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友達ができた。エレナに


 勇者選抜大会開催のお知らせ

 人族の誉れたる勇者を選定します。

 選定方法は一対一のトーナメント戦。

 賞金有り。

 一位、金貨百枚

 二位、金貨三十枚

 三位、金貨十枚

 これ以外にも、大会において見事な力を示した者には王より特別な依頼が頼まれる場合有り。

 この依頼に成功した場合、新しく貴族になることができる。

 大会の参加料は大銀貨一枚。

 人族であれば誰でも参加可能。

 場所:王都ベルベゴード、軍区内闘技場

 日時:乙女の月、一の日より予選開始

 注意事項:参加者は対戦時に相手を死亡させた場合、即失格となります。

      故意でない場合は事故として処理され、故意と判断された場合は牢獄送りとします。

      参加者が負傷された際は自己責任となりますので御理解下さい。

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「エレナが言ってたビックイベントってこれのこと?」


 俺は看板の前でエレナに問い掛ける。


「はい、キラ様。今頃はあちこちの街でこの御触れが出ていることでしょう」


 異世界オリンピックみたいなものか。

 それにしても…


「野蛮だねえ」


「は?」


「こんな死ぬかもしれない大会、参加する人いんのかねえ」


 負傷しても自己責任って書いてあるし。


「それはもう、たくさんの人間が参加しますよ。おそらく王都に凄い数の人が集まりますよ!」


「ふーん。ま、俺には関係ないか」


 今日も冒険者ギルドで依頼を受けるか。


「え、キラ様、まさか参加しないんですか?」


 エレナが何やら慌てた様子で聞いて来る。


「そりゃあ参加しないさ。怖いもん」


「優勝者には金貨百枚ですよ!?しかも貴族になれるかもしれないのに!」


「いや、お金には困ってないし。別に貴族にもなりたくないし」


「そ、そんなこと言わずに参加してみたらいいじゃないですか!」


「どうしたの、エレナ? もしかして参加したいの?」


「いえ、私は参加しませんが」


「ならいいじゃん。監視するにも、俺が静かにしてた方が楽だろ?」


「それはそうですが…ほら、キラ様はこの所、実戦経験が必要とおっしゃっていたではありませんか!大会に参加すれば対人戦の貴重な実戦経験ができますよ!?」


「なるほど、言われてみればその通りだね」


「そ、そうでしょう?」


「乙女の月っていつ頃なの?」


「今から約五か月後ですね」


 それなら暇人ひまじんがルール追加するまでにまだ三か月程猶予があるな。


「ま、考えておくか。そんなことより早く冒険者ギルドに行こうよ」


「そんなことって……」


 エレナが何やらぼそぼそ言いながらもついて来る。

 相変わらず小言が多いな。





 朝の冒険者ギルドは人が多い。

 さすがは異世界のハローワークだ。

 掲示板の前にはたくさんの人で溢れている。


「混んでますね」


「少し人が減るまで、向こうのテーブル席で待ってようか」


 朝方はいつも混み合っているんだよなあ。

 でも日帰りで依頼を受けようとすると朝にこないとだし。

 おや、なんだろう。

 何か騒がしいな。


「へっへっへ、お嬢ちゃん魔術師なんだろう?だったら俺とパーティー組もうやぁ」


「いやいや、うちのパーティーなら頼れる前衛もいるぜぇ、魔術師は盾役がいてなんぼだろうよ」


「いい加減にして下さい!あなた達とパーティーを組むつもりはありません!」


「まあまあそう言わずに、いい思いさせてやんぜぇ。げへへ」


 どうやらナンパらしい。

 黒い髪の魔術師が勧誘を受けているが、乗り気ではないようだ。

 まあ、確かに笑い声が「げへへ」の時点で下種の香りがプンプンするもんな。

 女性冒険者は大変なんだなあ。

 しばらく見物していよう。

 おや、こっちに来るぞ?

 いや、正確には俺の前の席に座るエレナの元に……


「私はこの方とパーティーを組んでいますので、あなた達は必要ありません!」


 なんだ、エレナの友達か?

 いや、エレナが「え、私?」って顔してるな。

 黒髪の魔術師が小声で囁く。


「ごめんなさい、少し協力して下さい」


「困ります、私はキラ様の…」


「どうぞ、こき使ってやって下さい」


 俺が代わりに承諾しておこう。

 エレナから抗議の視線を感じるが無視だ。

 なにせエレナが忙しくなればなるほど俺の監視が緩むのだ。

 俺だって息抜きがしたいのだ。


 しかし、ナンパ冒険者達は引かなかった。


「なんならそっちの嬢ちゃんも一緒で構わんぜ。女二人じゃ危険だろうしなあ」


「むしろラッキーだぜ」


 おやおや、エレナを気に入って下さるとは、お目が高い。

 黒髪の魔術師はエレナの後ろに隠れてしまった。


「いえ、私はキラ様の従者ですので」


 おいコラ、俺の名前を出すんじゃない!


「キラ様だぁ? なんだお前、この女のなんなんだ?」


 やだなぁ、怖い人に絡まれちゃったよ。


「知り合い以上、友達未満です」


「なら別に関係ねぇよなあ。ちょっとこの二人貸してくれよ。なあに、一晩でいいからよ」


 そう言いつつ男の一人が俺の肩に触れる。

 俺はつい授業の癖で、その手にインパルスを発動してしまった。

 男の手に電流が流れる。


「いってぇ!!」


「なんだてめえ、なにしやがった!!」


「あ、やべっ」


 男たちが憤る。

 違うんだ。

 わざとじゃないんだ。

 雷魔術の授業のせいで、俺の体はあちこち感度ビンビンに開発されてしまったんだ。

 ミリアとマリンダさんが俺の体を嬲ったせいなんや。


「お、坊主じゃねえか、久しぶりだな!」


 この声は!!

 パズだ!

 なんていいタイミングで現れるんだ!

 先生、お願いします!


「あ、パズさん、久しぶりですね」


「おお、坊主もな!この間はお前のおかげで命拾いしたぜ!」


 にこやかにパズが近づいて来る。


「なんだ、パズ、こいつお前の知り合いか!?」


「くっそ、なにされたんだ、まだ手が痺れるぜ」


「おお、お前ら。こいつは俺の命の恩人だよ。こいつぁ魔術の天才だぜ」


「なんだとパズ、いくらお前でもそんな嘘はすぐバレるぜ」


「そうだそうだ!こんなガキじゃねえか!」


「別に嘘つく理由もねえけどな。坊主、なんか魔術見せてくれよ」


 ええぇ、今日もう二発目になるじゃんよ。

 まあいいか。

 脅し用に一回だけ。

 ファイヤーボールでいいか。

 放出はしないで右手の上に。

 天井に届かないギリギリまで大きく…

 イメージは太陽だ。


「な、ななな!」


「わかった、俺らが悪かったからそいつを止めてくれ!!」


「坊主もういいってよ」


「はいよ」


 今度はファイヤーボールを徐々に小さくする。

 最終的には手の上で消えてしまった。

 うむ、授業のせいかがでてるな。


「まあ、こんな感じだ。坊主が本気になったらお前ら、消し炭も残らねえぞ? わかったらもう行け!」


 二人の男は逃げるようにギルドから出ていった。


「すいませんパズさん、助かりました」


「俺はなんもしてねえけどな」


「いえいえ、助かったのは事実ですから」


「なあに、俺とお前の仲じゃねえか。困ったらいつでも頼れよ!」


 パズはやることはやったとばかりに颯爽と去っていった。

 ステキ…………。

 見た目は山賊だが、中身はイケメンだぜ。

 俺が女なら抱かれても……いや、それとこれとは話が別だ。


「あ、あのぅ」


 エレナの影から女性が一人。

 あ、そうだ、こいつを忘れてた。


「すいません、ありがとうございました。あの人達、しつこくって」


 お、おおぅ。

 そこにいたのは、驚くほどの美人。

 長く伸びた黒髪はさらさらと揺れている。

 アジアンビューティーや。

 これはナンパした奴らの気持ちもわからんでもない。


「いえいえ、礼には…」


「礼には及びません。あんな下種共、死んでしまえばよかったんです」


 いや、エレナさん。

 今回あなた何もしてないのになんでそんなに偉そうなんですか。


「ホント、男ってみんなあんなのばっかり! 助けてくれてありがとう!私の名前はエリ。よろしくね!ええっと…」


「エレナ・パートソンです。こちらこそよろしくお願いします」


「俺はキ…」


「エレナさんは冒険者なの?良かったら私とパーティー組まない?」


 あかん、乗り遅れた。


「いえ、私はキラ様の従者であって、冒険者ではありません」


「キラ様?ああ、そっちの。あなたもさっきはありがとう!」


「あ、はい。どういたしまして」


「私、王都に来たのつい昨日で困ってたの!エレナさんみたいな人に会えてうれしい!」


 あれ、俺は?


「王都は広いですから、一人では大変でしょう。私でよければいつでも力になりますよ」


「ありがとう、エレナさん!」


「エレナでいいですよ、エリさん」


「じゃあ私のこともエリって呼んでね、エレナ!」



 あ、あの~、俺は…………?








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