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甲子園4連覇チームを倒す話  作者: @tokizane
エピローグ
100/102

はい、スイマセン

「なんだ負け犬か」「俺は負けるべくして負けた」「ふぅん」「エースが試合前にあんなこと口にした時点でこうなることは決まりきっていたよ」「負けたがっていた奴が予定通り負けただけだな」「勢源に打たれたストレートは打たれても納得できるボールだった」「あれは再現できないヒットだよ」「松濤のことはずっと意識してたよ」「俺のせい?」「そう、屋敷のことは俺も風祭も警告してた。『あいつは本物だ』って」「青海にとって松濤は道端の石ころじゃなかったのね」「そう……めちゃくちゃ意識して対戦に臨んでまんまと負けちゃった。雑魚相手に足元をすくわれたわけじゃない。接戦になることは覚悟してたんだよ」「問題発言では? 今まで対戦した奴らを雑魚呼ばわり」「普通の人みたいな発言はしないでよ。屋敷が今さら……」「そうですね……俺の認識だと今日の戦いはジャイアントキリングじゃなかった」「大物喰い(ジャイアントキリング)?」「そう。だって強い奴倒した奴を格下呼ばわりなんて失礼だろ? 勝負事に参加している以上すべてのプレイヤーは強者を目指すべき……でもないか。ともかく松濤のほうがおまえらより強かったってだけ。力負けだと思ったろ?」「そうだね」「俺たちこそが強者ジャイアントだったんだ」「……そうだね」「まぐれで勝ったとかそういう言い訳は通用しない」「そう」「……なんで電話してきたの?」「もう早く戦いたい。ゲームがしたいって思っただけだよ。青海のみんなは今日の負けが尾を引いてるみたいで――」「おまえが戦闘狂ウォーモンガーなだけだろ」「俺だけ立ち直りが早かったみたいでさ。引退する奴らで練習試合したいんだけど、屋敷も参加する?」「俺はコウシエンがあるだろ愚か者」「終わったらだよ」「それもいい。疲れるし俺は飢えてない」「俺は飢えてる。《《今日以上の戦いがこれから待ってるよ》》」」「これ以上インフレしたら地表が壊れない?」「高校のうちに負けたことが財産になる。あいつらは絶対強くなるよ。俺の敵になる」「プロで戦うことにしたのか? アメリカ直行はあきらめた?」「日本こっちのほうが楽しそうだから。何年かね」「ふぅん」「屋敷はもうモチヴェーションがないの? 青海倒すために野球再開したんでしょ?」「我ながら薄いモチヴェーションだったな。俺の目的は完璧に果たされた。平和な時代に兵器は崖の下で朽ち果てていくのみだよ」「よくわからないイメージ」「まぁいろいろ道草している間に違うモチヴェーション見つけたけどね。……もしかして怒ってる?」「なにが?」「投げる球種ボール読んでたことだよ」「あー。それは俺のミスだから気にしてない。もう一回(っかい)俺と戦いたいの?」「5回もやってそれはないよ。置鮎とならまだいいけど」「俺たちはチームにとって助っ人みたいな存在だっただろ?」「集団に溶けこまない」「そう。実力はあっても場の中心には居座らない。存在感はあっても発言力はない、みたいな」「うむ」「あっちのベンチ見た限り屋敷も年長者なのに末っ子感強かったし」「ぬっく……」「俺も隅っこに立ってるだけでチームをまとめようとはしなかった。別にそのことを反省しようと思ってないけど」「チームスポーツに個人主義者はいらないってか」「傭兵はチームを勝たせてやっとお釣りがでるんだよ。比叡《《は》》立派だったね」「ダイレクトに俺のことディスってない?」俺のなかで泡坂の格は落ちない。もう俺に対して癖を披露することはないだろう。第1打席の段階で俺は負けかけていたのだ。それなのに5の4。『勝負は、無情』。「ふわふわ?」「え、なに?」「ふわふわ」「……またおふざけなわけ?」「ふわふわ(肯定)」「私は真剣なのに。今はどこにいるとかも教えてくれないのね。家にはいないみたいね。疲れているんだから早く帰ったらいいのに」「ふわふわ(相槌)」「お父様も早く会ってお祝いしたいでしょう。私のお父様もお母様も喜んでましたよ」「ふわふわ(了解)」「まだふざけてるの?」ため息をもらす夙夜。「ふわふわ」「これから会わない?」「ふわふわ(否定)」「予定を立ててなかったのも問題だけど……私はあなたが遠くに行ってしまう気がしてならない」「ふわふわ」「その答え方がもう理解できないんだけど。あなたは力がある」「ふわふわ」「野球のセンスがある。実力がある。実績がある。そのうち日本中の人たちがあなたの名前を知るでしょうね」「ふわふわ(ローディング中)」「私にはそれがない。私がやろうとしたことを慎一はやり遂げてしまった。わかる?」「ふわふわ(審議中)」「だから私は素直に応援できなかった。そのことが悔しい」「ふわふわ!」「まともに答えてよ!」「ふわふわ(拒否)」「こうやって話をしていると少しだけ客観的になれるんです。他のみんなには普通に『おめでとう』って言えるのに、あなたに対してだけはダメだった。幼馴染が特別になっていくのを見るのがどうしても、許容できなかった」「ふわふわ……」「私は醜いでしょう?」「ふわふわ」「そのふわふわ言うのをやめなさい」「ふわ」「略さないで」「ふ」「私が上じゃないと気が済まなかったのよ。私が与える立場じゃないと。私のほうが物事を知っていて、私のほうが社交性があって、私の蔵書、私のお小遣い、私の行動範囲、私の人脈、私には両親がいる」「ふわふわ(苦笑)」「そんなことわかってたよね。……慎一は私より賢いから」「ふわふわ(小声)」「どうしてこんな素直じゃない性格に育ってしまったのか」「ふわふわ」「私のこと、嫌いにならないでくださいね」「ふわふわ(あとでちゃんと話をしよう)」「わかりました。いつでも会いにきてください。私も疲れているので眠ってしまうかもしれませんけど……」「ふわふわ(了解)」通話を切って自分の席に戻る。店内のテレビを見るとちょうど画面には決勝戦のダイジェストが流れている。第5打席で俺がライトゴロに倒れたところだ。隣の席で試合の映像に熱中しているサラリーマンに話しかけた。「ほら、画面に映っているあのイケメン! あれ俺ですよ俺!!」「なに急に話しかけてくるんだおまえ。あっちいけ」「はい、スイマセン……」


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