0-0 チート
やあ、僕の名前は早川透。
20歳になりたての成人さ。否、現在進行形か。
現在、僕はとある田舎の成人式に出ている。
どこの体育館か知らないが、パイプ椅子に座らされて人生の大先輩にありがたい話をされているところだ。
(帰りてぇ……が、まだ帰れないな。)
そんなクソッタ……ありがたい話をこうして耐えてられるのも、1人の女の子が理由だ。
このド田舎の成人式に出ている僕以外の唯一の人。
黒髪ロングで、左側だけ耳にかけている。
成人式では和服で来るとか聞いたことがあるが、この子は普通のスーツで来ている。
見た目は15歳だが、それを言うと怒るだろう。
都市生活を送ってきた僕の経験がそう言ってる。
そして、肝心の名前は知らない。
どうにかして知りたいところだが、式が始まって数分で眠ってしまったので、そこからの記憶はない。
「……はっ」
気づけば、式は終わっていた。
なんということだ、これでは、彼女に声をかけるタイミングを逸してしまう。
「あ、あの子は、あの子は……」
必死に探していると、まだ体育館を出て数十mのところにいた。
彼女は何も無いところを向いて口を動かしていたが、関係ない。
今は一分一秒でも惜しい。
「あ、あの!」
勇気を振り絞って声をかける、が、反応はない。
先ほどと変わらず虚空を見つめて口を動かすだけだ。
喉元は動いているように見えるのに、声は聞こえない。
「……あ、あのっ!」
全力で走った後よりも息苦しい。
こんな状況から早く逃げたかったのか、僕は彼女の肩に触れた。
そして、初めて目が合う。
そして、彼女は目を見開く。
「えっ、君は……!?」
童貞歴20年ちょうど。
僕は、名前も知らない同い年の彼女に一目惚れをした。
そして、1度でいいから、そんな子と付き合いたかった。
それだけで、僕はこの世界から消えた。
と、いうわけで。
初めて小説を書きます、すずはっぱです。
友達からはなぜかはっぱちゃんと言われるのでこの名前にしました。
男です。もう1度いいます、男です。
更新は1週間を目処に。
がんばって笑わせられたらなぁ、と思います。