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伯爵夫婦、初の夜 6

 決め事を作ってもらおうと思ったのに、泣いたり怒ったりして台無しにしました。ここは、さっさと作戦変更だとあれこれない頭で考えました。


 貴方のことなんて好きではないし、苦手ですけど、観念したので恋をします宣言。


——恋をする予定なのです。


 私は大嘘つきです。もう、大好きですがそれだとフィラント様には響かないみたい。


——私を好きになる努力をして下さい


 作戦勝ちなのか、腕の傷跡で同情を買えたのか、私を抱きしめてくれたフィラント様。彼の優しさに付け入り、甘い蜜を吸おうなど悪女街道真っしぐら。


 抱きしめられて嬉しいのに、私の体は怯みました。フィラント様の腕があまりにも優しくて、自分の悪行に慄いたからです。なら止めるのか? 止めません。諦めたら終わりです。思いつくことは全部します。


——高熱で顔も覚えてない女性より、身近の女性。手を出してもいない女性より、毎晩抱く女性。男は単細胞なので大丈夫


 どこの誰だか分からないフィラント様の想い人。負けたくありません。レグルス様の言う通りなら、好かれていない私はフィラント様をひたすら誘惑するしかありません。


 服を脱いだのに、効果ゼロ。私、色気のない体みたいです。お菓子の食べ過ぎで太ったせい? こうなったら結婚式の時と同じように、突撃しましょう。


 2回目のキスはフィラント様からでしたもの。理由不明ですが、フィラント様は私に中々熱烈なキスをしてくれました。男性は彼等特有のスイッチが入ると女性に欲情する生き物らしいので、きっと理由はそれですね。男の人って謎。私はフィラント様以外とキスしたくないです。


 キス作戦は効果があると証明済み。


「エトワール様今夜は疲れ……」


 私はフィラント様の服をギュッと掴んで、背伸びをして、特攻しました。何か言いかけたフィラント様の唇を唇で塞ぎます。


 キスというのには色々種類があるらしいです。説明は聞きましたが、触れるだけのキス以外は恥ずかしくて無理そう。いえ、頑張るのよエトワール!


 世の中にはかつて私を、それも10歳の幼い子供をお金で買って性欲を満たそうとした男性がいました。長年疑問だった、裏通りなどにいる男性に擦り寄る色っぽい女性達。先日、お母様はやっとその答えを教えてくれました。


 そうまでして、男性は性的欲求を満たしたいものらしいです。


 一方、フィラント様は違う人種みたいです。サシャに聞いたけれど、娼婦の方々に擦り寄られてもお金を恵んで終わり。仕事の斡旋までしているとか。この街のスラム出身のサシャは情報通。


 なので、フィラント様に生活や贅沢の代わりに夫婦の営みをしましょうと言ってはいけません。そういうそぶり、嫌々抱かれる、そういう態度もダメ。嫌という単語は使用禁止。フィラント様の強い負い目は、自分なんかと結婚させられた哀れな貧乏子爵令嬢に対するもの。そんな娘、いませんと教えても耳を塞いでいるので、哀れな貧乏子爵令嬢ではなくして欲しい作戦です。


——急に触られて嫌でしょう


 あの言葉の裏にあるフィラント様の思考はそういうことです。


——フィラント様に急に触られたら嬉しいです


 恥ずかしく口から出て来ませんでしたが、頭を撫でて欲しい、手を繋いだり、キスしてもらいたい。そこまで言ってみれば良かった。フィラント様、とんでもなく鈍感です。私の恋心など、もう街中に広まっているのに肝心の本人に伝わりません。

 

「宝物のように扱ってもらったら、きっと好きになると思います。普通の夫婦がするような事、色々と一緒にしていきたいです。本物の夫婦になれたら、気兼ねなくて幸せだと思います。なので食事や寝室も共にと……」


 フィラント様、私から離れるでしょうか? 離れそうな気がします。何とも悲しそうな、辛そうな表情です。欲情しなさい作戦は非道でした。


「分かりました。すみ……いえ、ありがとうございます」


 予想外の事態です!


 フィラント様、笑いました。それで、キスが返ってきました。すみませんではなく、ありがとうが良いという話をきちんと聞いていて覚えてくれているみたい。これは嬉しさ倍増です。


 まだ好きではないです。でも好きになりたいです作戦は大正解みたい。可哀想な子爵令嬢からエトワールとして見てもらう第1歩を踏み出せたと思います!


 親しくなるには、キスして、毎日喋って、社交場で役に立つ妻だと見せつけて、さっきまで忘れていた笑顔と愛嬌。貯めてきたお小遣いで、フィラント様にあれこれ贈り物をしましょう。誕生日が近いらしいので、実家から持ってきた髪飾りなどを売ってお祝い資金にします。それから……。


 考えるのは後にして、とりあえずキスしましょう。何回でもしたいです。


「怖いのですけど……お願いします……」


 怖いより、恥ずかしいが本当です。フィラント様、ちっとも怖くありません。しかし、嘘をつきましょう。好きですは信じなくても、怖いとか好きではないですは信じるなんて変人ですよフィラント様。


 その変な人を好きになって、必死になっている私も変人ですね。


 うんと沢山、キスして欲しいです。


 フィラント様の手が私の頬に触れました。熱っぽい視線にクラクラします。やっぱり、凛々しくて格好良い……。眺めていても逃げられないとは幸せ。


 もう一度キス。やっぱり優しいです。


 キスにキス。またキス。ちょっと待って下さい。キスは気持ち良いのですが、フィラント様の手が背中や腰を撫でました。お待ちくださいフィラント様、そのさっきまでと違うキスだと、どうしたら良いのか分かりません。


 私、フィラント様を誘惑していないのに、誘惑成功したようです。多分、今されていることはそういうことです。


 ゾクゾクして、怖くはなくても、変な気分。もっと触って欲しいような、恥ずかしいので止めて欲しいような……。えっと、これが性欲? お母様が女性にあると言っていました。だから、怖い事ではない。そう言っていました。それで、私も大丈夫そうです。


 しかし、ここは寝室ではありません! 明るくて、羞恥で溶けてしまいます。


 ちょっとお待ちくださいフィラント様。下着を外して、おまけに腕をどかされたら、胸が丸見えです。え? 下も? 私だけ裸って不公平ではないですか? 何でフィラント様は涼しい顔なんですか? キスといい、手つき、慣れてません? どこで学んだんですか? 誰と? フィラント様の昔の恋人?


 考えたら、メラメラと対抗心が湧いてきました。顔も知らない想い人だけではなく、その前に恋人がいたみたいです。意を決して、フィラント様の首に腕を回しました。


 私は妻の権利を主張して、浮気禁止を宣言します! 明日にでもしましょう。奉仕提案書を正式な夫婦の宣誓書に書き換えましょう。そこに、お互い浮気禁止と記します。その上でフィラント様が浮気をしたらその相手の女性が正式な奥様なので、すごすご退散します。その頃には、伯爵の地位が確固となっていて、私は不必要になっているでしょう。


 その前に、フィラント様の心を射止めないといけません。なので、難しいキスにも応えます。自分からも挑戦してみました。


 抱いたら好きになるなら、どうぞ好きにしてください。というか、単に嬉しい状況なのでこのままが良いだけです。


 恥ずかしさで爆発しそう。


 いきなり、軽々と私を持ち上げたフィラント様。キスがどんどん落ちてきます。キスって唇以外にもするんですね。くすぐったいです。


 お母様、聞いていた話とすでに違います。部屋は明るいし、寝かされた場所はソファ。嫌ですが、嫌という単語はフィラント様へは禁忌。違う言い方が必要です。


「恥ずかしいので、あまり明るくないところで……ふわふわの布団とかで……お願い……」


 小さい声しか出ませんでした。それに「お願いします」と最後まで言えませんでした。これではフィラント様に聞こえません。


 そう思ったら「ああ」という返事がありました。


 フィラント様、私をもう1度抱き上げて、きちんと隣室へ移動してくれました。その間も、ずっとキス。頭がぼーっとします。


——宝物だと思って大事にします


 私、今まさにそういう扱いをされています。


 さて、ここで重大な問題が発覚しました。フィラント様はこの状況で私に何をして欲しいのでしょう?


 私もフィラント様を大切にして、幸せにしたいです。しかし、さっきからなすがままで何も出来そうにありません。

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