あの時:デスゲーム会場の天井裏
その日、主催の悪魔……数々のデスゲームを開催してきた悪魔であり、同時に、後に『とんかつの悪魔』と名を改めることになるその悪魔は……頭を抱えていた!
「……首輪がぁ!」
そう!今、主催の悪魔が開催しているデスゲームが、早速、とんでもないことになっているのである!
なんと……首輪を素手で引き千切った者が現れたのだ!
デスゲームが、破綻した!
……主催の悪魔は、茫然としながらこの状況を見守った。
というのも、主催の悪魔は、首輪を素手で引き千切った男……樺島剛のことを、全く注視していなかったのである。
何故ならば、このデスゲームはただ……『宇佐美光』の魂を美味しく調理するためのデスゲームだったから。
主催の悪魔の視線は、ただ、『天城』と名乗る老人……『宇佐美光』ばかりに注がれていたのである。
結果、バカが首輪を引き千切った瞬間になってやっと、『あれっ?ところでこいつ、誰だ?』と気づいた。おマヌケではあるが、仕方がない。悪魔のデスゲームにおいて、唐突に参加者が増えたり減ったり交換されたりすることは、ままあることなのだ。一々気にしていてはデスゲームは運営できない。
……が、それにしても、あまりにもあんまりな参加者が紛れ込んだものである。首輪を引き千切ったということは、そういう異能の持ち主なのだろうな、と主催の悪魔は納得しつつ、『さて、どうしたものか』と悩む。
実は、悪魔とて、相手の異能を知ることは容易ではない。
『悪魔のデスゲーム』を通して、自分が用意した参加者にどのような異能が発現したかを調べることはできるが、きちんと調べない限りは悪魔といえども、相手の異能を知ることなどできないのである。
よって、主催の悪魔は首輪引き千切りバカの異能について、『怪力……或いは、破壊、など、か……?』と考えていたが、答え合わせはできないのである。
仕方なく、『まあ、物理的な働きかけを強力に行う類の異能であることには間違いない』と納得し、そして、『まあ、それだけなら時々いるタイプだし……』と自らを落ち着かせた。
……首輪を引き千切ったバカは、首輪を引き千切った以外は特に暴れず、のんびりふらふら、部屋の中で過ごしていた。早く謎を解かないとお前死ぬぞ、と言ってやりたい気分ではあるのだが、まあ、主催の悪魔もそこに介入する気は無い。
そして、介入している暇も無い。
「おお、井出亨太の収穫が始まるぞ……」
主催の悪魔は気を取り直して、本日の副菜の1つである……『井出亨太の絶望』を楽しむことにした。
井出亨太は、『天王星』の部屋に『壁抜け』で侵入し、『天王星』の参加者を殺す予定だった。
……しかし、その『天王星』の部屋に待ち構えているのは……『宇佐美光』である!
そう。この『宇佐美光』は、多くの悪魔を魅了している魅惑の逸品。優れた容姿と頭脳、そして人間にしておくのは勿体ないような度胸をも兼ね備えている。
それでいて、『宇佐美光』は、50年もの間、復讐と救済のために身を窶してきた。それも、悪魔の掌の上で。
……初めに、このデスゲーム中で『宇佐美光』を見つけた時は、『ああ、こいつは美味そうだな』と思う程度だった。井出亨太には、『あいつ美味そうだから、恋人の方を先に殺して絶望させてくれ』と命じておいた。そうしておいて、最終的には宇佐美光の魂も食べる予定だった。
だが……そのゲームでは宇佐美光だけが生き残り、そして、『次のデスゲーム』を願ってきたのだから……気が変わった。
『おお、恋人の復讐のために次のデスゲームを望むような奴ならば、何年か熟成させて、何度かデスゲームを体験させて、そうしてまろやかかつ重厚な味わいを兼ね備えたところで食べた方がいいなあ』と。
……そうして悪魔達の期待通り、宇佐美光は見事、50年掛けて『最初のデスゲーム』へ帰ってきたのである。これに、主催の悪魔は大いに期待を寄せていた。
言わば、彼は悪魔にとって、50年物の高級酒、といったような位置づけである。丁寧に丁寧に、長い時間をかけて最高の食材を調理したのだ。美味くない訳が無い!
ということで、主催の悪魔が楽しみにしているのは、宇佐美光の絶望しきった魂である。
が、井出亨太は井出亨太で、まあ、そこそこ美味いだろうと思われた。
少なくとも、『壁抜け』をして『天王星』の参加者を殺そうとした矢先、待ち受けていた『天王星』に逆に殺される、となれば、井出亨太も大いに絶望するだろう。
……井出亨太は、『デスゲームに参加する人間』としてはありえないことに、『自分が死ぬ覚悟』を全く持っていない。
恐れていないのだ。慢心している。『自分は主催者側だ』と勘違いしている。悪魔に利用され、適当に扱われているだけの、人間の中でも下等な生き物であるというのに、その自覚すら無い。
だからこそ、そういう人間が死ぬ時には絶望が味わえる。
自分が立てたお粗末な計画が(本人は完璧な計画だと思っているのだろうが)、見るも無残に打ち砕かれ、そして、死ぬと思っていなかった自分が死ぬ。その瞬間の、愚かな人間の絶望というものも、まあ、安っぽい味わいではあるが、アレはアレで美味しい。
よって主催の悪魔は、ウキウキソワソワ、天王星の個室を見守っていたのだが……。
「ああー……もうちょっとしっかり絶望させてから〆てほしいのだが……あああー……」
……宇佐美光は、井出亨太を認識するや否や、さっさと『無敵時間』で井出亨太を固めてしまった!
更に、宇佐美光はテキパキと動き……まず、ベッドを解体し始めた。
部屋の中、謎解きのために用意しておいたドライバーなどを用いて、宇佐美光は器用にベッドを解体していく。
ベッドは簡素なものだったので、すぐさま解体されていき……そして、そのベッドの脚3本が床に敷かれ、その上に井出亨太は寝かされ……そして、残ったベッドの脚1本は、その先端にマイナスドライバーをしっかり固定された上で、井出亨太の目の上に置かれた。
「お、おおお……えげつないことを考える人間だ……」
主催の悪魔は、『やっぱり、宇佐美光は悪魔向きなんじゃないか……?』などと思いつつ、この状況を見守った。
……今、井出亨太に仕掛けられた諸々の仕組みは、つまり……『無敵時間』が切れた瞬間、ベッド本体の重さが乗ったマイナスドライバーが、井出亨太の目に突き刺さる、というわけである。そして多分、その奥の脳まで一気に行く。間違いない。
こうなると、死ぬまでにじわじわと絶望するようなことにもなってくれないので、味わいが落ちる。悪魔としては、『首を括って吊るしておくとか、そういうのの方がよかったな……』と、ちょっとがっかりするしかない!
が、主催の悪魔のがっかりなど他所に、宇佐美光は更に対応していた。
井出亨太が『壁抜け』できないように、ということか、井出亨太が寝かされた箇所には『壁』判定にならないよう、金庫が設置されたり、金庫を開ける鍵となるプレートが置かれたりしている。成程。えげつない。
主催の悪魔はまた、『あいつは悪魔向きだったなあ……』などと思いながら、まあこれはこれでいいか、と思うことにした。
井出亨太が死ぬ瞬間はもうじき訪れるだろうが、それはもういい。後は、魂だけになった井出亨太に適当なことを吹き込んでやって、より深く絶望させてから、カンテラに入れて会場の様子を眺めさせようと思う。
自分が設計したデスゲームで自分よりうまくやっている参加者達の姿を見れば、井出亨太はそれだけで絶望してくれるだろう。
……が、問題はこっちである。
「で、こいつは一体、何なんだ……?」
バカである。
首輪を引き千切ったバカが、タックルでドアを破っていたのである!
主催の悪魔は、『修繕費!』と頭を抱えた!
主催の悪魔が頭を抱えている中でも、バカは元気に動く。水に追われながらも、ずどどどどど、と走るバカは、やがて、大きく跳躍して大広間へと滑り込んだ。
……そこで、『天城』と名乗ることになる宇佐美光が、驚いている。
それはそうだ。主催の悪魔もこんなバカは知らない。『天城』も当然、知らない。
「くそ、誰の差し金だ……?」
ここで、主催の悪魔はようやく考え始める。
このバカは一体、何なのか、と。
……さて。これは本当に、他の悪魔の仕業だろうか。主催の悪魔は、いくつかある心当たりを考えてみるが、答えは出ない。
悪魔同士で足を引っ張り合うこともよくあることではある。が、それはそれとして、悪魔であるならば『流石に、50年物の魂の仕上げの段階に邪魔に入るのは冒涜的すぎる!』ぐらいの感覚は持ち合わせているものである。人間の、とりわけ日本人の『米を踏むとか流石に無い!』という感覚に近い感覚であろう。
が、そこらへんを全く考えずにずかずかと上がり込んできそうな連中というと……真っ先に考えられるものは天使であるが、どうも、それも違う気がする。
何せ……バカだ。
バカだ。バカである。主催の悪魔は、バカがバカなことをやっているのを見て、『こいつ大丈夫か……?』と一周回って心配になってきてしまう。
自己紹介でさっさと本名らしいものを名乗ってしまうし、周りからの疑念を払拭するような態度を取れるでもない。
そして、異能を隠すでもないのだ。
……首輪を素手で引き千切っているのはもちろん、ドアはタックルで開けているし、更に、見守る過程で遂にライオンを殴り飛ばし、鉄格子アートでプードルを作り始めた。
そう。バカなのだ。どう考えても、バカすぎるのだ!
周囲に警戒されるような動きを躊躇なくやってしまうあたり、本当に、バカ!
確かに、天使というものは往々にしてバカっぽい奴が多いものではある。何せ、善人揃いなのだからそうなる。
が、だからといって全員がバカではない。少なくとも、こんなにはバカではない。こんなにバカなのばっかりだったら、天使というシステム自体が成り立たないはずである。
だが、わざわざ『悪魔のデスゲーム』に天使を送り込んでくる奴が居るならば……そいつは間違いなく、『ちょっとは賢い奴を送り込もう』と考えるはずである。だってデスゲームなのだから。
が、バカ。すごく、バカ。
……そう考えると、『やはり、送り込まれてきた天使の刺客、という線は薄いか……』と思わざるを得ない。
そもそも、こいつが天使だというのなら、羽か輪っかの気配はありそうなものだが……どっちも、全く、無い!
羽は分かりにくいものだから感じ取れないにせよ、輪っかは分かりやすい。あっちの気配は、何をどう探ってみても、全く感じ取れないのである。
ということで、主催の悪魔は、『天使が来たのでは?』という案を真っ先に捨てたのだった。
……まさか、答えが本当に『滅茶苦茶バカな上に、仮免でしかない天使』だなどとは、誰が思うだろうか!誰も思わない!
そうして、主催の悪魔は『まあ多分、アレは怪力とかの異能持ちの人間なんだろうな……。どっかの悪魔が、急遽、適当に突っ込んだ先がここだったんだろう……』と結論付けるに至った。それ以外に考えようがなかったのである。
仕方がないので、主催の悪魔はちょっぴり心配になりつつも、井出亨太の魂をつついて遊びつつ、デスゲームの様子を監視していた。
……まず、天城は1人で水瓶の部屋に入り、事故死したように見せかけて『無敵時間』を使っていた。これは元々、主催の悪魔も分かっていたことなので、『よしよし、ちゃんとやってるな』とにっこりするしかない。
天城にはちゃんと、最後まで生き残ってもらわねばならない。そして、愛する恋人の魂を、自らの手で破壊してもらわねばならないのだ!
次見たところでは、人間数名が入った『射手』の部屋の迷路で一悶着あった様子だった。
というのも、『金星』の女……ビーナス、と名乗った彼女が、意図的に罠を作動させて、『海王星』の海斗に向けて矢を飛ばしたのである。
が、海斗が自分に向かって飛んでくる矢に気付いて硬直した直後、『土星』の土屋が間に入って、代わりに犠牲になった。この動きは、主催の悪魔から見ても中々に見事なものだったので、『ああいう高潔な人間の魂は、絶望させるとすごくおいしい……』とにこにこした。
……が、結局は、全員が無傷であった。土屋が受けた矢の傷は綺麗さっぱり、『治癒』の異能で治されてしまったらしい。
更に、その『治癒』の異能者、ミナと名乗った水星の女については、井出亨太がちゃんと設計して置いた女である。
というのも……井出亨太は、『治癒』の異能の取り合いになるだろうと踏んでいたらしいのだ。
そこで起こる人間同士の対立を楽しむ、と井出亨太は言っていた。また、上手く対立が起こらなかったなら、ミナが孤立する状況に追い込んで、自分だけが味方になってミナに好かれる状況を作る、とも考えていたらしい。……まあ、つまり、井出亨太は下見段階で、ミナのことを気に入っていたようだ。
これについて、主催の悪魔は『夢見がちすぎる!』と大笑いである。今も、井出亨太の魂に『ほら、お前が手にしようとしていた女はあの土屋という男に懐いたようだぞ!まあ、あいつは高潔な魂を持つ人間だからな!当然か!』などと言ってやって、井出亨太の魂をいじめて楽しんでいるところだ。
……そんな『射手』の迷路では、先程命を狙われた海斗が、『自分が殺されるかもしれない』という恐怖でがんじがらめになっていた。主催の悪魔はこういう人間も大好きなので、にっこにこである。
そして海斗が、解毒室に入ってすぐ、ミナを押し退けて解毒装置へ走ったのを見た主催の悪魔は、より一層、笑みを深めた!
主催の悪魔は!こういう人間が!大好き!
『ああ、プライドがあって、能力はそれなりに高いのに本人の理想はもっと高くて、良識も良心もちゃんとあるのに、臆病故に他者を犠牲にしてしまって後で後悔するタイプの人間……あれは絶対に美味しい……』と、にこにこうっとり、海斗を見つめる主催の悪魔なのであった……。
さて。
そうこうしている内に、あと5分で鐘が鳴る、というところまで来た。尚、この後、鐘は勝手に鳴る設定である。一々タイムキーパーなどやっていられないのでちゃんとアラーム設定した。
が、カンテラに魂を入れておく作業は、主催の悪魔の仕事である。主催の悪魔はちゃんと資格を持っているので、魂を取り扱うことができるのだ!
『お前はここでじっくりと、デスゲームを観戦するといい。誰がお前の魂で願いを叶えるか、楽しみだな!』と言ってやりつつ、井出亨太の魂をカンテラに収めて、主催の悪魔はまた天井裏へ戻った。
……天井裏には、『蟹』の器がある。既に、『駒井つぐみ』の魂が入っているそれに、他の魂も無理矢理詰め込んで……悍ましい化け物へと変じさせてやるのだ。そしてそれを、天城自身が破壊して、この50年間の『熟成』は完了となる!
主催の悪魔は、それはそれはうきうきと、その時を待つのだった……。
が、楽観していたら、酷いことになった。
例のバカのチームが次に入ったのは、『魚』の部屋であった。ここの人食い魚は、主催の悪魔が直々にこしらえたものだ。人を襲うことについては、大いに自信がある!
……否。『あった』のだ。
だが、例のバカは人食い魚の水槽に『ちゃぷん!』と顔を突っ込んだ。主催の悪魔は、『ん?何をする気だ?自殺か?』と気になって、スピーカーをONにした。
……ONにしちゃったのである!
「……今のは、何だ……?」
その結果、主催の悪魔は鼓膜をやられた!スピーカーは、破壊され、『ぼん!』と煙を上げている!
……主催の悪魔は、『誰だ!あんなバカをここに連れてきたバカは!』と、大いに憤った!
だが……もしここで、主催の悪魔が『キューティーラブリーエンジェル建設ー!』という歌を聞きとることができる程の、頑丈な鼓膜を持っていたなら。
もしかしたら……主催の悪魔は、気づけたかもしれない。『樺島剛』が、天使であるということに……。
主催の悪魔は自分の鼓膜を修繕して、なんとか戻ってきた。『全く……』とぶつぶつ言いながら。
が、そこで中々に面白いことが起きていたので、気を取り直す。
というのも……早速、『宇佐美光』が動き出したのである。
『宇佐美光』は2人居る。1人は、『天城』として、水瓶の部屋で死んだふりをしていた。
が、もう1人は『陽』として……本来ならば、ごくごく優秀にデスゲームを突破し、ただ1人生き残った勝者として君臨するはずだったその若者として、ここに存在している。
陽は、天城から諸々の情報を与えられていた。即ち、恋人である駒井つぐみがこれから死ぬ運命にあることや、既に井出亨太は仕留めたということ。そして……これから自分達が成すべき殺人についても。
……結果、陽は自分と自分の異能をコピーした『たま』と共に、『無敵時間』を使った。……水瓶の部屋から持ち出した毒を、その場で使ってから。
『無敵時間』で、陽とたまは無事であった。だが、海斗とヒバナは毒で死ぬ。
2人がそこで死んだ頃、リンゴン、リンゴン、と鐘が鳴った。
……そこで、次は天城が動く。
天城は、陽が大広間に残しておいた情報を元に、誰がどの部屋にどういう組み合わせで入ったかを知っていた。そして、『天秤』の部屋にまだ誰も入っていないということも知っていたのだ。
天城は昼の時間の間に1人、『無敵時間』が終了してすぐ動き出して、『天秤』の部屋に入り、そこを攻略した。
そして解毒した後、攻略して手に入れた『金星』の人形を使って、ビーナスを攻撃したのだ。
「うーむ、実に上手くやる……」
主催の悪魔は、『宇佐美光』達の手際にうっとりしていた。
ビーナスが血を吐いて倒れたことで、ミナは『治癒』の異能を消費してしまう。だが、人形を天城が持っている以上、ビーナスは何度でも殺せるのだ。
一方、ミナが『治癒』を使えば助けられたであろう海斗とヒバナについては、この時点でミナの『治癒』が消費されてしまったため、助かる道が消えた。
……こうして、『宇佐美光』達は見事、3人の人間を一度に殺すことに成功したのであった。
だが。
「……ん?」
主催の悪魔は、驚いた。
……というのも、宇佐美光が、死んだからである。
「えっ」
……死んだのは、『陽』の方だった。
なんと……『美の彫像』と『火炎武装』によって生じた炎の騎士が、その異能の主達の死後も動き……陽を殺してしまったのである!
そして、陽が死んだということは……天城の方は……。
「……い、一体、何のためにデスゲームをしていたのだったか……」
……主催の悪魔は、『天城』に関する情報を全て失っていた。
それは、『天城』が生まれる前に『陽』が死んだから。それによって、これから先の未来で『陽』が行うはずだった全ての事象が消え、世界が、大きく動き出す。
主催の悪魔も当然、その変化に巻き込まれる。天城についての記憶を失い、自分が何のためにこのデスゲームを開催していたのかも忘れ……50年ものの極上の魂のことすら忘れて、ただ、ぼんやり状況を見守るのみとなってしまったのである!
……とはいえ、悪魔は、悪魔だ。
天城についての全ての情報を失ってしまっても、『何かがおかしい……』と勘づくことはできた。
胸の中にぽっかりと開いた穴のような、空虚さが確かにある。何かがあった、ということだけは、分かる。
「くそ、誰の差し金だ!?」
さては天使か、とも思ったが、天使の関与の可能性は早々に切ってしまっていたため、真相には辿り着けない。
……更に。
「……うん?な、何故、あいつは光っている……?」
主催の悪魔が監視するモニター越し、バカが……発光していた!
主催の悪魔は、『また何かやるのか!?もう勘弁してくれ!』と、モニターをOFFにする。さっきのスピーカーと鼓膜のことは忘れていないので。
……だが、それ故に、主催の悪魔は『やり直し』の瞬間を、見ていなかった。
勿論、見ていたとしても何も変わらなかっただろうが。
……主催の悪魔は、まったく自覚できないままに『やり直し』に巻き込まれ、世界は元の姿を取り戻し、そして……。
「なんだこのバカはァ!」
……大広間に入ってきた陽の首輪を『バキイ!』とやってしまった2周目のバカを見て、『ゲームが崩壊した!』と頭を抱えるのは、この後すぐの話なのであった!
本日より、『頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム』のコミカライズがコミックガルドさんにて連載開始しております。
詳しくは活動報告(https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/486724/blogkey/3592317/)をご覧ください。




