表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末はモルモットと一緒に天竺を夢みよう  作者: 蔵前
愛はいつもそこにある
9/27

セーフティルーム

「すいませんね。ケージ、いいものをこちらが勝手に選んでしまって。」


 まあ!私は彼を見上げているのに、彼は伏し目がちで私を見つめている、というシチェーションを作り上げていたじゃない。


 私は彼に集中することにした。

 いや、比賀江さんと可愛い茶々に、だ。

 彼らに集中すればくだらない過去から逃げていられる!


「い、いいえ!茶々には幸せでいて欲しいもの!」


「ありがとうございます!モルモットは臆病だから、ちゃんとしたケージに入れてあげないと脅えちゃって不幸なんですよ。だから、少しでも広く、いいものをって俺は思ってしまいまして。」


「籠の中の方が安心、なのですか?」


「ええ。籠は牢獄じゃなくてですね、この子達には絶対的なセーフティールームと同じなんです。」


「まあ、じゃあ、籠に入れっぱなしの方が良いのかしら。」


「一日に二時間は籠から出して運動させてください。その時にスキンシップを取れば物凄く馴れますよ!部屋はウンチとおしっこで汚れますけど!」


 ああ、もう!比賀江さんは一言多い!

 それでも私は怒るどころか比賀江さんに笑っていた。

 最初からそんな生き物だと知っていればって、なんて自分を曲げない人なのだろう。


 それだけこの人は生き物の幸せを考えているのだ。


 ハムスターで鳥かごサイズと考えていた私には、この出費よりも飼育スペース確保の方が問題だが、でも、このふわふわは温かいじゃないか。

 失恋して心機一転で他県に出て来た私には、この小さな生き物がとっても手放せない温かさに感じて、茶々入りのキャリーをそっと撫でた。


「あ、ケージその他はこちらがご自宅に持って行きますからご心配なく!」


「まあ!それでしたら、この子はそれまでどこに住めばいいの?」


「段ボールでいいですよ。なければお菓子の箱でも。二十センチ程度の段差でも飛び越せないので平気です。ただ、お水がいつも飲めるようにしてあげなきゃなので、水ボトルは持って行ってください。ペットシーツを敷いて床材をそこに敷いて、そこにこの子をぽいっと置いてやればこの子は幸せです。水ボトルはガムテで段ボールにつけとけば一日二日はいけますね。」


「ねえ、それじゃあ、段ボールを使いまわせばケージ不要なんじゃないの?掃除の度に段ボールごと捨てればいいじゃないの。」


 比賀江はアッと言う表情を一瞬見せたが、すぐに私に営業スマイルを向け、今晩にでも自分が届けますからと言った。


 宅配じゃないの?配送費返せ!


「今晩ですか?」


「ええ、なずなさんがお嫌でなければ。」


「え、どうして名前を!」


 ええ!こ、こんなにもよくしてくれるって事は、実は私の事を知っていた?

 うそ、まるで漫画の世界だわ!


「……飼養承諾確認書のご署名から。すいません。気安くて。」


 私は彼から顔を背けた。

 何を期待しているのか。

 私は親友に婚約者を寝取られた女じゃないの。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ