計画50
「ん?どういう意味なのかしら?よくわからないわ。」
カレンは理解できず、目でアーリアに助けを求める。
アーリアも答えを知らず、困っている様子である。
そんな様子を見かねた近衛兵長が一歩前に出る。
「僭越ながら、私の方から説明させていただいても?」
「はぁ~構わん。この子たちに分かりやすいように説明してくれ近衛兵長。ルーティン、君は良く聞くのだぞ。」
「は、はい・・・。」
ルーティンは申し訳なくなり、頭を軽く下げる。
咳払いをしてから近衛兵長は話し出す。
「先程も陛下からお話があったように、暗黙のルール上、王族からの、特に王族女性からの婚姻の申し出は拒否できず、また破棄することもできません。例外として、王族女性からの破棄は出来ます。そして他国への干渉は五国条約により出来ません。ここまでは皆さん、ご理解して頂いていますね?」
「ええ。」
「もちろんよ!」
「はい・・・。」
「では、ここで問題になるのが他国の王族が、婚姻の申し出をした場合です。本来ならば、五国条約により、婚姻の申し出そのものができません。」
「その通りよ!だからあの子たちだって本当はしてはいけないんでしょ!」
「ええ。ですが、過去に特例がございます。」
「特例?何よそれ?」
「これはスクールが関係しています。」
「交換学生制度ね!」
ポンっと手を叩く。
「ええ、その通りでございます。他国の技術を学びたいという学生同士が、陛下の許可を貰い、互いの国へ交換学生として出向きます。そこでしっかりと学んでから帰国されますが、この交換学生制度は学生なら誰でも権利があります。」
「つまり、その権利を使って過去に王族が他国に行き、その国の方に婚姻の申し出をしたのね。」
「その通りでございます。アーリア様は聡明でいらっしゃいますな。」
「うふふ。」
「流石は姉様!」
「うふふ~。」
“機嫌がよさそうだが、話を先に進めてほしい”とルーティンは内心でぼやく。
「それで!それはどうなったの?」
「その方は自国を別れ、その王族の方の国に移住なさいました。」
「それって!?」
つまりはこういうことだ。
ここで例としてネフェルさんをあげる。
ネフェルさんはザルツシュタンゲン王国の王女で、僕はパニーニ王国の貴族。
言わずともネフェルさんの方が立場が上である。
そのネフェルさんの婚姻の申し出を受けてしまった僕は、パニーニ王国から離れ、ネフェルさんの住むザルツシュタンゲン王国に住むことになるわけだ。
アーリアは事の重大さに気づき、手を口に当てる。
「ちょっと待ってよ!それじゃルーティン様はザルツシュタンゲン王国に行かなければならないってこと!?わ、私だって婚姻の申し出をしたのに!?」
そうだな。
ここが過去の人と僕との違いだ。
過去の人はあくまで2国間で行われたことだから、このような特例になったのだろう。
しかし、僕の場合は豪勢に5か国間の婚姻の申し出であり、全員王族と言う欲張りセットなのだ。
・・・チクショウが。
こんなもん望んでないぞ。
「カレン様のお気持ちはごもっともであります。ですからルーティン様にはカレン様の婚姻の申し出が有効になります。」
「そ、そうよね!」
カレンは胸を張る。
「ですが!同時にネフェル様、ルリア様、エンラ様、キリエ様の婚姻の申し出も有効になります。」
「ちょ、ちょっと!?」
「これは過去に見ない例であります。前例のない事態に陛下は頭を悩まされているのが現状です。」
カレンはあわあわしながら必死に頭を回転させるが、何も浮かばない。
アーリアもカレンの為に考えはするが、答えなどない問題に答えを出すことはできない。
だからこそ、マクスは悟ったのだから。
「ふぅ~。これは早々に五か国会議を開かねばならんな。」
ロイゼンが重い瞼を開ける。
「やはりそれしかありませんか陛下。」
「セバス、君のマクスを思う気持ちを尊重したいが、こればかりはどうにもならん。彼らとの話し合いは必然だ。そしてその結果がどうあれ、マクスには何かしらの試練があることもな。」
マクスの口から白いものが出て行く。
“あれはきっと魂に違いないね!”などとルーティンも現実逃避を始める。
「では、そのように準備をいたしましょうか?陛下。」
「うむ。そうしよう。問題が山済みなのにまた新たな問題か。疲れが取れないわけだな。」
ロイゼンは肩を回す。
「ごめんなさい。」
ルーティンは素直に深々と頭を下げる。
「いやいや!気にすることはない。こればかりはルーティン、君が悪いわけではない。カレンの言うことが真実であることから推測するに、残りの4人も同じように女神様からの啓示を受けたに違いない。つまり、これは女神様からの君への試練だ。女神様は君に、何かしらの期待をしているのかもしれないな。」
フッと笑う。
「まぁカレンがそうであったように君に責任があるとしたら、魅力的な少年ということかな!カレンも一目惚れをするほどだからな!フハハハハハハ!」
「お、お父様!?」
真っ赤なカレンが手をばたつかせる。
「・・・はい。」
落ち込んでいるのを見て、ロイゼンはルーティンに優しく笑いかける。
「今はまだ混乱しているだろうからゆっくりと休みなさい。今後については君に不利にならないように私が責任をもって対処しよう。もしかしたらマクスにも協力してもらうかもしれないから、今のうちに甘えられるだけ甘えておきなさい。では、ここまでにしよう。」
パンッと手を叩くと皆がそれぞれに部屋を出て行った。
僕はと言えば、ミリアに手を引かれなければ動けないほどに思考が停止していた。
これから待ち受ける運命に僕はどうすればいいのか何も答えが出ていなかった。




