第32話 聖女の神託
部屋の割り当ても完了した。
「全員、二階か。見晴らし良いしなぁ~」
現在は各々の部屋で休憩となった。久しぶりに一人の空間を手に入れた気がする。ベッドに身を預け、天井を見上げて思い返す。
――思えば、ルードスからギルドを追放され、ボコボコにされ……小屋で治療に専念する苦しい毎日を送っていれば、フルクと出会った。
俺はフルクによって救われた。彼女がいなければ【レベル投げ】も存在しなかったし、あのEXダンジョンも、この屋敷も無かった。
「フルクには感謝しても仕切れないな……。いつか何かの形でお礼が出来ればいいんだが……」
思案に更けていると、コンコンと乾いた音が響く。
『あの、アウルムさん』
「フルクか、入っていいぞ」
扉を開け、中へ入って来るフルクは、なんだか落ち着かない様子だった。その表情もなんとも微妙な。
「……」
「どうした?」
「……部屋でゆっくりしていたんです。すると『神託』がありまして……ユースティティア教会へ戻れと……」
「え……教会へ? いきなりどうして」
首を横に振るフルクは「分かりません」と困った顔をして、今にも泣き出しそうだった。戻るのが嫌なんだな。
「無理に戻る必要はないだろう?」
「はい……出来る事ならユースティティア教会へは戻りたくなかったです。わたしはアウルムさんを支えるって誓ったのに……ダンジョンの攻略だってまだまだなのに。……でも、聖女としての役目があるんです。教会にご迷惑は掛けられません」
そう辛そうにされると、なんとかしてやりたいって思えた。そもそも、フルクはなくてはならない存在だ。
運が上がるからとか、EXダンジョン攻略になんて理由はではない。俺が必要としているからだ。大切な仲間として。
「分かった、俺も一緒に行くよ。教会の誰だか知らんけど説得してみせるさ。これでも元勇者だからな」
「……はい、お願いします。アウルムさん」
フルクの目尻にはキラリと涙の粒が。
……あぁ、俺もフルクに居て欲しい。
◆
マルガを食堂に呼び、状況を説明した。
「――なるほど、聖女様の神託ですか。それはマズイですね、神託に逆らえばフルク様は聖女としての資格を失うかもしれません」
「なっ……なんだって?」
「教会は、神の声……神託を神聖視していますから、それに背く行為があれば、背教だの悖徳だの何だの何かしら難癖を付けられ、強制排除されるでしょうね」
なんと面倒な。いやだがしかし、フルクの一大事である。ここは助けてやらねば、EXダンジョン攻略どころではない。
「マルガ、俺はフルクと共に帝国へ飛ぶ。問題をサクッと解決して、EXダンジョン攻略に戻る。そうしなきゃ、建国も何もないからな」
「ええ、理解しています。その間のお屋敷の管理はお任せください」
「分かった。建てたばかりで申し訳ないけど、直ぐに戻る」
「お任せ下さい。これでもメイドですから」
そういえば、今日もメイドだった。マルガになら任せても問題はないだろう。葉っぱを使って『帝国カエレスエィス』へ――!
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