナがお辞儀をする。
「へー、獣人のメイドなんて初めて見たけど、意外とちゃんとしてるのね!」
「種族は関係ないのだよ、ミリア君」
「それはそうと、キラ。最近なんで授業に出ないのよ」
「あー、それな。だって最近、魔術の授業で新しいの教えてくれないんだもん。意味ないじゃん」
「ああ、キラが異世界人だからってやつ?」
あ、やっぱ聞いてるのね。
ナーナは首を傾げている。
「そうそう。どうやら上から圧力がかかってるみたいでさ。正直もう学院に行っても意味ないかなって」
「え? もう来ないの?」
ミリアの手が止まり、こちらを見つめてくる。
不安げな眼差しだ。
なんだか悪いことした気分になる。
「剣術の授業にはでてるけど、魔術の授業はもういいかな」
「ふ~ん。じゃあわたしが新しい魔術教えて上げようか?」
なに!?
「いいんですかミリアさん!?」
思わず身を乗り出して聞いてしまう。
「いいわよ。バレなきゃ平気でしょ」
「ああ~、でもうちには監視が一匹いるんだよなあ」
「ああ、あの女ね。そう言えば見当たらないけど、今日はいないの?」
「ああ、なんか友達と飯食いに行ったよ」
俺を置いてね。
「じゃあ、この後教えて上げようか?」
「やったぜ!よろしくお願いします先生!」
「せ、先生……!ふふ、いいでしょう。わたしの授業は厳しくってよ!」
誰だお前は。
そんなわけで食後、ミリアに魔術を教わることになった。
場所は俺の部屋である。
「先生、室内でも大丈夫なんですか?」
「大丈夫でしてよ!」
口調がおかしいが突っ込むまい。
「で、どんな魔術なの?」
「スタンライザーとインパルスに似た魔術よ。スタンウェーブっていうの」
ふむ。
スタンライザーは相手に触れて電流を流す魔術。
インパルスは触れられた場所から相手に電流を流す魔術。
「じゃあまず、ベッドに横になって」
「あ、うん」
黙ってベッドに横たわる。
「ちなみになんでベッドに横になるの?」
「この魔術を使うと、相手は動けなくなるから。倒れてケガとかしたくないでしょ?」
「そりゃまあ。あの、でも痛いのはちょっと………」
「大丈夫よ、痛くしないから」
ミリアが俺の上に跨った。
「うん?」
「いくわよ。スタンウェーブ」
ミリアが俺の肩に触れると、体中に弱い電流のようなものが流れている感覚が訪れる。
「っ!?」
体を動かそうとしても動かない!?
なんだこれ!?
「どう?動けないでしょ?これがスタンウェーブよ。触れてる相手の自由を奪って無力化できるの」
「喋ることはできるんだね」
「首から下にしか流れないようにしてるからね。その気になれば喋れなくできるわよ?」
なるほど……。
体中の感覚が自分じゃなくなったみたいでなんだか怖い。
ミリアが俺に跨っている感触もまるでない。
残念の一言に尽きる。
「キラもやってみなさいよ。コツはまずはすごく弱い雷を相手に流すようにすること。そして相手の筋肉から骨に至る細部に電流が流れるように意識することね。わたしはこのままスタンウェーブを掛け続けてるから、キラもやってみて。魔力はちゃんと流れるから大丈夫よ」
ふむ。
今の体中に流れる電流のイメージをそのままミリアにお返しすればいいんだな。
「キラ、あんた初めてなんだから、痛くしないでよ? ゆっくり、始めは優しくね?」
「おう、まかせろ」
ミリアに触れている部分から微弱な電流を少しずつ流す。
「んっ………」
「痛かったか?」
「あっ………だ、ダイジョブ、んっ……もうちょっと、んっ………強めでいいわ」
ちょ、ちょっと、変な声出すなよ。
「こんくらいか?」
少しだけ電流を強くする。
「あっ、あ、なにこれ、あ、なんか違う、こんなの…あっ」
俺の上でミリアが悶え始めた。
なんかエロい。
しかし、まだミリアは普通に動けるみたいだな。
「もう少し強くするぞ?」
「あ、うん、あっ、でも、やっ、なにコレ、よく、わかんない、あん」
心なしかミリアの息が荒い。
「おい、大丈夫か? もうやめとくか?」
「ん、ダイジョブ、ああっ、多分、もう少し、ん、強めに」
ミリアがピクピク動いている。
電流は流れているが無力化には至ってないな。
もう二段階くらい強めにするか。
「ああっ、なにこれ、なんかきちゃう、あ、ああああああああああっっ!!」
ミリアが絶叫して俺に倒れ込んだ。
同時にミリアのスタンウェーブが解けた。
ミリアは痙攣しながら俺の耳元で荒く呼吸している。
「お、おい、大丈夫かよ」
強く電流を流し過ぎたか?
ミリアの顔が赤く染まっている。
大丈夫だろうか?
と、その時、部屋の扉が開いた。
「…………キラ様、何やってるんですか?」
「え?」
そこにはエレナと今日会った冒険者エリが、怪訝な顔つきでこちら見つめている姿があった。
とんでもない魔術を覚えてしまった。




