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元剣士、聖女に転生!?  作者: 銀花
第一部
1/30

転生聖女は隠れたい

大陸統一を果たした巨大帝国の後期はじめ──辺境の男爵家にひとりの少女が産まれた。

儚くおっとりとした美少女だったが、五歳の洗礼の儀式で、とんでもない記憶が蘇った。

それは前世の魂の記憶。

前世、彼女は男子であり、類まれな剣士であり、大帝国の統一に最後まで抵抗した、英雄とさえ呼ばれた人物だったのだ。

さらには、英雄のさらに前世は、地球に住む普通の一般人だった。


「……敵国に転生とか、ヤバすぎる……っ」


今世では、目立たず、何もせず、大人しくしてよう──かたく、決意するのだが……。


帝都からやってくる怪しい商人。

大陸じゅうを渡り歩く踊り子一座。

かつての英雄に憧れていたSクラス冒険者。

大人気のお菓子の店のオーナー。

辺境に赴任する帝国騎士達。


かつての敵達がどんどん、目の前に現れる。


英雄として、たくさん殺したし、身内を殺された。


確かに帝国に統一され、平和になったかも知れないが。平気で笑ってなどいられない……。


しかも、彼女は友である精霊も見えた。力を持っていた。


淡い金髪は月光のよう、淡い紫の瞳は宝石のよう。真っ白な肌は滑らかでミルクのようで、おとぎ話の精霊のよう……つまり、美しすぎた。


瞳のなかではじける金の光は、伝説の精霊眼の証。彼女の周りだけ常に清冽な気配に満ちて、そこに居るだけで聖域を作る。


大陸統一の戦禍の穢れた土地を癒すには、彼女の存在は必須だった。


勝手に聖女に崇められ、帝王に目をつけられ──さらに。


アリアーツェ・センテ男爵令嬢を、第二皇子カイル・アーデリシアの妻に。

さらに聖女を護る騎士として、聖騎士団を擁立、隊長は帝国の英雄、ジークリス・ティオームとする──。


第二皇子カイルも、騎士ジークリスも、戦争中幾度も戦った相手だ。殺しあった仲だ。


「……むり、逃げよ」


アリアーツェは精霊の森に身を隠す。

長い髪を切り暗く染めて、少年のフリをして、森に暮らすことにした。


生活は全く問題なかった。

精霊が助けてくれるし守ってくれるし、近場の村で買い物も可能。

聖女が消えたと大騒ぎする周りは無視して、のんびりと──。


のんびり……と……。

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