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-外伝- 遠い未来 その05。

 寝る前の挨拶。最後迄言えなかった。

 私はお二人に抱かれながら朝迄"ぐっすり"と眠った。


**********


 最初に抱き枕になった日から半年程が経過した。

 この頃には私は完全にアリシア様とミア様の専属侍女となり、コレットさんの手を離れて彼女の次に偉い人の立場となった。

 慣れというのは素晴らしくもあり、怖いものでもあるものだ。

 私はあれだけ恐れていた[人が死ぬ]ということを恐れなくなったのだから。

 と言っても、それはこちらに害を成そうとして来た者に対してだけだ。

 私は立場上、アリシア様とミア様の他地方への出張に付き添うことが当たり前のこととなっている。

 いつも普通に往復できたら良いのだけど、そうじゃない時もある。

 野盗なんかに襲われる時があるのだ。

 そんな時は私の出番。今日もそんな日だった。


「護衛が女1人とか襲ってくださいって言ってるようなもんだぜぇ」

「っていうか、いい女じゃねぇか。たっぷり可愛がってやるよ」


 野盗って同じことしか言えないのかな?

 この台詞。今迄何人の野盗から聞いたかな? もう覚えてない。


「1.2.3……。全部で14人。そして、見た感じ弱そうなのばっかり」


 私の声を聴いて、野盗共が声を荒げて来る。

 だって弱そうにしか見えないんだから、仕方ないじゃん。


「あんまり調子に乗るなよ。小娘が」

「まぁいい。その言葉、後悔することになるからな」


 魔法は必要なさそう。

 私はコレットさん直伝の侍女の嗜みで野盗を撃退することにする。


 まずアイテムポシェットから取り出すのは8本のフォーク。

 それを左右の手の指の間に挟んで、投げナイフの要領で野盗へと投げつける。

 全部彼らの額に命中。これで8人撃退。次は太腿に仕込んであるナイフ。

 料理のステーキを切る時に使うやつ。

 軽いし、安いから普通のナイフより仕込みやすいし、投げやすい。


 5本投げてこれも彼らの額に全部命中。

 さて、最後の1人。親玉らしき奴はすぐには殺さない。その前に聞かないといけないことがあるからだ。


 仲間が瞬時に私に()られて焦っているソイツの所へ私は駆ける。

 背後へ素早く回り、料理用のナイフでソイツの脚の健を切って立てなくさせたら後はこっちのもの。

 だけれど、手を使われたら面倒なので、更にスカート内から取り出したナイフでその掌を突き刺して地面に磔にする。

 さぁ、楽しい。ごうも……。じゃなかった。コレットさん曰く「尋問の始まりだよ」だっけ。


 私はソイツの前に仁王立ちしてソイツのことを見下ろす。

 この時に忘れてはいけないのが、今迄はナイフやフォークで敵を倒して来たけど、この時にはちゃんとした武器を見せること。

 その方が尋問には有効的だとコレットさんから習った。


 という訳で、アイテムポシェットから取り出すのはダガー。

 アダマンタイト製で良く斬れることを示す為に地面に磔にした親玉の前で近くにある大岩をダガーを使って"スパっ"と真っ二つに斬ってやる。

 青白くなる親玉の顔。これでもう、これから私が問うことにちゃんと応えないと自分がどうなるか分かったかな。


「聞きたいことがあるんだけど、ちゃんと応えてね?」


 私はソイツからアジトの場所と人質の有無などを聞き出した。

 全部終わればもう用はない。


 ダガーをソイツの心の臓に向ける。


「まっ、待ってくれ!! 約束が違うだろう。俺は全部喋った。頼むから赦してくれ」

「約束? そんなのした覚えなんて私にはないけどなぁ」


 私は無慈悲にソイツの命を刈り取った。

 最後の最後で空中から杖を取り出して魔法を使う。


洗浄魔法(クリーン)


 これで綺麗になった。

 アリシア様とミア様の元へ戻っても問題ない。

 それにしてもこの杖っていつ買ったっけ?

 魔法というものを使い始めたその頃から私はこの杖を使っていた。

 買った覚えはない。拾った覚えもない。一体なんだろう? この杖。


「まぁ、いいか」


 私は杖を消し、アリシア様とミア様の待つゴーレム馬車へと歩き戻った。


「ただいま帰りました」

「お帰りなさい」

「お帰り。で? 今回はどうだった?」

「はい。アジトはこの近くで、野盗が残り2人いるそうです。それで人質はいないそうですよ」

「そう。じゃあ大した集団じゃなかったってことね」

「ですね」

「それにしても、いつ見ても侍女とは思えないわね」

「でも、コレットさんに侍女の嗜みって教わりましたよ」

「そんな侍女は多分他にいないと思うがなぁ」


 アリシア様とミア様が私の戦い方を見てドン引きしている。

 もう何度も同じことをしているのだから、そろそろ慣れてくれてもいいと思うのだけれどなぁ。

 ところでコレットさん、これって本当に侍女の嗜みなんですよね?


 その後、私達は念の為にさっきの親玉が言っていたアジトへと行ってみた。

 私は親玉の言うことを100%信じてはいない。嘘を言った可能性も存分にあると思ってる。

 ので、警戒は絶対に怠らない。が、今回は本当だったみたいだ。

 残りの野盗をダガーで倒し、人質がいないか見てみたけどいなかった。


 こうして領主館へ帰還。今回の出張も無事に終えた。


**********


 夜。

 今日も相変わらずの抱き枕な私。

 何故かいつも私が中央で、アリシア様が私の右側、ミア様が私の左側って決まっている。

 1度それがどうしてなのか気になって聞いてみたけど、「偶然じゃないかしら? ねぇ、ミア?」「というか、落ち着くからだな。私達が」っていう分かったような、分からないような解答が戻ってきた。


 後、3ヶ月程前からお風呂も一緒に入るように命じられた。

 それは恥ずかしかったから、断ろうとしたんだけど、「もし断ったら躾するわ」って笑顔でアリシア様に言われて……。その笑顔がとても怖くて、[躾]っていう言葉も怖くて。何されるか分からないし。

 断り切れずに3人で入るようになった。目のやり場には困るし、2人共お風呂はかなり広いのに私に密着してくるものだから、毎回のぼせそうになって困ったりしてたりする。

 してるんだけど、アリシア様もミア様もまるで私のことが手に取るみたいに分かるようで、毎回私がのぼせる直前のタイミングでお風呂から上がらせてくれるから、今のところはそうなったことはないんだけど。


「ねぇ、リーネ」

「はい」


 アリシア様が私に話し掛けて来る。

 その際に耳に吐息をかけられて「ひゃっ」なんて声を上げてしまう私。

 アリシア様は笑ってる。なんか恥ずかしい。頬がちょっと熱い。


「リーネって可愛いわね。ところでもう半年も貴女はわたし達の抱き枕になってる訳だけど、何か思うことないかしら?」

「思うこと……ですか?」

「例えばだが、これからは1人で寝ろって私達から言われたらリーネは寝れなくなるんじゃないか?」

「1人でですか……」


 ミア様に言われて、その状況になった自分を想像してみる。

 寝れないということはないと思うけど、物足りなくは感じるかもしれない。

 アリシア様とミア様の[温もり]を知ってしまったから。


「寝れないということはないと思いますが……」


 温もりの部分は省いて「物足りなくは感じるかもしれません」とだけミア様に応えた。


「物足りなくか。その物足りないというのは何が物足りないんだ?」

「うっ……」


 しまった。応え方間違えた。どうしよう? なんて応えたら良い?

 何が物足りないことにしよう。えっと、えっと……。

 

 良い応えが見つからない。"オロオロ"してる私を見て"ニヤニヤ"してるアリシア様が何かしら勘付いてそうな気がする。それでも何も言わないのは、私の口から何かしらを言わせる為だ。誰か助けて!


「リーネ」


 アリシア様が私の首に手を回し、私の唇に自分の唇を重ねて来た。

 突然のできごと。身体中が熱くなる私。しかも長い。いい加減に酸素が欲しい。


「ぷはっ」

「はぁ……っ」


 アリシア様が私から離れたと思ったら、次はミア様の番だった。

 こちらも長い。アリシア様の時と同じように私の身体は反応を示す。

 私って、知らなかったけど、誰とでもこういうことができる人だったのかな?

 ……なんか違う気がする。アリシア様とミア様としかしたくない。他の人は嫌だ。

 ん? アリシア様とミア様ならしたいってこと? じゃあ私って。


 ミア様から私から離れる。

 

「嫌だったか?」


 そう、聞かれて……私はすぐに首を横に振った。


「嫌じゃ……無かったです」

「そうか。でもまぁ……」

「今日はこのくらいかしらね。もう休みましょう」

「はい」

「おやすみなさい、リーネ」

「おやすみ、リーネ」

「はい。アリシア様、ミア様。おやすみなさい」


 3人で眠りに就く。

 いつもならすぐにうとうとしてくるのだけど、今日は……。

 

 アリシア様とミア様の唇の感触が忘れられない―――。


 翌日。私は朝寝坊をしてしまいコレットさんに叱られてしまった。

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