計画98
「私とアーモンド兄様のお母様は、素朴な方で、でも心はとても綺麗な女性で、当時の国王にその心を認められてお父様、現国王陛下の専属メイドになったのです。」
ビオラは聞いた話を思い出しながら語る。
「お父様が立派な国王陛下になられたのはお母様のおかげだって言う方も少なくないぐらい、お父様にとってのお母様は大きな存在でした。だからなのでしょうね。長年連れ添っていくうちに、お父様はお母様に恋をし、お母様もお父様に恋をしたのです。」
先程までの嬉しそうな顔から若干だけ影が入る。
「でも、身分というくだらないことでお父様とお母様は結ばれることが無かったのです。」
「そんな!」
エンラが何か言う前にビオラがニコっと笑って誤魔化す。
「でも、そんな2人の後押しをしようと頑張っていたのが、女王陛下、エンラちゃんたちのお母さんです。」
「ママが・・・。」
「お母さんはね、許嫁という立場だけで、貴族としての役目を全うすることだけを教えられて生きてきたんだそうです。だから何にも楽しくない、感動もない。自分は空っぽの人間だ。王族の子供を産むための道具だって思って生きてきたそうです。」
覚えのあるルーティンの表情が微妙に動き、戻る。
「そんなお母さんがお父様との謁見の日に見たそうです。互いに微笑み合う、慈しみの心の姿を。その光景が死んでいたお母さんの時を動かしてくれたそうです。それからお母さんは結婚を決め、お母様と仲良くなるために頑張ったそうです。毎日話しかけたり、一緒にお買い物に行ったりと、お父様が嫉妬するレベルでお母様と仲良くなったそうです。」
目を閉じ、大きく息を吸い、ゆっくりと吐く。
「そしてお母さんはお母様にあることを持ちかけました。その結果が私とアーモンド兄様です。」
「どういうことですの?」
理解できていないエンラに代わり、ルーティンが答える。
「結婚は出来ないけど、子供を作ることはできるってところですか?」
「ふふっ。その通りです。流石はルーちゃんですね。とても賢くて聡いです。」
ビオラは立ち上がり、1冊の青い本を持ってくる。
「見てください。」
「これは?」
受け取ったルーティンは適当なページを開く。
「これって写真ですわ。お母様!?それに隣にいるのは・・・。」
「その隣で赤ん坊を抱きかかえているのが私とアーモンド兄様のお母様です。」
楽しそうに笑う女性の横で、柔らかね笑みを浮かべて赤ん坊を抱いている。
「ということはこの赤ちゃんは・・・。」
「アーモンド兄様です。」
アルバムをめくっていけば必ず2人の女性ばかりが写っている。
「世間的には認められません。ですが確かに、お父様とお母様の間には“愛”が存在していたのです。その証拠が私とアーモンド兄様です。」
「でも、表には国王陛下と女王陛下の子供として発表していると。」
「ええ。」
短く答えたビオラは寂しそうな顔になる。
「姉様はそれでいいんですの!?」
納得できないエンラはビオラに詰め寄る。
「良いも悪いも、私たちが決めることではなく当事者であるお父様たちが決めることです。お父様たちがそういう風に決めたのなら、私は何も文句はありません。それにお母さんは私たちをとっても可愛がってくれています。」
「わかんないわ!全然わかんない!」
大人の難しい事情を、子供のエンラは受け入れられなかった。
「ちなみにこの方は今どこに?」
ルーティンが冷静なことにビオラは少し驚くが、すぐに答える。
「今はマーマレイドにて、スローライフを送っています。時々、私が会いに行っていますよ。」
(ま、マーマレイドだと?)
次第につながり始めたピースにルーティンは目を見開く。
「ルー!マーマレイドって!?」
「うん。」
言いたいことが分かったので、頷いて肯定する。
「マーマレイドがどうしたのかしら?」
「実は僕たちが会いたい人がマーマレイドにいるんです。その人は最初に亡くなった第3王子を見た方で、名を・・・。」
「リーメさんですね。」
ビオラが知っていたことにちょっとだけ内心で驚くが、精一杯顔には出さない。
「はい。僕はそのリーメさんに会って話をしたいんです。」
隠しても無駄なような気がして、ルーティンは隠さずに話す。
「・・・何を聞きたいのかはあえて聞きません。ですが、これだけは約束して頂けますか?」
「・・・何でしょうか?」
「どんな真実だったとしても、ルーちゃんが辿り着いた答えを私に教えてください。」
震える手から真実を知るのが怖いことが受け取れる。
でも、ビオラの目は何からも逃げない闘志を秘めている。
そんな姿を見たらルーティンは断るに断れない。
「わかりました。僕が、いいえ。僕たちが辿り着いた答えをビオラさんに必ず話します!」
ギュッとエンラの手を握る。
何故だかこうしなけばならないと思ったからだ。
「ルー・・・。」
頬を赤らめ、エンラは酔いしれたような目でルーティンを見つめる。
「エクセレントォッ!!」
そう言ってビオラさんは鼻血を流して倒れた。




