ピンクマウス入荷しました!
ピンクな画用紙に紺色の可愛い字で、ポップが手書きされていた。
餌に最適!
ピンクマウス入荷!
私は何も考えずにそのお店に飛び込んでいた。
そして、誰かに買われて餌にされちゃう前にと、カウンターに手をついて声をあげていたのだ。
「ぴ、ピンクマウスください!」
…………………ああ、言っちゃった。
私は三か月前に婚約者に婚約破棄をされた。
そして今日の午前11時が私の結婚の披露宴が始まる予定だった。
三か月目の今日、その日時からの二時間後。
ああ、ようやく新天地で落ち着けたと思ったのに、私の過去は私を再び粉々になるほどに打ちのめそうと襲って来た。
親友だと思っていた彼女と元婚約者が、私達が式を挙げる予定だった式場で、同じ時間で、同じ招待客で、ウェディングベルを鳴らしたらしい。
ハハ、私と私親族の部分は新花嫁と新花嫁の親族で総入れ替えだが。
それだけでも死にそうに辛いのに、私が招待したはずの私の友人達が、やっぱり花嫁も友人だからと祝いに出席し、私に花嫁への花向けに祝いの言葉ぐらい送れとメッセージまで送ってきた。
両親からもメールが来た。
お前のせいで肩身が狭い、と。
今日この時に全てを失った私は、自宅にいても気持ちが塞ぐと外に飛び出し、そして現在住んでいるアパートの近辺を適当にぐるぐると歩き回っていた。
そこで見つけたのがこの手書きポップ。
ピンクマウス入荷。
餌マウス。
後がない、私よりも不幸な子。