小さな出会い
大学二年生。
慣れたようで、まだ慣れない。
そんな春だった。
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「お疲れー、六花!」
「また明日ね!」
「うん、またね」
友人たちと別れ、私は一人キャンパスを後にする。
四月も半ば。
桜はほとんど散ってしまったけれど、まだところどころに花びらが残っていて、風が吹くたびにひらひらと舞っていた。
大学生活も二年目。
友達もいる。
バイトもある。
単位も今のところ問題ない。
傍から見れば、ごく普通の女子大学生だと思う。
……多分。
私は小さく苦笑した。
普通じゃない部分があるとすれば、一つだけ。
人ならざるものが見えること。
神様。
妖怪。
精霊。
時には怨霊。
そういう存在が、昔から見えてしまう。
別に退治できるわけじゃないし、戦えるわけでもない。
ただ見えるだけ。
それだけなのに、結構疲れる。
視界の端に映る影。
聞こえないはずの声。
通り過ぎるだけでまとわりつく感情。
慣れたとはいえ、楽ではない。
だから私は適度に無視する術を覚えた。
気にしない。
関わらない。
深入りしない。
それが長年かけて身につけた処世術だった。
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バイト先へ向かう途中。
住宅街の小さな公園の前を通りかかった時だった。
ふと、視界の隅に違和感が映る。
「……?」
足を止める。
花壇の脇。
色とりどりの花の陰に、何かがいた。
近づく。
小さな鳥だった。
手のひらに収まりそうなほど小さい。
白い羽。
ところどころ金色が混じっている。
けれど羽は泥で汚れ、呼吸も弱々しい。
今にも消えてしまいそうだった。
「大丈夫……?」
しゃがみ込み、そっと手を伸ばす。
普通の鳥なら逃げるだろう。
けれどその子は動かなかった。
いや、動けないのかもしれない。
小さな瞳が私を見上げる。
その瞬間。
胸の奥がざわりとした。
「あ……」
分かってしまった。
この子は普通の鳥じゃない。
人ならざるもの。
神様側か。
妖の類か。
そこまでは分からない。
でも。
少なくとも助けを必要としていることだけは分かった。
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「困ったな」
思わず呟く。
バイトまであと十分。
家に連れて帰る時間はない。
放っておくのも嫌だ。
悩んだ末。
私はバッグからハンカチを取り出した。
「ちょっとだけ我慢してね」
そっと包み込む。
驚くほど軽かった。
生きているのが不思議なくらいに。
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ぴくり。
小さな身体が震える。
「大丈夫」
無意識にそう言っていた。
「私、変なものいっぱい見てきたから」
苦笑する。
「でも、弱ってる子を放っておくほど薄情じゃないよ」
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小鳥はじっと私を見つめていた。
まるで言葉を理解しているみたいに。
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その時。
六花はまだ知らなかった。
腕の中にいる小さな存在が。
自分の人生を大きく変えることになることを。
そして。
何千年もの時を生きてきた四霊の一柱――
鳳凰との出会いであったことを。




