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伯爵夫婦、もっといちゃいちゃする 1

 緊急事態とはこの事です。一昨日の夜、中々明るいところで、下着みたいな寝巻き姿を見せた時よりも、今の方が明るいです!


 目を覚ましたら、昨夜のキスの続きが始まりました。


「やはり、寝れなかった。あまりにも無防備で可愛い寝顔を前にしたら眠れない」


 キスの途中でそう言われました。少々激しいキスをされているのと、あちこち触られているので、変な声以外出ません。喋るより、声を抑えるのに必死。


 明るいです。おまけに布団の中では無いです。いつもと違って、布団を剥がされています。こんなに明るいところで全身を露わにされるなど恥ずかしいので嫌……と言う前にフィラント様が寝巻きを脱ぎました。


 え?


 てっきり私の寝巻きを脱がすと思っていたのに、えっ?


 日焼けしたとても筋肉質な体。それに古傷の数々。やはり目立つのは胸部を斜めに横切る大きな傷跡。前に盗み見した時は暗かったですけど、今はあの時よりもうんと明るいのでよく見えます。


 傷跡の多さだけではなく、その種類に胸が苦しくなりました。切り傷、火傷跡、抉れたようなものや刺し傷みたいなもの。


 左肩の小さな二つ頭の蛇の刺青。レティア姫様の足首の絵柄とそっくり。鱗の1つが赤いのも同様。これ、やはり本物なのでは無いでしょうか? それで、フィラント様は知らない? 隠しているだけ?


「やはりこんな体だと怖い? この肩のが例の印で……表向きは奴隷位を抹消されても、これがあるので多分続いている。俺は成り上がり騎士どころじゃない」


 物憂げながらも、少しだけ笑っているフィラント様。ゆらゆら、ゆらゆらと瞳が揺れています。私は首を横に振りました。


「怖いではなく辛いです。いずれまた戦地へ? 回避して欲しいです。私もその手助けをしたいです……」


 自然と涙が溢れてきました。夜戦病院で見送った数々の遺体。社会奉仕にお父様の名声向上、苦手な男性の克服の為に看護師従事をしましたが、夜戦病院は実に悲惨な光景でした。


 夢中で働いていたので、あの中にフィラント様がいたなんて覚えはありません。しかし、私に世話をされたと言っていました。あそこにフィラント様がいた……。腕、胸、お腹、どの怪我でしょう? 何でこんなに……。また戦地へなんて、行かないで欲しい……。


 目を丸めたフィラント様が、指でそっと涙を拭ってくれました。


「ありがとう。俺は余程でなければ命じられれば何でもするし、何処へでも行く。そうするしかない。命じられなくてもユースとレグルスの前には立つ。何かあったら逃げようとは嬉しかった。何に巻き込まれているのか分からなくて先行き不穏だけど、非常時は必ず逃す。勿論、家族揃って。あの、それで、俺はそれまでは今の生活を続けたい……」


 フィラント様、私にかなり心を開いてくれたようです。口調が大分違いますし、ユース王子様を「ユース」と呼びました。困り笑いを浮かべているフィラント様に、私はますます涙を流しました。


 今の生活を続けたいなんて歓喜です。しかし苦しい。こんなに傷だらけになって、味覚も無くなって、まだ嫌な道へ進む覚悟があるなんて……。


「家族揃ってなら、フィラント様やユース王子様も一緒です……。何処にでも行くなんて……戦地には行かないで欲しいです……。死んでしまったら終わりですもの……。私、いざという時はフィラント様を引っ張って逃げます。嫌と言われてもです……。あの、色々な話が良い方に転べばずっと夫婦で良いですか?」


 ユース王子様には常に相談しましょう。亡命先も確保します。お金も貯めておきましょう。フィラント様はご自分を蔑ろにしそうなので、私が代わりに大切にしないとなりません。


 私を嫌ではなくて、心配してくれているだけなら、遠慮は要りません。今の生活を続けたいというフィラント様の望みは、私の希望です。鉄は冷めてなかったようです。これは、もう、とりあえずフィラント様にアピールし続けた方が良いです。それに、世の中は自分ではどうにもならない事だらけ。何もしないで後悔したくありません。


「へっ?」


 無防備な驚き顔になったフィラント様。


「あの……私……何か変なことを言いました? 一先ず、ユース王子様が失脚しないように毎日祈ります。フィラント様はレグルス様に相談して下さい。私は亡命先探しと、お父様に相談をしておきます。お父様はフィラント派です。貧乏役立たず子爵は他の貴族から毛虫扱いなので、そうしてもらいます。他は許しません」


「あの、エトワール? いや、変な事など……。君には良く驚かされる。俺が思っていない事しか言わない……」


 それは良い意味です? 聞く前に抱きしめられました。キスをされながら、服を脱がされます。それで抱きしめられながらキス。


 熱い、熱いです! 素肌同士ってこんなに熱いのですか⁈ 熱は緊張や照れが激しいせいです。何で、今の話の流れで欲情するのですか? 今は夜でもないです。


「い、嫌です。こんな明るいところで露わなのは……」


 体を丸めて抵抗。私、お母様くらい大きな胸に生まれたかった。こんな明るさだと貧相なのがバレバレです。フィラント様が買ってきてくれるお菓子の食べ過ぎに、王都までの道中の美味しい贅沢ご飯。先月より太りました。胸だけ増えません。


「あー……服を着たら嫌ではないです?」


 フィラント様の口調が戻りました。遠慮がちな穏やかな声色。先程までの話し方も親密感があって良かったですが、この話し方だと落ち着きます。


 私はコクコクと頭を縦に揺らしました。


 フィラント様が私から離れました。これは、寝巻きを着て良いという……フィラント様は私の寝巻きを持って寝台から降りました。ええ……。とりあえず布団を引き寄せて隠れましょう。


「あの、フィラント様?」


「着るならこっちで。昨日、自分で着ていたから嫌ではないですよね?」


 物凄い険しい表情をして戻ってきたフィラント様。手に結婚祝いに貰った寝巻き——というか多分下着——を持ってきました。これは、予想外の出来事です。


 昨日、自分で着ていたから嫌ではないですよね⁈ 嫌だと言わないように先回りされました。こんな意地悪なフィラント様は知りません。これは、私に着て欲しいという意味ですよね……。差し出されているので、とりあえず寝巻き——多分下着——を受け取って手に持ちました。


 ポイっと布団を剥がされました。フィラント様の顔が赤い? 不機嫌ではなくて照れ? 違う感情を抱いていても似たような表情になるフィラント様。顔が赤くて視線が泳いでいるから、照れの方でしょう。探っていたら、フィラント様も私の様子をうかがっている雰囲気。フィラント様の耳が益々赤くなっていきました。


 なんか、可愛い……。可愛い! 私にお願い事! 火を噴く程恥ずかしいですが、ここで逃げないとまたキスして抱きしめて、頭を撫でて貰えます! 絶対そうです!


 グラグラ揺れる私の中の天秤。羞恥心とフィラント様との甘い時間。


 ……。


 ……。


 羞恥心はゴミ箱ポイポイしましょう。恋する乙女に必要なのは、好きな人からのキスです。それが性欲でも良いです。だって誰も囲わないって言ってました。つまり、フィラント様は私にしか手を出さないのです。恥ずかしい、嫌だなんて言っていたら、フィラント様の気が変わってしまいます。それは嫌。絶対嫌です!


 着てみましたが、やはりこの格好は恥ずかしい……。しかし布で隠れる分、裸よりはマシ。なのに、フィラント様は髪の毛の先から爪先まで確かめるように私を見ます。何で⁈ こんなに見られたら穴があきます。私、溶けますよ。


「貧相なのであまりジロジロ見ないで下さい……」


 透けている寝巻き。布団は近くに無いので隠れられません。腕で隠すしかないです。1回脱がされたのでドロワーズもなし。足でも隠さないとなりません。寝台に座って、体を丸めます。短い裾を引っ張ります。


「貧相? まさか。それに凄く可愛らしい……」


 どうしたのでしょう? また可愛いと言って貰えました。腕をそっと掴まれて、引っ張られて、後ろ向き。背中側から抱きしめられるのは初めて。


 キスの嵐と私を触るのが再開されました。おまけに「可愛い」と何回も言われます。


 何これ。今までと違う。視覚に、要求されることに、触られ方の違いに、フィラント様からの度重なる可愛い発言。


 私、ついに爆発するかもしれません。


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