↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
成り上がり騎士と貧乏子爵令嬢の新婚生活  作者: 彩ぺん
外伝やおまけ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

140/144

単なるイチャイチャ話 3


 ☆★ 少々戻って昨夜 ☆★


「いえ……エトワールは……フィラント様にキスしないと……」

「えっ?」


 エトワールが酔っ払いだ。絶対そうだ。

 いきなりキスしてきて、俺のシャツのボタンに手をかけている。

 首にきつく抱きつかれて、何度も何度もキスされていれば、そりゃあもうその気になる。

 シャツを脱がされたので、エトワールのドレスも脱がすことにする。

 エトワールがしがみついてくれているので、背中にあるボタンを外すのが楽。

 腰のリボンも解いて床に放り投げる。


「エトワー……」

「フィラント様。フィラントさまあ。フィラント様のお背中、エトワールが流しますね」


 あっち、あっち、と指で示す方向は、浴室の方。

 誕生日祝いをしてくれた日に、調子に乗り過ぎて、一緒に浴室へ行くのは禁止令が発動されたのに、誘われた。

 やはり、エトワールは酔っ払いのようだ。

 キスを繰り返しながら、本人が要求しているしな、とウキウキしながら浴室を目指す。

 促せば袖から腕を抜くのに協力してくれるし、苦しいと自分からコルセットの紐も解いてくれた。

 しかし、せっかく上半身裸になってくれたのに、くっつかれているから見えない。

 触れ合う肌と肌の熱さに、エトワールの体の柔らかさは極上だが、見たいところが見えない。

 そして、ふと気がついた。

 湯の用意が出来ていない。


「エトワール、お湯の準備をする……」

「いやあ。はなれたくないです」


 エトワールをソファへ下ろそうとしたら、拒否された。

 きつく首に抱きつかれ、首元にすりすりされる。何だこれ、可愛い。

 いつも可愛いが、めちゃくちゃ可愛い。


「それなら、このまま……」


 ぺしん、とエトワールの手が俺の頬をぶった。

 全く力が無いので痛くも痒くもないが、胸が痛い。まるで抉られたみたいだ。


「えっ……」

「綺麗にしないと見せられません!」


 エトワールはきゃああああ、と両手で顔を覆った。


「はっ。エトワールはフィラント様にキスしないと……」


 また首に腕を回され、キスされた。


「んっ……。エトワー……」

「フィラントさま。フィラントさま? 良いですか? フィラント様!」


 キスされていたのに、急に頬を抓られた。

 非力なので痛くも痒くもないが、怒りの滲んだ睨みと共に抓られたので、心が痛む。

 棍棒で鎧を殴られたような鈍痛がする。


「淫らなものを着せたいのなら、ご自分も恥ずかしい思いをしないとあえれしよ」


 どこからどう見てもエトワールは酔っ払いで、まるで話しを聞いてくれなさそう。

 大人しくもしてくれなさそう。

 

「あー、エトワール。水をの……」

「にゃえおふりょにはいりゃにゃいのてふあ」


 滑舌が悪くなったので、言葉が聞き取れない。


「エトワール、一先ず水を飲んで……」

「きしして? ね?」


 腕の中で、エトワールが「んー」と唇を押尖らせた。

 こんなことされたら、キスするのが当然だ。

 その前に、エトワールが突撃してきた。

 何度も何度もキスされて、こちらもがっつこうとしたら、また頬をペシンとぶたれた。


「きええにしあいと」

「あー、綺麗に……。うん。湯のじゅ……」

「好きよ。だーいすき」


 再びエトワールをソファへ下ろそうと試みたら、ぎゅっと首に抱き付かれた。


「うん。俺も……」

「ゔっ……」


 耳元で、嫌な予感の声。


「ま、待てエトワール。吐くなら……」

「ゔゔっ……」


 慌ててエトワールを抱いて、浴室へと走った。

 脱がせかけのエトワールのドレスを完全に脱がし、ドロワーズだけの姿にする。

 間一髪、というか、せめてもの救いで、エトワールは浴室内で吐いた。

 幸い、エトワールのドロワーズや俺のズボンに吐瀉物は付いていない。


「うええええええ……。ふぃあとさまあ。すい……」

「吐け、エトワール。その方が楽だ」


 メソメソ泣き始めたエトワールの背中をさすり、口に指を突っ込む。

 こういう事態は、部下で慣れている。

 泣きながら、ちょこちょこ吐くエトワールの背中を撫で続ける。

 冷たくて可哀想だが、浴槽内に少し溜めてある水を手桶ですくい、エトワールの口元をすすぎつつ、嘔吐物の排水を促す。

 浴室が綺麗になり、エトワールもある程度楽そうになったところで、暖炉へ行って、ヤカンで熱湯を運び、浴槽内の水を体を洗える温度にした。


「すみませんフィラントさまあ……。わたしがありゃいますぅ……」


 エトワールはメソメソ泣きながら、口をすすぎ、予想外のことにドロワーズまで脱いだ。

 石鹸と体を洗うタオルを手に持って、泡だて始めている。


「えっ……。あ、ああ……」


 全裸なのにあまり照れていないのも、メソメソしているのも、酔いが醒めたとは思えない状態。

 

「きええにしますね? ねっ?」


 ウルウルした瞳で見つめられたら「うん」としか言えない。

 本当に大丈夫か? と思いながら、スボンと下着を脱いでみる。

 

「きゃあああああ、フィラントさまのばあかあ!」


 ベシンと顔にぶつかったのはタオル。

 痛くも痒くもないが、やはり胸が痛い。

 肩に矢が刺さったことが蘇り、胸ならこういう痛みか? という変な思考が働く。


「かっこおすぎてむねがはりさけちゃう。くっついていたら見えあせんね。ねっ?」


 石鹸を片手に、もじもじしながら、エトワールは俺に近寄ってきた。

 抱きついてきたエトワールが、俺の体からずるずる落ちているタオルを拾いあげる。

 鼻歌まじりのエトワールがタオルで俺の腕を擦り始めた。

 彼女がまだタオルで洗っていない箇所、特に傷跡があるところにはキスが落ちてくる。


 エトワールは酔っ払い過ぎておかしくなったらしい。

 しかし、何だか知らないが、俺に都合が良い展開。

 なすがままなのは我慢出来ないと、エトワールの体に手を伸ばすと「めっ!」と睨まれた。

 

「こうかんよ?」

「交換? 交代ってことか?」

「んー、フィラントさま。だいすきです……」


 洗うことを放棄したのか、エトワールの手からタオルと石鹸が滑り落ちた。

 背伸びをして、首に手を回してきて、ギュッと抱きつかれる。そのままキスの嵐。

 彼女が好き勝手なら、こちらもそうしてしまえ、と俺の理性は弾けとんだ。

 エトワールを抱き上げて、浴室用の椅子に座らせる。それから、タオルと石鹸を拾った。

 少々別の意味を含む手つきで体を洗い始めると、エトワールは小さくて可愛らしい嬌声をあげながら「もっと……。きすも……」と潤んだ瞳で懇願してきた。


 天国だ!


 エトワールが酔うと天国が待っていた!


 さんざん、隅から隅までエトワールを堪能した後、歯を磨くと騒ぐも歯ブラシを落としたり、ふらふらするエトワールの歯を磨いた。

 もしも俺達に子供が産まれたら、子に対してこういう手助けをするのだろうか?

 子供か、エトワール似の女の子なら一生近くに置いて愛でたい。

 エトワール似の男児なら……男なのに可愛いとなると慰み者になりそうなので、強くなるように鍛えるのと、騎士のような男世帯の仕事には就かせたくない。

 自分の歯を磨きながら、ぼんやりと想像していたら、俺の腕にしがみついていたタオル1枚姿のエトワールが、ふっと離れていった。


「エトワール?」

「ねみいてす……」


 エトワールはそのままフラフラした足取りで寝室へ向かっていき、ベッドに腰掛け、ポスンと倒れた。

 慌てて口を濯ぎ、エトワールの後を追いかける。

 エトワールは、むにゃむにゃ言いながら、気持ちよさそうな顔で、規則的な呼吸をしている。どう見ても寝ている。


「エトワール……」


 夜はまだこれからだ、とエトワールの体を軽く揺らす。起きない。

 タオルを剥がして、胸を触ってみる。身を捩ってくすぐったそうにしたが、やはり起きない。


「ふぃあとさ……」


 よし、起きた! とエトワールに覆い被さったが、エトワールは体を丸めて、ゆっくり呼吸をした。目は閉じたまま。


「ほし……きれい……ですね……」


 妻の無垢な寝顔に、俺の手は止まった。

 俺と星を眺める夢を見ているようだ。

 ニコニコ、ニコニコととても嬉しそう。実に無邪気な寝顔だ。

 したいが、したくてしょうがないが、快眠を妨げるのは気が引ける。

 朝起きたら襲う。絶対そうする。なので今は我慢。そう自分に言い聞かせてベッドから離れる。

 とりあえず、冷静にならないと眠れない。どうにかしないとならない。


 地獄だ。


 天国から地獄……地獄とは、死体の山が築かれた戦場の数々や、生死の境を彷徨ったことなどを言う。

 俺は項垂れながら、これが地獄とは実に良い暮らしになったと少々口元を綻ばせ、浴室方面へ足を進めた。


 ★☆ 今朝 ★☆


 頭が痛くて目を覚ますと私は全裸でフィラント様の腕の中。

 起きたフィラント様に「エトワールも俺と以外は深酒禁止……」と小声で囁かれました。


 私、何したの?


「覚えてない? それなら……」


 フィラント様が珍しく笑いました。ちょっと可愛い笑い方。

 悪戯っぽい笑みは、どことなくユース様の笑い方と似ています。

 一緒戸惑いましたが、瞳の色や、傷痕など、どこからどう見てもフィラント様です。安心。

 

「忘れているのもあれだし、1からやり直そうか……」

「やりなお……」


 キスの大嵐が始まり、君は昨夜こうしてくれたとか、こうしたとか、とあれこれ要求されました。

 殆どは本当そうですが、たまに目を晒すので、その時の発言は何だか嘘っぽい。

 しかし、覚えていないので反論出来ない。

 禁止されなくても、記憶を失くすまで飲んだりしない、と私は固く、固く、自分に誓いを立てました。

お酒はほどほどに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。