表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/26

小さな出会い

大学二年生。


慣れたようで、まだ慣れない。


そんな春だった。



「お疲れー、六花!」


「また明日ね!」


「うん、またね」


友人たちと別れ、私は一人キャンパスを後にする。


四月も半ば。


桜はほとんど散ってしまったけれど、まだところどころに花びらが残っていて、風が吹くたびにひらひらと舞っていた。


大学生活も二年目。


友達もいる。


バイトもある。


単位も今のところ問題ない。


傍から見れば、ごく普通の女子大学生だと思う。


……多分。


私は小さく苦笑した。


普通じゃない部分があるとすれば、一つだけ。


人ならざるものが見えること。


神様。


妖怪。


精霊。


時には怨霊。


そういう存在が、昔から見えてしまう。


別に退治できるわけじゃないし、戦えるわけでもない。


ただ見えるだけ。


それだけなのに、結構疲れる。


視界の端に映る影。


聞こえないはずの声。


通り過ぎるだけでまとわりつく感情。


慣れたとはいえ、楽ではない。


だから私は適度に無視する術を覚えた。


気にしない。


関わらない。


深入りしない。


それが長年かけて身につけた処世術だった。



バイト先へ向かう途中。


住宅街の小さな公園の前を通りかかった時だった。


ふと、視界の隅に違和感が映る。


「……?」


足を止める。


花壇の脇。


色とりどりの花の陰に、何かがいた。


近づく。


小さな鳥だった。


手のひらに収まりそうなほど小さい。


白い羽。


ところどころ金色が混じっている。


けれど羽は泥で汚れ、呼吸も弱々しい。


今にも消えてしまいそうだった。


「大丈夫……?」


しゃがみ込み、そっと手を伸ばす。


普通の鳥なら逃げるだろう。


けれどその子は動かなかった。


いや、動けないのかもしれない。


小さな瞳が私を見上げる。


その瞬間。


胸の奥がざわりとした。


「あ……」


分かってしまった。


この子は普通の鳥じゃない。


人ならざるもの。


神様側か。


妖の類か。


そこまでは分からない。


でも。


少なくとも助けを必要としていることだけは分かった。



「困ったな」


思わず呟く。


バイトまであと十分。


家に連れて帰る時間はない。


放っておくのも嫌だ。


悩んだ末。


私はバッグからハンカチを取り出した。


「ちょっとだけ我慢してね」


そっと包み込む。


驚くほど軽かった。


生きているのが不思議なくらいに。



ぴくり。


小さな身体が震える。


「大丈夫」


無意識にそう言っていた。


「私、変なものいっぱい見てきたから」


苦笑する。


「でも、弱ってる子を放っておくほど薄情じゃないよ」



小鳥はじっと私を見つめていた。


まるで言葉を理解しているみたいに。



その時。


六花はまだ知らなかった。


腕の中にいる小さな存在が。


自分の人生を大きく変えることになることを。


そして。


何千年もの時を生きてきた四霊の一柱――


鳳凰との出会いであったことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ