第54話 形勢逆転
SSS級の魔剣はモンスターの群れを分断するほどの威力があった。あそこまでの火力とは……さすがSSS級だ。ある村人の男は、盾だけで敵を圧倒していた。
「おいおい、強すぎだろう」
「あれは、イージスの盾ですね。最強です」
アイテムに詳しいマルガが説明してくれた。
SS級らしく、武器としても使えるのだとか。
へえ! 勉強になった。
魔王軍の数も、もはや一万を切っていた。
「圧倒的ではないか……我が村人は!!」
なんてカッコつけてる場合ではない。
恐らくいるであろう、サフィラス伯爵を探し出さねば。ヤツが全ての元凶だ。きっと今頃どこかでこの形勢逆転劇を顔面蒼白で見ているに違いない。
「勇者殿、こちらは任せてくれい!」「こっちに死者もいないし、余裕だ!」「村は任せろ!」「EXダンジョンの方も任せろ!」「余裕余裕!」「いけるな!」
これほど頼もしい村人がいたとはな。
よし、彼らに任せよう。
「じゃあ、俺は戦線離脱する。サフィラス伯爵はきっといるはずなんだ。ヤツを倒し、この戦いを終わらせる!!」
「「「「「おおう!!」」」」」
◆
カリブルヌス村を抜け、俺とフルク、マルガでサフィラス伯爵を探す。
これだけの規模の奇襲を起こしたのだ。絶対何処かにいる。あの性格なら遠くではない、この近くにいるはずなんだ。
「ちょっと辛いですが……『神託』を使いましょう」
「いいのか、フルク。でも、辛いって」
「ええ。この力は膨大な魔力を必要とし、わたしの精神を蝕むんです。ごめんなさい、黙っていて……たまに体調が悪くなっているのは、このせいです」
なんだって……神託にそんな負荷があったとはな。そう何度も使える便利なものではないのだな。
「無茶を言うようだけど、頼めるか」
「頑張ります。わたし……頑張ります」
額に汗を滲ませ辛そうだけど、フルクは目を閉じて『神託』を開始した。聖女の力を……フルクトゥアトの力を信じよう。
「主様……フルク様は……」
「大丈夫だ、フルクはきっとやってくれる」
今は信じるしかない。
俺にはそれくらいしか……出来ないのだから。
聖なる光が彼女を包む。祈りを捧げ、神託を待つフルク。そのまま消えてしまのではないかと思えるくらい儚げ。頼むから、力を使い果たして消滅――なんて最悪な事態にだけはならないでくれ。
見守っていると、フルクは倒れた。
咄嗟に俺は彼女の体を支え、なんとか地面との衝突だけは避けられた。だが、フルクは息を荒くして明らかに苦しそうだった。おでこに手をあてると鉄板焼きのような熱気があり、火傷しそうになる。
「うわぁ、アツ!!」
「……ご、ごめんなさい。本当は一日に一回が限度なのに……何回も使うと、こうなっちゃうんです……。でも、分かりました」
「……場所は何処だ?」
「この先に崖があるんです。インケルタという崖で……マルガさんのお屋敷も見渡せる場所なんです」
そんな所にいるのか。
確かその崖は、マルガの屋敷から見えていた。
そうか、あんな所に。
それから程なくして、フルクは気絶した。
やっぱり無茶をしていたんだ……。でも、これで場所を特定した。決着をつける。
「マルガ……フルクを頼む」
「了解です。わたくしは命にかえてもフルク様を守り致します」
「頼んだ。フルクは俺にとって……かけがえのない存在なんだ。もちろん、マルガもね」
「ご健闘を、勇者アウルム様」
マルガにフルクを託し、俺は『インケルタ』を目指した。そこには、魔王代理の男・サフィラス伯爵がいるはずだ――。
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