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助けは人の為ならず

 私の前で仁王立ちしている青年は、愛する者の為に自分の凝り固まった思考の転換をするべきなのです、と演説を始めた。


「いや、だから、餌ハムはいらないの。私は勘違いしていただけなの。」


 そう、勘違いしていたし、実際に衣装ケースにみっちりいるハムスターの救出など、私には不可能だと身に染みたのだからもうよいのである。


「いいでしょう。僕が生餌を生餌として蛇さんやトカゲさんに与える事が出来るようになった物語をお教えしましょう。」

「いや、だから、いいって!」


 外見だけは素晴らしいが爬虫類のようにコミュニケーションが取れないらしい比賀江は、私にハムスター王国なる物語を語り始めた。


「むかしむかし、ハムスター王国がありました。」


         ――――――


 そこはとっても国民同士が仲の良い国でもあったが、国民誰もが働き者であっても、人口が多すぎて食料の供給にいつも頭を悩ませないといけない国だった。

 政治も何とかしようと頑張るのだが、いかんせん、国民の寿命は2年だ。

 王族だろうと2年なのだ。

 俺の屍を超えていけと、王様達も寿命で死ぬしかない。

 そんな2年毎の王位継承がせせこましいと、終には金のかかる戴冠式自体を取りやめてしまった国だ。


  ※ハムスターの平均寿命は二年です!


 そんなある年のある日、とうとう王様は老衰で倒れ、第一王子の手を握った。


「お前はわしのようにはなるな。」


「父さん、父さんは良き父でした!私が成長するまであなたの傍にはいられませんでしたが、ああ、この一年はあなたと一緒にいられて幸せでした。あなたはどうして子供を私一人だけになさったのでしょうか。」


 病床の老王はぜえぜえと辛い息を吐くと、息子の手を握った。


「それは、お前が一人なのは、」

「父さん!」


「――俺がお前以外の兄達を喰ってしまったからだ。だから、ワシはお前の母親と別居した。」


※ハムスターを繁殖させたい時は雄と雌とずっと一緒にしてはいけません。

 雄が生まれた子供を全部食べてしまいます。


新たな王になった男は、王宮ではなく離宮に妾を沢山住まわせ、自分が通う事で共食い禁止と家族愛を図ったのでした。


         ――――――


 若きペットショップ店員はろくでもない物語を語ると私に微笑んだ。


「ほら、これで平気になったでしょう!あなたがピンクマウスや餌ハムスターをあなたの大フクロウに与えることは、ハムスター王国の存続のために必要な間引きという必要悪なのです!」


「煩い!ああ、私はピンクマウスがピンク色の毛皮の可愛い子だと思っただけよ!そんな可愛い子が餌になるなら、私の子供にしようと思っただけなの!」


 私はとうとう叫んでいた。

 涙目にもなっていたと思う。

 友人だった人達や両親からのメールによって、私はずっと叫び出したかった。

 メールを貰ってからずっと抑え込んでいた気持ちを、何の罪もないペットショップの店員にぶつけていたのだ!


「一匹だけでいいの!私が愛して、私が助けられる一匹でいいの!」


 本当の私なんか誰にも求められていないのだから!

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