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Future World Online

こんにちわ。焔です!


ゲーム風にやっていきたいと思います!まぁ、本質はゲームと現実の中途半端な世界を基準としているのですが(汗


よろしくおねがいします!

 零夜が眼を覚まして初めに眼に入ったのは、木でできた屋根だった。寝た状態で首だけ動かして辺りを見渡すと、どうやら家全体が木でできているようだ。なぜ俺は寝ているのだろうか、ここは一体どこなのか? 零夜は今さっきまで自分が寝ていたベッドを眺める。


 その直後、視界に突然文字が浮かびだした。

《Future World Online の世界へようこそ》

「……どういうことだよ?俺は確か………、」

 ボーッとする頭の中で一つの記憶が頭を過った。


 機兵との戦い。

 彼は王国に現れた巨大な機兵を、【神の力】を駆使して戦った。結果破壊に成功し、その後も残った取り巻きの小型機兵を全滅させた。だが、そこからが思い出せない。


 零夜は痛む頭を片手で押えながら眼を瞑る。

 異常なほど喉が渇いていたため、何かを飲みたいと立ち上がる。誰のかも分からない家の中を歩いてやっと見つけた台所のコップに水を注いで一気に飲む。


 とりあえず現状を確認しようとすべく、ここはどこか確認するためにドアを目指して歩こうとした所、鏡の存在に気がついた。彼はその鏡を覗いて一瞬とまどった。

 鏡に映っているのは、白髪はくはつロン毛の青年の顔だった。

「…………、え?」


 零夜は思い出す。確か俺は茶色に髪を染めたことはあるけど白に染めたことは一度もない、と。ならばなぜ突然髪の色が変わっているのか。


 髪は腰まで伸びており、だらしなく垂れ下っている。

白髪しらが……じゃないよなぁ?てか、これが…俺?」


 鏡の見ながら顔の部位を一つ一つ触って確かめるが、やはりその顔は自分自身のものだった。信じがたい現実に打ちのめされながらも、髪の毛を触ってみる。老人の頭に生えている白髪しらがの様に、傷んでいる訳でもない。やはり、髪の毛の色そのものが変わってしまっている。


「あら、起きたの?」


 ガチャン、とドアが開く音が聞こえる。零夜はドアがある方を向くと、そこには一人の美女が立っていた。茶髪のロングヘアーをポニーテールにして、眼は真っ赤な紅蓮色。これぞまさしく美女といった感じの女性で、恵里奈を超えるかもしれないと一瞬思ってしまった不覚な零夜。

「え、えーと。誰ですか?」

 

 零夜は少々畏まった感じで尋ねると、女性は笑顔で返してきた。

「あなたを助けた人よ☆ミ」


 わざわざ恩を売る様な言い方で返答してきた茶髪美女に、少々顔を引き攣らせながら再び尋ねる。

「詳しく教えてほしい」


 真剣な顔つきで零夜は美少女に尋ねる。

「いいわよ。とりあえず座りましょうか」

「あ、あぁ」


 美女は外出して手に入れたモノを片づけてから、近くにあった椅子に腰をかけると口を開いた。位置関係でいえば、テーブル挟んで向かい合わせの状態だ。

「いつ頃かしら?5年くらい前の―――」

「5年前ッ!!?」


 零夜はバンッ! とテーブルに手をついて立ちあがっていた。


 まったくもって意味が分からない。俺はそんなに長い間寝ていたのか?いや、そんなはずはない……、と自問自答を繰り返す。

「そうよ、5年前。あなたは5年間も眠り続けていたの。5年前、私がたまたまあなたを見つけていなければ、多分あなたは死んでいたわね」

「俺は、どこに倒れていたんだ?」

「ここの近くの森よ。あなたは盗賊に殺されそうになっていた所を私に助けられたって訳」

「そう……か。それはありがたい。助かった」

「礼には及ばないわ。行動で返してもらうから、恩はね」

「…………、はぁ」


 大きなため息を付く零夜の事なんて無視して話を続ける。

「あなたが付けていたモノ……、あの黒いコート以外は持っていかれたわ」

「いや、いいよ。そんな高価なモノ持っていなかったから……。それにしてもココは一体どこなんだ?」

「ココ?………、此処はもともとゲームの世界よ」

「…………え?」


 ゲームの世界。この言葉は彼の記憶の嫌なところを抉り、思い出させる。信じたくない現実を記憶の隅に押しつけながらも、自分の世界はゲームの中の世界なんだ、と諦めていた。


 そして、機兵を全滅させて静かに、あまり危険のない生活をできると思っていた。


 でも、神はそれを許してくれないのか。

「ここも……、ゲームの中の世界なのか」

「ここも? まぁいいわ。ゲームの世界というより、とあるゲームを元に生まれた異世界……、という方が正しいのかな?」



 零夜はゴチャゴチャに混乱する頭を無理やり働かせて彼女の言葉に耳を傾ける。

「ゲームの様にスキルとかがあるわけではないんだ。強いて言うならLvやモンスター、アビリティや魔術という技術が存在するの。街の外に出ればモンスターなんて沢山いるし、魔術を駆使する魔術師だって沢山いる」


 やっぱりか。と、零夜は深いため息をついて項垂れる。結局、戦わなければいけない。今まで生きてきた「Another Worid Online」の世界のように。

「まぁ、Lvは目上の人に手出すとられるよって言う忠告の数字なんだけどね」

「Future World Online……?」

「え?あぁ、そうよ。目を覚ました時、視界に文字が現れたでしょ」

「あ、あぁ……、」


 ぼんやりとした頭の中で、目を覚ました時の記憶を無理やりたたき起こして呟く。

「分かった。なんとなく状況は把握できた………と思うから、ここは一体どこなんだ?」

「んーと、デュアリア王国のアライムの街のはずれよ」

「……デュアリア?」


 この世界は、6つの勢力が統制している。一つは此処、デュアリア王国、フィオン王国、カンナダ王国、スリューダ王国、シャーナ王国、ブレイド王国。その全てが国王の名前で、その国王全てが超一流の魔術師、魔導師である。

「えーと、世界はその6つの国に分けられてるんだな?」

「ま、そういうこと」


 かなり簡潔に言う女性だが、今はあまり詳しいところまで知る必要はないだろう。

「詳しい事は後々分かってくるでしょうから。とりあえずあなた、街に出て武器を手に入れる。その後魔術屋に行って術式を購入、冒険者ギルドに加入。この3つをやってきて。いい?」

「あ、あぁ分かったよ」

「そういえば、あなたの名前は?」

「あぁ、肝心な事を聞いていなかったな。俺は零夜だ」

「零夜ね、私はステラ。よろしくね」


 そう短く挨拶をすますと、二人は握手を交わす。零夜は少々視線の隅に入った槍のような武器が気になり、ステラに尋ねる。

「あの槍は?」


 零夜の問いかけに反応したステラは、椅子から立ち上がってその槍を手に取る。

「これは私の【三叉槍トライデント】ね。知らない?別名トリアイナ。トリアイナとは《3つの歯》を意味するの。だからホラ、あれも先端が3つに分かれているでしょ?」


 彼女の言うとおり、先端の刃は3つに枝分かれしており、サメ肌のように突き刺す方向とは反対向きの更に小さな刃がたくさん付いている。モンスターを刺しても簡単に抜けないようにするための施しだろう。

「あ、あぁ。そうだな……、」

「んー、ちょっと心配ねぇ。魔術っていうのは……、ほら」


 ステラは左手の人差し指を上に向ける。するとその指周りに青色の魔法陣の様なモノが浮かび上がる。それは数秒で消えてしまったが、その代わりに指の周りには水色の物質が漂う。それはやがて数滴の水となって指の周りを浮遊するようになった。ステラが指を動かすと、その動きに従って水玉も同様に動いていく。次にステラは手を開いて前に向ける。そうした後、水量が変化し、だんだんと何かの形に変化していく。

「な…なんだよソレ……、」


 出来上がったのは先ほど見せられた【三叉槍トライデント】の形をした水の槍だった。

「術式は使いこなすことができるようになれば形を成したりすることもできるようになるの。もともと自在に操ることはできるんだけど、まぁ使用者の実力次第ってとこかな」

 ちなみに、これは属性術式って言うんだよ。と付け足す。


 属性術式とは、水や炎、雷や氷などと言った属性効力を持つ術式の事だ。4大元素はもちろん、自然に関する他の減少なども全て属性術式で発動する事が出来る。

 それとは別に、固有術式という術式もある。固有術式とは属性関係なしに、物理的現象を起こすモノなど、個人が作り出す、世界で一つだけの術式の事だ。Lvが高ければいい固有術式が生まれるなんてルールはないようだ。


「なんだかあなたとは長い付き合いになりそうだから教えておくわ。私の固有術式は【暗転闇波アマテラス】っていうの。とりあえずあなたは街に出て術式を買いなさい。属性系は簡易なものばかりだからあなたでもすぐに習得できるはず」

「りょーかい」


 零夜は今まで自分が着ていた黒いコートを羽織り、離れにあったステラの家を出た。

 木々に囲まれている、安定しない土の道を眺めた後、そのさらに奥にある街を見つけた。ここからじゃかなり小さく見えている。


 そこまでは数十分歩いただけで着いた。途中謎の形をしたモンスターに遭遇したが、まだ使う事が出来た【神の力】で薙ぎ払って切り抜けた。そんな森を抜けて、眼に付いたのはやはり大きな街だった。


 アライムの街。デュアリア王国の数多くある街の一つ。そこは、木でできた建物が多い場所だった。見た目は脆そうに見える民家などの建物は、意外なほどに頑丈に作られており、ちょっとやそっとでは壊れそうにない。街の中央にある広間には、噴水が一つ設けられており、小さな子供がたくさん集まっている。その広間から四つに分かれる道があり、それぞれの方向に数種類の店が建てられている。


 その中には雑貨屋や武器屋があった。この世界に魔術という技術があり、その魔術の中で最も基本的な属性魔術の術式が販売された魔術屋などがある。


 モンスターが存在するため、奴らの襲撃に備えるために巨大な城壁が建てられており、その上にはモンスター迎撃用の砲が作られている。

「なんかこんな城壁前にも見たような……、」

 確かに、零夜は今まで生きてきた前のゲームの中の世界の王国で、このような城壁を見ている。モンスター迎撃用の砲も、高い城壁も両方見た事があった。


 とりあえず零夜は「魔術屋」という所に行こうと、地図が拡大され張りつけられた大きな看板を見て場所を確認して歩きだす。

 まるで川みたいに流れる様なたくさんの人を避けながら歩いた先には、全体的に青いカラーリングの店があった。看板には「魔術屋」と書いてある。


「ここか……、大きいな」

 思った以上に大きく作られていた魔術屋を見上げながらもドアを開ける。

 ドアに取り付けられていた風鈴の音が鳴り、ドアが開かれた先には、なにやら呪文書の様な物が並べられた横長のテーブルがたくさん並べられていた。


「ヘイ、らっしゃいッ」

 店長の低く野太い声が響き、零夜はそんな店長に眼をやる。

 茶髪ショートに揃えられた髪と、紅く強いイメージを与える眼が印象の男性。服装は普通の軽装で、鍛えられた筋肉が強調されていた。自分より数cm大きな男性を見上げながら零夜は尋ねる。


「んーと、魔術って初めてなんだけど、どうなの?」

「む?いきなりどうなのと言われてもなぁ……、」

「ごめんごめん。属性って何種類ぐらいあるんだ?」

 辺りを見渡せば呪文書、(正確には術式が刻まれた書)があり、それぞれ色が違っている。おそらくこの色が属性を示しているのだろうが、一体何があるのかを知らないまま、色だけ見て術式を選ぶのは好ましくないかと思った零夜は、店長に尋ねる。


「だいたい7種類くらいかな。炎、水、雷、風、氷、闇、土、その他いくつか……ってとこだな」

「そんなにあるのか……、確かステラは水の術式使ってたよな……、」

「ぬぬ?ステラを知っているのか?」

「あぁ、ちょっといろいろ助けてもらったんでな」


 どうやらここの店長もステラを知っているようだ。同じ街にいるのだから知り合いなのは当たり前なのだが、おそらく彼女の美少女っぷりが更に人の記憶に深く抉り突き刺さるのだろう。それとも、ステラがそれなりに名の通る凄腕魔術師なのか。

「魔術にLvって関係あるのか?」

「いや、殆どないよ。Lvよりお金のほうが必要だし」

「んー、闇の術式かぁ……、」

「……って聞けよ!」

 何かと黒色が好きな零夜。昔から黒い服ばかり好んで着ていた零夜は、闇という如何にも黒い単語に惹かれていた。


「闇だったらいろいろあるぞ。武器に付属させる術式が多いから、魔術単体で攻撃する系統のは少ないのが欠点だ。アンタ、武器を使った事は?」

「剣とか刀とかを少しなら……、」

 少し控え目な感じで店長に伝える。その言葉に反応した店長は続ける。


「それならこれなんかどうだ?」

 店長は一つの呪文書を取りだした。黒色に染められたその呪文書には「闇波」と記されている。

「初めてならば大サービスだ。ちょっと使ってみな」


「あ、ごめん。俺今武器は持ってないんだ……」

「そうか、それは仕方ないな。とりあえず武器を手に入れたらもう一度ここに来な。その時にやるよ。……つかお前ッ、1Lvじゃないか!」

「あ、あぁ。つい最近こっちに来たばかりでね。まぁありがとう、ライン」


 零夜は店長の服に刻まれていた名前で彼を呼んだ。胸のあたりにラインと刻まれている。おそらく名前だろうと予測したのだが、間違ってはいないだろう。

「おぉ、アンタの名前は?」

「俺は零夜。よろしく頼むよ」


 零夜とラインは固く握手を交わし、零夜は再び風鈴が付けられたドアを開いて武器屋を目指す。

 名前は友達になって者にしか表示されない。他人が見る事が出来るのはLvだけだ。名前を知らせる方法は、友達になる以外に自分から伝えるという方法がある。

 丁度よく地図には武器屋が近くに記されてあったため、とりあえず手頃な刀を手に入れるべくそこへと向かうことにした。人ごみの中を這い、ようやく辿り着いた武器屋は、先ほどの魔術屋よりかなり小さい店だった。


 人気が無いのかな、と一瞬思ったがそれは少々違っていた。

 かなり高級そうな武器が並べられている。高級そうなでは曖昧だが、見た限り良い素材で作られた武器たちの値段は相当なものだった。


 人気が無いのではない、売れていないから店が小さいのではない。この店では一級品の武器だけを取り揃え、数少ないそんな武器しか売らないから小さい店なのだ。

 武器を見ただけで判断した零夜は暖簾のれんを避けて中に入って行く。


「やぁ、随分と良い武器が並べられているね。刀はあるかい?」

「こっちが刀系だ」

 素っ気なく言い放ちながら指差した方向には、刀が3本程並べられていた。


 全て銀の刀身が輝く品だった。見ただけで一級品だと分かるその武器の中でさらに一際輝く武器があった。

 黒い柄に赤いラインが入っている。結構長い刀で1.8m程だろう。その仕様は、野太刀によく似ていた。


(このぐらいの刀なら今まで振って来た。軽く振れるだろう……、)

「この刀はいくらだい?」

 零夜が指差したのはやはり、黒柄赤ラインの刀だった。

「ふん、お前みたいな細い男がこの刀を振る事は無理だろう。だけど、一応値段は教えてやる。100000ユールだ」


 ユールとは今のこの世界の共通通貨で、1ユールは昔の日本円でいえば約10円程だ。

(ダメだ。そんなに持ち合わせていない……、)

 彼の持ち金はステラにもらった50000ユールだけ。ちょうど半分しか持っていない。

「これじゃぁ買えないか……、」

「まぁ、もしお前が100000ユールあったとしても、お前みたいな細男が振れるような品じゃないっての」


 カチンと来た。

(なんなんだこの男は……、人を見かけで判断するなってんだよ。あぁイライラする。こうなったら……、)


「おいお前。さっき俺に言ったよな。お前みたいな細男が振れるような品じゃないって」

「あぁ、言ったとも。それがどうした?」

「じゃぁよぉ、もし俺がその刀を持ち、普通に振ったらどうする?50000ユールに値下げしてもらうかんな」


「いいとも。まぁ、できるはずがないからな。この刀は今まで振る事が出来たのは3人しかいない。少なくともこの店に来た奴らの中ではだがな。それでも3人とも軽く振れたってだけ。お前みたいなやつが振れるわけが無い」

「ほぉー、じゃぁ俺が振っちゃったらお前のその調子に乗ったセリフを撤回してもらおうか」

「ふっ。できたならな」


 零夜は悪魔の様な不敵な笑みをもらすと、その刀を手に取った。

 結構な重さの武器だ。零夜は最初片手で持とうとしたが、少し重く感じるためもう片方の手を添えて持ち上げ、肩にかける。

 そんな動作で少し驚く男。彼の額を一滴の汗が垂れる。


(片手で振れるかな……?)

 右手を外し、左手だけで軽く振り下ろし、よくやった構えを取る。勿論、刀は左手だけでつかんでいる。

 店の前で行っていて、更にこの刀がどれだけ重いか知っていた事があってか、いつの間にかそんな刀を振ろうとする零夜の周りにギャラリーが集まってきている。


 そして、そのまま横薙ぎ。

 ブンッ! と、重い斬撃が空を切る音が鳴る。綺麗な剣線が宙を舞い、見事に横に振られた刀を、零夜は左手一本で再び肩に担ぐ。

 その態勢から振り下ろして上段斬り下ろし、振り下ろされた刀を腰の位置までもっていき、そのまま前方突き、振り下ろして下段斬り上げ。


 一瞬で4連撃舞った零夜を見て、ギャラリーと店の男は唖然とした。

 誰もが、あんな細い男があの重たい刀をあんなに綺麗に振るなんて……、そんな顔をしている。だが、やがてそんな彼を称えるように周りから盛大な拍手が鳴り響く。


 店の男の拍子抜けな顔は変わらない。そんな顔はもう物凄い汗で濡れている。

「どうだ、参ったか。これでこの刀の値段は50000ユールだよな。ほらよッ」

 零夜は50000ユール分のお札を男の前に置き、この刀の鞘と思われる物に刀をしまって、肩に吊るす。

「じゃぁな」

 と、一言残して再び魔術屋へと向かっていく。


 再び店の中に入って来た零夜を見て、ラインはやはり驚いていた。原因はやはりこの刀、【赤煉刀アグナレンカ】だろう。

「お前、それって……、あの店のメッチャ重たい刀じゃないのか……ッ!?」

「多分そうだと思うよ。でも案外軽く振れたよ」

「今までどんだけ重たい刀を振って来たんだよ。零夜は……、」


 昔振っていた刀。彼の発言で一つの刀の姿が浮かぶ。

 黒刀(漆)。彼が今まで使ってきた刀で、初めての愛刀。先の戦いで折れてしまったあの刀は一体どうなったのだろうか。システム的に処理されてしまったのだろうか。


 儚い思い出を頭を振る事で振り払い、零夜は話を変える。

「そんじゃ頼むよ。さっきの術式」

「あ、あぁ。そうだったな」

 ラインはそう言いながら再び黒い呪文書を取りだす。「闇波」と記された呪文書だ。


「呪文書は一度使用すれば消滅する。呪文書そのものが魔術的に作られているからな。術式を知ればいくらでも作る事が出来るが、そういうのは魔術屋として認められないと創る事は禁じられている。基本的な事だから覚えておけよ」

「あぁ、分かったよ」


「そんじゃぁ武器を貸せ。俺が術式をかける」

 零夜は【赤煉刀アグナレンカ】をラインに手渡した。少々重かったのか、ラインも渋い顔をするが、すぐに術式付属を開始する。


 何やら小声で唱えているが、零夜には聞こえない。ラインの左手が持っていた呪文書が一つの黒い光と成り、それは【赤煉刀アグナレンカ】を覆うように包み込んだ。

 刀身がわずかに黒光りする。それは一時的なものではなく、常時そうなっているようで、刀そのものの刀身の色が変わった。


「終わりか?」

「終わりだ。魔術的な保護、要は術式を施した武器の事を魔装マジックウェポンというんだ。とりあえず振ってみろ、勿論外でな」


 かなり長い刀のため、店内を荒らされては困るといった表情で外を指さすライン。零夜はそれに従って外に出る。魔術屋の傍の空き地の様な所には、魔術試し撃ちのための的が用意されていた。とりあえず零夜は軽く一撃、遠距離から的に向かって【赤煉刀アグナレンカ】を振るってみた。


 黒いカマイタチの様な物が眼に見える。それは大気を揺らしながら高速で突き進み、的にぶち当たる。

 スパッと、藁でできた人形型の的が真っ二つに斬れる。斬り口はあり得ないほどツルツルで、有り得ないほど綺麗に斬れていた。


 それを見ていたラインは口を大きく開いて呆然とする。やがて呟いた。

「ありゃりゃ……、アレには防御系の術式を施しておいたんだけどなぁ……、その刀、超一級品だな。付属した術式はスタンダードなのに他とは威力が全然違う……、」

「そりゃどうも。これが俺の相棒だ」

 黒光りする刀身を持つ【赤煉刀アグナレンカ】を指で撫でながら勝ち誇った顔で零夜は呟いた。

ありがとうございました!

「おい!矛盾してるとこあんぞ!」なんて人は、何でもありの自由な世界だからまぁいいや、とか、アドバイスを頂けたら嬉しいです!

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