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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第0章
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4/79

0-3 詰んだ先で詰む

「では、情報収集と行こう」


そんなことを言ってから3時間が経過しようとしている。

僕の腹時計で言うともう15時だ。多分。

その貴重な3時間で得た情報は幾つかある。


「まずは、ギルドってところか」


簡単に、というより腕っ節も関係なく稼げるのは普通に働くよりハンターとして活動するのが1番らしい。

ハンターとしての証を持ちつつ、学校に通うのは問題ないそうなので、当初の野望、ハーレム作りは問題なさそうだ。


強制労働させられた門から真っ直ぐ歩いて500m程のところに、その建物はある。

見たところコンクリートで出来ているようだ。

屋根はレンガ製。

だが、ドアは木製だ。

ドア越しにも伝わってくる賑わう声からも、この国の豊かさがわかる。

ドア自体は軽く押すだけで開き、カランカラン、と軽い鈴の音を鳴らす。

その瞬間、賑やかな声は変わらず、目だけが一斉にこちらを向く。


(……なんでそんな見んの……?)


皆の視線を背に浴びながら、正面のカウンターへ。

そこには物腰柔らかいお姉さんが立っていた。

彼女が受付をするのだろうか。


「ようこそ、ギルドへ。ここは初めての方ですよね。別の支部で作られたカードをご提示ください」

「えっ」


カード?

昼頃に作った身分証明書もカードと言えばカードだが、それではダメなのだろうか。

というか、別の支部ってなんだ?

もしかしてここは国が所有する都市の中の1つだったりするのか?


「あ、あの……」

「あ、申し訳ありません、新人の申し込みですか?」

「は、はい、そうです」


すると、お姉さんは慣れた手つきでカウンターの下から白いカードを……


「おっと既視感(デジャブ)

「はい?」

「いえ、なんでも」


とはいえ、自身の能力をそのまま出すわけにはいかない。

このままバカ正直に能力を開示したりなんかしたら、ちょっとした大騒ぎだ。

……ちょっとしたで済むかどうかはわからないが。


「では、身分証明書作成時と同じように、手を翳してください」

「は、はい」


ええい、どうにでもなれ!


勢いそのままに翳し、再び青白い光が発生。

その光が収まり、カードを取って逃げ出すなんてことは出来ず、覚悟を決めた僕。

お姉さんがカードを手に取り、所謂ギルドマスターに呼び出されるまで見えた瞬間。


「珍しいですね、この歳でDランク相当の能力を有していますよ。これならば、すぐに昇格できるでしょう。」

「……え?」


D?

全部の能力がS+で埋まった僕の能力ステータスでD?


「ギルドの決まりで、どんな人も最初はEランクからとなっておりますが、その点はご了承ください。そして、我々ギルドは皆さんハンターの個人情報は絶対に他言しません」

「は、はぁ……」


お姉さんはそう言うと、僕に先程作成したギルドカードを手渡した。

……確かにDと書いてある。

その下には、それぞれの能力値が書いてあった。


筋力 D

魔力 C

知力 C

俊敏力 E+

判断力 D


身分証明書にはあった、特殊能力アビリティも、ギルドカードには書いていない。

まるで、改竄でも受けたかのようだ。


誰かが作為的に何か罠を張ったとも考えられるが、僕自身もよくわかっていないこと、しかもつい先程知ったことをそれ以外の人間が知っているわけが無い。

評価が低い方が都合がいいので、僕はそのまま依頼を受けることにした。




依頼には3つ種類がある。

1つは、常在任務。

これは、常にそこに在ることから名前がついたものだ。

内容は薬の元となる素材をとってきて欲しいとか、そこら辺。

怪我をする人が多く、薬は頻繁に使うのだとか。

回復魔法は無いのだろうか?


2つ目は、受注式任務。

ギルドに所属しているハンターなら誰でも受けることが出来るのは常在任務と変わらないが、出る時期が一定ではないのが違いだろう。

ちなみに、ランクの指定もある。


3つ目は、指定式任務。

相手側からわざわざパーティーに指名が来る

という、名誉極まりない任務があるらしい。


自分が受けたい任務を受ける方が僕は楽でいい。

それに僕は、パーティーを組むつもりは今は無い。

将来的に女の子で囲んだ百合パーティーを作るつもりだし、言動が男のままでは、さすがに世間体が悪い。

良くは思われない。

取り敢えずは、依頼を1人でこなし、金を稼ぎ、宿をとったら、身分証明書とギルドカードの考察だ。

それがある程度済めば、学校にはどうすれば通えるのか調べに行かないと。


「入学シーズンを過ぎてても、まぁ無理矢理なんとか入れてもらおう」


それはともかく。

カウンターに向かって左手に位置するのが、依頼が張り出されているボード。

ちなみに、依頼とも、任務とも言うので、分からなくならないように注意しなければならない。


「……これなんかいいんじゃないか?」


適当に取ったその紙には、近場の森のモンスターを狩ってくれという依頼だった。

報酬は100ミル。

正直金のことなんてよく分かりはしないが、全体的に流してみたところ、これが1番簡単そうだ。


「武器は……ないけど、まぁ殴ったらいけるか」


対象となるモンスター名は、ブラッドウルフ。

すっごい物騒。


その名前の通り、家畜を襲い、あたりを血だらけにしていなくなるそうだ。

人々が目を離した隙に家畜を食い散らかし、気づいた時には全ては終わっているという。

相当賢いのだろう。

ペットにしたらおすわりとおかわりは1時間でマスターしそうだ。


……話が脱線しすぎる。気をつけよう。


受注の仕方は簡単だ。張り出されている紙を剥がし、カウンターに持っていくだけ。

後はそこに、名前を書いて、ギルドカードの提出、記録をとって、出発。


ちなみに、ギルドカードは記録をとったらちゃんと帰ってくる。


「よっし、それじゃあ出発だ!」


武器も何も持たずに依頼を受け、さらにそれが危なっかしい美少女1人。

それをギルドにいた男達が黙って見過ごすだろうか?

否。否である。


「き、君、もしかして、そのまま行く気なのかい?」

そう言いながら出てきたのは、金髪のイケメンくん。

元の世界でいうトム・クルーズ似の人だ。

服装は西洋の甲冑っぽいものを着ているので、体格はよくわからないが、暑そうということだけはわかる。

そして冬場は着る時は地獄だろう。


「ええ、そうです。」

「それは危険だ、しかも、受ける依頼もレベルが高い。」

「レベル?」

「ああ。ブラッドウルフというのは、その名からもわかるように凶暴で有名なんだ。そんな危険なモンスターとやるって言うのに、君は装備を全く付けずに向かおうとする。止めるに決まっているだろう?」

「ああ……」


つまり、この人は止める、もしくは付いてくるつもりなんだろう。

正直言うと迷惑だ。

自身の能力の程度も知っておきたいし、何をどうすれば依頼完了なのかもわからない。

いや、それぐらい新米ハンターなんだから受付のお姉さんが説明しろよとか思うが、まぁうっかりだろう。

この面倒なトムを追い払ったら聞きに行こう。


「心配はご無用です。私には心強いパーティーメンバーがいますから」

「パーティーメンバーがいるのに、1人で依頼を決めたのかい?」

「……ええ、まあ」


ダメだ、嘘が下手すぎる。

とはいえ、1度言ってしまったのだ、パーティーメンバーがいるという体で進めるしか……。


「その方は新米でお一人ですので、皆さんがご指導していただければ、私たちとしても安心です。」


そんな横やりが唐突に入った。

声の主は先程のお姉さん。

くっそ、肝心なことは言わないくせに余計なことは言うんだな!


「じゃあ、パーティーメンバーも含めて、今回の依頼でハンターの基礎的なことを教えよう。みんなはどこにいるんだい?」

「えっ」


あ、詰んだ。








こうして本当のことを洗いざらい吐いて、土下座を披露している僕だった。



結局、トム・クルーズ似の人と、そのパーティーメンバーが付き添うという条件で今回の依頼は行っていいそうだ。

だったらなんで最初承諾したんだよ。

あれこれ1日更新?

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