計画62
「坊ちゃま!」
ラムザが出て行ってすぐにミリアが馬車の外から声をかけてくる。
今回ミリアは料理担当のサポートのため、別の馬車に乗っている。
この度の料理担当は料理長補佐でサリアの兄、グリム・ボーマン。
細身で、目も細く、少し神経質そうな印象に見られがちだが、実際はとても優しい。
もう1人はサリアである。
「どうしたのミリア?」
「森の方から煙が上がっています!?」
(見間違いじゃなかったか~。)
「ミリア、少し落ち着きなさい。煙がどうしたの?」
こういう時でも冷静でいられるマリネは本当にすごいと思う。
先程のラムザへの返事も即答だったし、ミリアに対しても微笑みながら対応している。
それは単にお気楽だからではなく、安心させる為なのだろう。
(すごいな~僕もこうなれるように頑張ろう。)
心の中で場違いなことを思いつつ、もう少しミリアに詳しく聞いてみる。
「確かに煙が見えるけど、何か問題なの?」
ルーティンは外を見てから尋ねる。
「ここら辺に村などはありません。それなのに煙が上がるということは何かあったということです!」
まだ少しミリアは興奮している。
「ミリア、深呼吸しなさい。そうすれば少しは落ち着くわ。それに、もしかしたら私たちの様に旅をしている者の可能性もあるでしょ?」
「そ、それは、そうかもしれません・・・。」
先程の興奮が冷め、ミリアは俯く。
「怒ってはいないわ。だからそんな顔をしないで。」
「はい・・・。」
(なんだか可哀そうだな。)
そんなことを考えていると自然と頭に手が伸び、撫でる。
突然のことに驚いたミリアは喜びと同様を行ったり来たりしている。
(やってしまった・・・。とりあえず誤魔化そう。)
「泣かないでミリア。」
「は、はい・・・。」
耳が真っ赤である。
「これは少しお灸をすえた方が・・・。」
その光景を羨ましい感情と妬ましい感情を行ったり来たりしながらマリネは見ている。
「失礼しますお嬢様。」
頭を撫でていると、ラムザが戻ってくる。
「どうだった?」
「はい、問題発生です。」
クールに言われたが、ミリアが正しかったようである。
「どんな問題かしら?」
「それが・・・。」
チラッとルーティンを見る。
(僕がどうしたんだろう?もしかして、邪魔?)
「気にせず話しなさいラムザ。」
「畏まりましたお嬢様。実はあまり要領を得ない話ですが、どうやら先頭の騎士の前に傷ついた獣人の女性が倒れていたそうです。」
(マジで!?)
「その方の怪我の具合はどうなの?」
「酷いですが、命に別状はないそうです。現在、治療中です。」
「そう・・・。」
目を閉じ、少しの間考える。
その間、一言も話すことなくラムザはじっとマリネを見ている。
その姿はまるで言われれば即座に行動に移せるようである。
「最終的にはお父様の判断になるでしょうけど、私の考えぐらいは述べておきましょう。ラムザ、ついてきなさい。」
「畏まりましたお嬢様。それではこちらへ。」
扉を開け、椅子の下に隠してあった台座を地面に置く。
「ルーはここでミリアと一緒に待ってなさい。ミリアは馬車の中へ。いいわね?」
「はい!」
(本当は見てみたいけど、そんな不謹慎なことは言えないよな。)
「は~い。」
2人の返事を聞き、マリネは馬車を後にする。
ルーティンも何かできないかと考え、ヴェルグを呼ぶ。
「ヴェルグ、いる?」
「ここにいますぜ坊ちゃん。」
馬車の外から声が聞こえる。
「ヴェルグも父上の手伝いに行って。」
「へ!?いいんですか?ここを離れたら危ないんじゃ・・・。」
「大丈夫だよ。ここは真ん中の馬車だし、ミリアもいるしね。」
「はい!坊ちゃまのことは命に代えてもお守りします!」
(やめてね?身を挺して守るとか。)
「お願い!ヴェルグ!」
「し、しかし・・・わかりました。行ってきます。」
悩んだが、命令に従うことを選ぶ。
足音が遠ざかって行くの聞いて、頷く。
(待っている間何もしないより、考察してみよう。)
これまでの情報を順に頭の中に浮かべていく。
(時系列的にはこういうことだろう。僕たちが旅立った後に、獣人の女性が何かが原因で傷ついた。そして道端に放置?されて、そこに僕たちが通りかかった。だけど、煙が見えたことから獣人の女性はこの道に来てからそんなに時間が経っていない可能性がある。ここまではいいだろう。)
窓の外の煙を見る。
(問題は煙の要因、傷の要因だ。この2つを関連付けて連想すると・・・・・・。)
「盗賊?」
「え!?坊ちゃま!?」
ルーティンのつぶやきを聞いたミリアが慌てだす。
「ご、ごめん!単なる想像だから!気にしないで!」
「で、ですが!?」
「本当に本当だから!落ち着いて!ね!」
「うぅ・・・わかりました。ですが、どういうことですか?盗賊って。」
「いやさ、獣人の女性が傷ついて倒れていたって言っていたでしょ?それに森の煙と、2つを関連付けて考えたらさ、盗賊に襲われたって考えちゃって。ごめんね。」
「な、なるほど!それが本当なら知らせた方がいいのではないですか?」
「う~んこれぐらいならお姉ちゃんも父上も即座に考え付くと思うから大丈夫じゃない?」
「そうですか?」
「うん。」
「坊ちゃまがおっしゃるならそうなんでしょうね。」
2人で笑うと、馬車が動き出す。
「あれ?この馬車動いていませんか?」
「確かにそうだね。問題が解決したのかな?」
「でも、マリネ様は?」
「・・・確かに。あれ?」
馬車は静かに動き始めた。
不審に思った2人だが、外から何も聞こえないことから気にしないことにする。
これが間違いだったということはもう少ししてから後悔という形になって表れることになる。




