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甲子園4連覇チームを倒す話  作者: @tokizane
第■■■回全国高等学校野球選手権大会東東京大会決勝戦 青海大学付属高校対松濤高校
35/102

1回表 勝算があるとでもいうんか?

《青海視点》


開催日時:202■年8月■日

開催球場:明治神宮球場

監督:堂埜(青海大学附属高校)、勢源(松濤高校)


試合開始:15時30分

観客:31,343人


 スターティングメンバー

青海大学附属高校(先攻) 松濤高校(後攻)

1(中) 佐山   1(一) 屋敷

2(三) 芹沢   2(二) 華頂

3(捕) 今村   3(三) 中原

4(一) 風祭   4(右) 比叡

5(投) 泡坂   5(中) アダム

6(右) 貴船   6(左) 勢源

7(遊) 百城   7(遊) 逸乃

8(左) 国枝   8(捕) 片城

9(二) 御手洗  9(投) 桜




  *


 今村は言った。

「青海のモットーは『全国制覇』ではない、『優秀な選手を育てる』ことですらない」

 監督の堂埜はうなずく。

「『自律・自尊』です。寮の入り口のすぐの目立つところに貼ってありますやろ? 俺はこの言葉をこう解釈しています。『考えてプレーしろ』と」

 堂埜はうなずく。

「たとえば打撃・守備・投球といった各局面で危険側リスキーなプレーを選ぶのか? 安全側セーフティなプレーを選ぶのか? それは選手が判断すべきなんです。青海に操り人形はいらない」

 堂埜はうなずく。

「出場選手全員がミスを恐れず勝利に貢献してもらいたい」

 堂埜はうなずく。

「指摘がないとおとろしいな監督……。3年は特に後輩に見られていることを意識せなアカンのです。今の3年が引退したあとも常勝であって欲しいと思っとりよるさかいにね」


   *


 1回表、青海高校の攻撃。スコアは0対0。

 無死ノーアウト満塁。打順は4番風祭。


 マウンドの桜の周りに内野陣と捕手が集まっている。

 スタジアムの満員の観衆の反応は、

「超打者・風祭による先制打への期待」

 あるいは、

「松濤が初回から大量失点しワンサイドゲームになりそうなこの展開への不満・失望」

 この2種類だった。

 誰もまだ松濤の勝機を見出せていない。


「青海を倒せそうなのは大阪……和歌山……宮城の代表校か。やはり青海を倒せる相手は全国にしかいなかった」

 3万人の眼が言っている。

「青海を倒すのはおまえたちではない」


 1塁ランナーの今村(もえ)はバッターボックスにはいった風祭を一瞥し、そして相手バッテリーの様子を観察する。

(想像したないくらいの大ピンチやで松濤……)

 1番打者の佐山が3球目のスライダーを捉え1・2塁間を破るシングルヒット、

 2番打者の芹沢が1塁線への送りバントに成功、かつ俊足を飛ばしセーフ、

 3番打者の今村はカウント()()から四球フォアボールを選んだ。

 結果1つのアウトも獲れずにランナーがすべて埋まり、

 全国最強と謳われる打者と最悪の条件で第1打席を迎えることとなった。

(1年には荷が重すぎる相手やで……悪くないボールを投げとるんやがな)


 今村が青海高校を選んだのは、シニアで全国屈指の好()()としてその名を轟かせていた中学時代、都内に遠征し青海の中等部と対戦し、泡坂と風祭、二人の『王』に完全に、完璧に打ち砕かれた経験があったからに他ならない。

 今村は君主論者マキャヴェリスト。目的のために手段は選ばない。

(強いチームに勝てへんならその強いチームに加入すればいいんや)

(強者には惹かれるし憧れる。俺はもう二度と負けたくないからこのチームを選んだ)

 今村は望んで捕手に転向し、練習風景や試合の映像をコーチに撮影してもらい、自分のプレー集を作成し動画のコードを青海のスカウトに送りで推薦入学をとりつけたのだ。

 そして入学して2年間、今村は自分の望みを叶え続けてきた。


 常勝。


(風祭は力まないやろ。ここは長打なんていらん場面。最低限――犠牲フライか二重殺ゲッツー崩れでも1得点や。後続の泡坂が同じことをすれば2点入る)

 現状桜のコントロールはそこまで安定していない。カウントが悪くなればコースが甘くなる……。風祭は打ち損じない。

「無失点で切り抜けたら奇跡だね」

 ファーストの屋敷がつぶやいた。

 今村も内心屋敷の言葉に同意した。

 まもなくゲームが再開する。

 頭上の内野席から響き渡る応援歌、爆音で奏でられた『アフリカン・シンフォニー』が敗北イヴェントの挿入歌にきこえてくる。松濤ナインは絶望感を味わっているだろう。

 守備フォーメーションはほぼ定位置。

(バッテリーの〈意〉を見ておくか……桜も、片城もこのピンチに負のオーラがない。気負いもない。風祭相手に勝算があるとでもいうんか?)


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


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