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伯爵夫人、少しわくわくする

 今日は快晴。新婚旅行後、フィラント様はほぼ初めてのお休みです。


 突然ユース王子様が現れて、頼んだらフィラント様の誕生日プレゼント探しに付き合ってくれました。


 中々祝いの品が選べないので意を決して相談したら、そうなりました。


 ユース王子様。護衛を頼んだサー・マルク。侍女サシャ。スヴェンとオリビア。実に不思議な面子。ユース王子様には、多分王都から護衛が来ているのでとっても安全になった気がします。いつの間にか、非番だというサー・ジェラールも増えていました。


 無事に良い品を手に入れられて、私は大変満足です。


「それにしても、君は本当にフィラントが好きだね」


 ユース王子様に耳元で囁かれました。大通りでいきなり何でしょう⁈ ボッと目の前で火がついたように私は熱くなりました。


「私物を売って、フィラントへの贈り物代にする。お兄ちゃんは驚いたよ」


 顔を近づけるのを止めて欲しいです。まだまだよく知らない男性な上に王子様という天上人なので、どうしても体が竦みます。


「使わないものでしたから。高値で売れるように交渉してくれてありがとうございます」


 私はユース王子様に耳打ちしました。先程よりも腰を引き寄せられました。正直、離して欲しいです。


「君は交渉には向いていない。従者を通すか、定期的に来る私を頼れ。それにしても、私にちっともときめかない君はどうかしている」


 耳に息を吹きかけるのもお止め下さい。夜のフィラント様なら嬉しいですが、単に怖いです。顔立ちがよく似ていて、親切なのも分かっているのに……怖いのです。


 多分、目です。ユース王子様はいつも別の何かを考えていそう。今の行為も、私の様子を探る為のようでした。ただ、何を調べたいのかはさっぱり不明。


「サシャ、私は弟の誕生日当日は遠くにいる。代わりに贈り物を渡して欲しい。少し付き合ってくれ」


 サッと私から離れると、ユース王子様はサシャの隣に移動しました。実に自然にサシャの腰を抱き、そのまま歩き出しました。


「昼には屋敷に送る。そこの騎士2人、弟の可愛いお姫様と子供達を屋敷まで届けてくれ」


 サシャと談笑していたマルクは戸惑い気味。サー・ジェラールは騎士挨拶。


「おいマルク、取られるぞ。あれは手慣れている。おまけに色男。護衛しますとか追いかけろ」


 サー・ジェラールがマルクを軽く小突きました。


「奥様に何かあったら責任取れません」


「まあ、それが正解だな。いやあ、それにしても兄弟なのに副隊長とは正反対ですね奥様。鉄仮面みたいなのに中身は意外に気さくな副隊長。爽やか笑顔なのに近寄り難い兄上様」


 確かにそうかもしれません。


「ええ……そうですね」


 フィラント様からユース王子様は女好きと聞いています。まさか王子様が使用人のサシャに手を付けたりしませんよね? 後で確認をしましょう。


「午後、ピクニックに行きます。果物を買いましたし後はサンドイッチ作り。サシャも行くのでサー・マルクも行きましょう」


 複雑な顔のマルクに笑いかけてみました。効果は……あまりなさそうです。サー・ジェラールはどうしましょう? 期待の眼差しを向けられています。


「スヴェン君。サー・ジェラールはフィラント様の優秀な部下です。きっと剣術などを教えてくれます。チェスもしてくれます」


 サー・ジェラールの返事は「もちろんでございます」でした。


「それは嬉しいです奥様。よろしくお願いしますサー・ジェラール」


 スヴェンがあれこれサー・ジェラールと話し始めました。スヴェンは騎士に憧れがあるそうです。フィラント様にもよく質問をしています。


 私はオリビアと手を繋いで歩き出しました。


 屋敷まで歩いたら、とても良い運動です。新婚旅行で太ったので痩せないとなりません。


「オリビア、今日のピクニックは屋敷のお庭よ。庭師が頑張ってくれて、素敵な庭が出来たもの。一緒に編み物をしましょうね」


「はい、奥様。あの、これ本当に良いのですか?」


 オリビアが腕の中の紙袋を覗き込みました。中身は緑色、白色、紺色の毛糸玉です。私が使う分とオリビアの分が両方入っています。


「ええ、私のお小遣いで買ったものだもの。オリビア、約束通りさり気なくフィラント様がマフラーと手袋のどちらが欲しいか聞いてね。オリビアの手でロクサスの防寒具が出来て、私はフィラント様に探りを入れられる。こういうのを、持ちつ持たれつと言うのよ」


「あの、本当にありがとうございます。あの、何故直接聞かないのですか?」


「驚かせたいからよ。突然贈り物を貰うって嬉しいもの」


 多分、フィラント様なら喜んでくれます。そんな気がします。ありがとうエトワールという微笑みを想像したら自然と口元が緩みました。オリビアにクスクス笑われました。


「まあオリビア。私、みっともない顔をしている?」


「いいえ、とても楽しそうです。あの、難しい柄に挑戦してみたいのですけど奥様は編み物は得意ですか?」


「私は不器用なの。アンナが得意なので、一緒に教わりましょうね」


 紺色と白色の毛糸で、雪の結晶柄のマフラーとコースターを作る予定。雪の結晶柄は星みたいにも見えますもの。星っぽいのもあしらいます。


 アンナと図案を考えてあるので、一生懸命編むだけです。


 屋敷に戻ると、フィラント様はいませんでした。執事ルミエルとスヴェンにサー・ジェラール、サー・マルクを任せます。


 フィラント様と一緒にサンドイッチ作りをしようと思っていたのに、外出されてしまったとは。すぐ帰ると言ったのに、何か用事みたい。鶏の搬入はルミエルとロクサスが任されていて、滞りなく終わっていました。


 フィラント様と一緒にサンドイッチ作りをしようと思っていたので、待つか悩みます。


 私は談話室でオリビアの髪型を可愛くすることにしました。この間、ミレーに教わりました。器用になる練習です。


 程なくしてフィラント様が帰宅しました。知らない中年男性とスヴェンくらいの男の子と一緒にです。


 商人カシムと息子のダフィ。仕事の取引相手で一時的にレグルス様から預かったそうです。カシムはしばらくフィラント様の小間使いになるそう。


 ロクサス卿の家族に続いて、住み込みの者が増えました。


 フィラント様、今日はもう用事がないそうです。一緒に果物を切って、サンドイッチを作って、お庭完成記念ピクニックをすることにしました。


 カシムとダフィの部屋の準備や、屋敷内の案内や注意事項はルミエルに任せます。騎士2人はチェスをしていてもらうことにしました。スヴェンとオリビアはともかく、あの2人まで台所に来たらお邪魔虫ですもの。


 気を利かせたのか、スヴェンとオリビアは図書室でお勉強するそうです。おどおどしているダフィも誘っていて偉い2人。


 ピクニックをする人数が増えて、子供が3人になって、私としてはとても楽しそうな予感がします。

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