計画Ⅱ 13(終)
「以上で、ブランさんが受かった経緯のお話を終わりにします。ご納得いただけましたかね?」
納得していないと言いたそうなブランの顔。
だが、ブランに反論できる何かは無い。
口を開きそうになっては閉じるばかり。
それを見かねたフーカが立ち上がってブランの肩を叩く。
「ふ、フーカ!?」
「もういいんだ。」
そう言い、フーカは綺麗なお辞儀をルーティンにする。
「ありがとうございました。今回の試験は私にとって、とても参考になる実りのあるものになりました。」
晴れ晴れとしたフーカの顔に、ルーティンは微笑む。
「どうやらブランさんだけがご納得できていないようだね。」
「だ、だってよぉ・・・。」
最初の勢いが嘘のように弱々しい。
仕方ないと、ルーティンは思い言わないでいた止めになるような言葉を口にする。
「ブランさんはありのままの姿で僕の目の前に立ちました。」
「は?」
「けど、フーカさんは皆と同じような仮面を付けて僕の目の前に立ちました。この二人を見て、僕がどっちを信じる気になるかわかるでしょ?」
ルーティンの言葉の意味が少しの間を置いてブランにも理解される。
その瞬間に曇っていた目の前が晴れたような気がした。
「・・・ハハハ。なるほどな。仮面か。」
「変な例えで申し訳ないけどね。」
「いや、その例えの方がわかりやすい。」
ようやくブランも納得できたようなので、ルーティンは片付けをミリアとヴェルグに指示する。
手際よく片付けられている間に、ブランは最後の質問をルーティンにする。
「最後に聞いてもいいですか?」
ぶっきらぼうな態度はそこには無く、礼儀正しい騎士のような態度が見え始める。
「最後とは言わずにいっぱい聞いていいよ。これから長いんだからさ。」
「どうして俺だけだったんですか?」
「ん?」
「合格人数は一人とは書いてなかった。確か複数人だったと思うんですが。」
「ああ。そうだね。うんその通りだ。」
ルーティンはテーブルの上にある紙を取り、判子を押してフーカに見せる。
「フーカさん、これは合格通知書です。」
見せられた意味が分からず、どうするべきかフーカは迷う。
「これを受け取るか受け取らないかを貴方に判断してもらいたい。」
「私が・・・ですか。」
「うん。まぁ、これは建前なんだよね。正直一度落とした手前、今更合格にするなんて虫が良すぎるかなって。だからフーカさんに選んで貰おうと思うんだ。」
受け取れば合格になり、受け取らなければ不合格のままになる。
受け取るに決まっている、そうブランは思ったのだがフーカは受け取らずに悩んでいる。
「何やってんだよフーカ!早く受け取れよ。」
「・・・そのことなんだが、私だけ不公平じゃないか?」
「は?何言ってんだよ?」
「私は偶々君と知り合いになった。だからこんなチャンスに恵まれた。ここにいたのは私じゃないかもしれないだろ?」
「そりゃあ・・・。」
「けど、ここにいるのはフーカさんだよ。その事実も変わらない。」
「そ、そうだぜ!」
「しかし・・・。」
「フーカさん。偶には利口になるのを忘れていいんじゃない?自分の想いのままに動いてもいいんだよ。」
「私の想い・・・。」
「僕が言えた口じゃないけど、運も実力の内でしょ。」
ルーティンの満面の笑みに、フーカは悩むことを忘れ、合格通知書を受け取る。
懐にしまうと、膝をつき、頭を下げる。
「フーカ・バン。この身この命を全て賭けて、貴方をお守りします。」
ブランもフーカに倣って膝をつく。
「二人共これからよろしくね。これからは僕の騎士であると同時にヴェルグの部下だからね。期待しているよ。」
それだけ言い残し、ルーティンはミリアと共に部屋を後にした。
あれから月日は流れた。
ヴェルグの指導の下、ブランとフーカは騎士としてさらなる成長を遂げた。
フーカは礼儀正しいだけでなく、技術を磨くことでこれまで以上に剣の腕をあげた。
今ではマカベルグ家の騎士たちの中でも上位の実力の持ち主である。
ブランは最初の粗暴な態度は消え、フーカに並ぶ礼儀正しさが身に付いた。
驚くことに、ブランは様々な武器を巧みに扱え、最終的には槍の技術を向上させた。
強さも折り紙付きである。
「いよいよだな。」
夜、ルーティンが最後にマカベルグ家で過ごす日。
ルーティンはマクスの部屋に呼ばれる。
「明日から6年間。ルーは王都のスクールに通う。」
「はい父上。」
「準備は出来ているのかい?」
「もちろんです。ヴェルグ達も同様に。」
「そうか。ルー・・・いやルーティン。お前のこれからの未来の為に精進するのだ。」
「はい!」
「これを渡そう。」
ルーティンはマクスから短剣を受け取る。
「それはマカベルグ家の家紋の入った短剣だ。ルーティンがマカベルグ家の人間であることの証明でもある。この意味がわかるな?」
「はい!マカベルグ家に恥じぬように努力し続けます。」
「その言葉を聞いて安心した。もう寝なさい。」
お辞儀をし、ルーティンは部屋を後にした。
これから始まるスクールでも生活を想像すると、不安だったり、楽しみだったりと様々な思いが溢れてくる。
「ここからが大事な時期だぞ、僕。」
ルーティンのスクールでの生活が始まるのだった。
ここまで『ルーティンの新たな人生計画』をお読みいただき、誠にありがとうございます。
この話を持って、『ルーティンの新たな人生計画』の物語は終わりを迎えます。
当初の構想していた所まで書き続けることが出来て、僕の中では満足しています。
これからのルーティンたちの物語も気になるところではありますが、今の作者の頭の中には続きはありません。
またいつの日か、ルーティンの物語の続きが頭の中に現れることを祈って。
ご愛読、本当にありがとうございました。




