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甲子園4連覇チームを倒す話  作者: @tokizane
松濤高校野球部
15/102

挑戦者は気楽でいい

青海戦先発メンバー


1(三) 中原

2(中) アダム

3(一) 屋敷

4(右) 比叡

5(遊) 逸乃

6(左) 勢源

7(二) 華頂

8(捕) 片城

9(投) 桜



 俺の第一声はこうだ。

「兄弟子お久しゅうござる!」

 風祭かざまつりはなにも言い返さない。そりゃ中学のときもあんまり絡みなかったしね。半年間一言二言しか会話がなかった。


 勝負は試合前から始まっている。

 なぜか主将キャプテンなんぞやらされている俺が青海の主将、風祭とオーダー表を交換、そしてこの練習試合が正規の9イニングではなく7イニングまでしか行われないこと、同点でも延長戦は行われないことを確認し、そして先攻後攻を決めるジャンケンをすることになるのだが……、

 俺は風祭の眼前に『チョキ』を見せつける。

 出す手を予告することで相手の行動を縛りつける。

 考える時間はあたえない。穏健な性格をしている風祭は自分たちにとって弱者でしかない松濤こちらの意向に従ってしまう。

「はいっ、最初はグー! じゃんけんぽん!」

 俺は予告そのままに『チョキ』を出し、

 考える暇もなかった風祭は自分が負ける手を選んだ。『パー』。

 予想どおり風祭は俺に勝ちをゆずった。俺は主審の中年男性に告げる。

「では松濤の先攻でおしゃす!」


 風祭は長身に大量の筋肉を装備したラグビーや重量級の格闘家を思わせるような体躯、三〇代後半のサラリーマンにしか見えない老け顔、頭髪自由な青海野球部にあって超短髪と特徴的な風貌をしているが俺は気圧されない。

 約半年間だがチームメイトだった。もう4年も前だが共に青海大学付属中学野球部出身で、だがお互いのことを上っ面の部分しか知らない。俺にとって風祭という男はマジメで堅苦しいという認識だ。


「再会して早々にこれか……変わらないな屋敷」

「負け選んだのは自分の意思じゃん先輩。いやぁ全国に雷名を轟かせてるねぇ。青海の4番とか説得力半端なくなくない?」

 青海は選手起用、打順、ポジションを頻繁にイジるチームなのだが風祭に限っては1年の秋からずっと4番で固定されている。

 4番=最強打者の打順、というのは古臭い考えかもしれないが……。

 風祭は『飛ばす』。スイングスピードも飛距離もチームで(=全国で)ナンバー1、ないしナンバー2に格付けされる(泡坂がいるからだ)。

獅子ライオンはその爪痕を見ただけで獅子であることがわかる』ように、風祭の研ぎ澄まされたバッティングフォームを見ただけでこの男が本物であると理解できる。

 デフォルトで怖い顔をした彼が俺に問いかけた。

「先攻を選んだのは私たちから先制点を奪う自信があるからか?」

「自分のこと『私』とかますます社会人じゃん先輩」

「ふっ……」

「泡坂は別会場で試合なんでしょ。あいつ以外の投手ならなんとかなるかなってーー」

 不遜にもそう宣言してみた。

 これから対戦する投手のことくらい把握している。

 あれはヤバい。俺がいても1点獲れるか怪しいと思っている。

「うちの2番手なら組みしやすいと?」

「あいつが泡坂より序列が『下』って部外者に教えちゃっていいの?」

 高校野球史上最強の2番手ピッチャー。

 泡坂や風祭同様ドラフト1巡目での指名が予測される逸材。いや、泡坂とこいつは即MLB(メジャー)行きもあるとかないとか。

 立ち上がりの安定感は泡坂以上だろう。エースに比肩するナンバー2。この3年間青海の『常勝』、『不敗』を決定づけた投手、それが置鮎という男だ。


 勢源は円陣を組んだチームメイトたちの前でうそぶく。

「挑戦者は気楽でいい。最強になる手間に比べたら最強を倒すことなんて簡単なんだよ」

 創造は困難だが破壊はたやすいと。

 今日俺たちは青海大学付属高校野球部を破壊こわしにきた。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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