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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第2章 学校編
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44 めっちゃ食べるやん

「未来を知っている魔女?」

「ええ、そうよ」


会長室に呼び出された僕は、僕好みにしたアリスを伴って向かったのだが、そこで話された内容は、まったくアリスに関係しない話だった。

アリスに関係しないのなら、そんなに興味は無いな、とか考えながらルノウの話を聞いている僕だった。


「その魔女が、この国に来ているらしいの。今は女王様のところね。それで、なんであなたにこの話をしたのかというと、なのだけれど」

「その人をもてなせとか言われても無理ですよ」

「そんなこと期待していないから大丈夫よ」

「ひどい」


ルノウは、会長室の机で書類を片づけながら言う。

それはもう、軽い口調で。


「もし暇なら、アリスの件もあるし、会いに行ってきたら?」

「...え?」


ルノウは、会いに行ってきたらと言った。それが何を意味するのかわかっているのだろうか。

女王のいるところに行くのだ。自ら死地に飛び込んでいくようなものだ。

しかし、アリスの件もある。

未来が見えるというのなら、アリスの今後を見てもらい、そのうえで方針を決めたいところだ。

何せ、こうしたらいいという確証が得られるのだから。

困ったことになった。


「アリスは、その人に会いに行きたい?」

「んー?」

「アリスに聞いてどうするの...」


つい困ってアリスに聞いてしまった。ルノウの突っ込みはもっともである。

まあ、ここでぐだぐだしてもあれだしな。会いに行くとしよう。

女王のいるところに行くのは少し勇気がいるけど、それはアリスにもらうとしよう。


「わかった、その人のところ行くよ」

「それじゃあ、女王に連絡しておくわね」


ああ、女王に会うことは確定してしまった。もういいもん、出来るだけ会わないように行くから。


話はこれで終わりらしく、そのままルノウは書類に目を落とす。

アリスの件はどうなったのだろう。


「ルノウ、アリスの件は...」

「そんなの、聞かなくてもどうなったかわかるでしょう?」

「さいですか」


まあ、それは言われなくてもなんとなくわかるけど、報・連・相ぐらいしようよ。

まあ、信用してるのよとか言われたらそれで納得しちゃうんだけどさ。


「それじゃあ、部屋に戻るね」

「ええ。それと、周りの人に見られたくないのは少しわかるけど、もう話は通したんだから、諦めなさい。それに、ご飯も学食で一緒にとるのだから、今見られてもその時見られても変わらないわよ」

「...」


普通にお見通しだった。


会長室から出て、今の時間を確認する。

体内時計で言えばもう昼を少し過ぎた時間だ。

朝も食べていないし、流石にお腹が減ってきたのだが、アリスは何も言わないな。スキルのせいなのか、それとも単純にお腹が減っていないのか、どっちかだが。


「アリス、お腹減った?」

「へったー」


なるほど、我慢していただけか。

そもそも、お腹が減らないなんてことがあるはずがないのだ。


アリスの手を引き、学食を目指す僕だったが、今は空腹感よりも恥ずかしいという気持ちの方が勝っていた。





「これは僕のオススメなんだよ」

「わぁ...!」


今回僕が選んだのは、かつ丼に似ても似つかないような、しかしかつ丼の味がするような、現代日本人に食べさせたらそう思わざるを得ないものを選んだ。

なぜ選んだのかと言われると、普通においしいからだ。

普通に、おいしいのだ。


「た、たべ、たべても...!?」

「とったりしないから、落ち着いて食べなさい」


アリスが頬を真っ赤にし、興奮した様子で僕に許可を求める。

アリスがここまで感情を出す子だとは、初めて知ったよ。なんとなく予感はしてたんだけどね。

スプーンを手に取り、恐る恐る口の中に入れるアリス。


「もぐもぐ.....~~~っ!!!!!」

「うんうん、おいしいんだね。それはいいからもう少し落ち着きなさい...」


一口目を口の中に入れると、次から次へと口の中に放り込み、常人の2倍の速度で噛んで呑みこむ。

どうなってんだ、顎の筋肉。


しかし、こうして周りを見ても、意外とこっちを注目してくる人はいないんだな。僕の想像しすぎなせいだったのかと思うと、少し疲れた気分になるが、もしこれが逆だったらと思うと寒気が止まらないので良しとしよう。

警戒しないで来て、犯罪者の目つきをした集団に絡まれたら大変だし。


「もぐもぐ...なくなった?」


自分で食べたのに、お椀からかつ丼が無くなったことに驚いているアリス。その姿はとても可愛いが、さっきまでの自分の食べるスピードを憶えていないのだろうか。

嘘をつく理由も無いので、素直に教えてあげることに。


「アリス。無くなったのは、自分で食べたからだよ」

「...わたしがたべた。そっか、そうだった...」


そういうと、あからさまにしゅんとなるアリス。決してわざとではないことを僕が知っているため、とてもかわいらしいが、これが現実なのだ。わからせないと。

食べたら無くなるのだ。いや、正確にはお腹の中に行くのだが、これをアリスに言うとお腹をかっさばきそうで怖いので言わない。


「...」

「...」


しかし、この状態のアリスの隣でご飯を食べるのはなぜか心が痛むな。

しょうがない、アリスに僕の分をあげるか。

僕も3分の1ぐらいは食べたから、十分だし、最悪スキルで作り出す。


「アリス、これ食べなよ」

「え、いいの?」


僕がそういうと、アリスはすごい目を輝かせながら僕のかつ丼と僕を交互に見た。

うん、アリスの言動が間違いなく一致していないけど、まあ可愛いから良しとしよう。


「うん、もちろん」

「わーい!」


アリスはそういうと、スプーンを再度手に取り、残ったかつ丼をそのまま口の中に放り込む。

よくもまあそんなに食べられるものだと思うが、まあ元気な子供ならこれぐらいは普通だろう。

ユサはまあまあ食べるが、リナは小食だ。リナには今度好物をお腹いっぱいに食べさせてあげよう。好物知らないけど。


「おなかいっぱい!」

「そっか」


とにかく、腹ごしらえも済んだし、未来予知の魔女のところにいつでも行けるように準備をしておかなくちゃな。

お椀のサイズは、焼き肉屋さんでライス大を頼んだぐらいのサイズだと思ってください。

店によってサイズが違うとかあるかもしれませんが、アリスがよく食べるという子だということが伝わればいいので。

9歳ですからね。

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