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2696 かくして植民惑星は内戦に向かった  作者: もってぃ
アールーズのサローノ人
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 バンデーラは、ベアタの横をすり抜けしな銃口を下ろすよう手振り(ジェスチャー)して、テーブルに座るラッピンの方へと近づいていった。


「いらっしゃい」

 ラッピンはバンデーラを見上げると、にっこりとほほ笑んでみせた。「…――もう少ししたら誰か呼びに行かせるところだったの」


 バンデーラも笑顔になって頷いて返した。

 そして〝両親に黙ってボーイフレンドを家に上げた妹を見咎めることになった姉〟のような表情(かお)になって口を開いた。


「ジーン……」

「――〝手は触れて〟ない」


 〝妹〟(ラッピン)は、すぐさまそれを遮った。


「本当?」

「ええ」


「そう…――」 バンデーラは、チラとレーリオ見た。「ともかく身柄はこちら(PSI)で預かる。 ……ベアタ! サンデルス!」


 折よくベースメント(半地下)へと下りてきたサンデルスは、ことのはじめからそこにいるベアタと共に、レーリオともう一人の男を拘束するために歩みを進める。

 その動きを目で追いつつ、ラッピンは鼻で笑うようにして言った。


「どんな容疑で捕まえるのかしら? 交通違反?」


 ベアタもサンデルスも、上司がこの女に好意を抱いていないのを感じ取っているから、それぞれに〝対象〟を後ろ手に縛りあげる動きを止めなかった。


「〝話をさせて〟といっても無理かしら?」

「ええ、無理ね」


 バンデーラの返答は、正しく〝取り付く島のない〟ものだった。

 ラッピンはテーブルから立ち上がった。


「ねぇジェンマ…――あ、そう呼んでいいかしら?」

「ええ。……どうぞ」


 ラッピンはバンデーラの視界の中で腕を組み、まっすぐに相手の顔を見て言った。


「あなたたちの〝下手な尾行〟が無ければ、すべて上手くいってた」


 そこでレーリオの顔を見やり、確かめるように語尾を上げて言った。


「――紙幣(かね)は仲間の所へ届いていたはずよね、レーリオ?」

「〝仲間〟?」


 バンデーラが、彼女の使った単語の一つを、耳聡く聞き咎めた。

 ラッピンは〝あら、馬鹿じゃなかったのね〟というふうな表情でバンデーラを見返す。

 バンデーラは、サンデルスとベアタに指示した。


「連れて行って」


 そして二人が、それぞれに拘束したレーリオともう一人と共に地上階への階段ホールへ消えるのを待って、改めてラッピンに訊く。


「仲間とは誰?」

 薄く笑って何も答えないラッピンに重ねて質す。

「あなたたちはいったい何を知ってる? ここで洗い(ざら)い、全部話してくれると助かるんだけど」


 互いに目を逸らさず、相手の顔を正面から見遣る。

 やがてラッピンが、その奇麗な造りの貌に微笑を湛えたまま言った。


「〝彼〟の身柄は、電話一本で取り戻せるわ」


 バンデーラの目が、スッと、わずかに細くなる。

 この状況で、公安調査部(PSI)捜査官を〝恫喝〟するとは……。


「わかってるでしょうけど…――」


 なおも言葉を続けようとするラッピンを遮るように、バンデーラは〝権利告知〟を語り聞かせ始める。


「――あなたには黙秘権が認められる。それに弁護士を呼ぶ権利も。支局へ〝ご足労願う〟ことにするわ」


 ラッピンが顔を左右に振った。


「よしてよ」


 冗談でしょ、というふうに笑って小首を傾げる。

 バンデーラは〝肯定的()()()〟笑みを浮かべて、彼女に頷いてみせる。


 そうして、拘束したレーリオを地上階のメンバーに受け渡して戻ってきたサンデルスがその腕を捕ったとき、初めてラッピンの顔から笑みが消えた。

 後ろ手に手錠を掛けられたラッピンが、サンデルスの腕の中で小さく藻掻(もが)きながら、バンデーラへと視線を遣る。


「ちょっと! 何をしてるかわかってるの? こんなことして、その結果がどうなるか――」


 そんな、腕の自由を拘束されても()()()()達者な口を止めようとしないラッピンを黙らせるため、バンデーラは、()()()()罪状を指折り数えて応じてみせる。


「――〝誘拐容疑〟〝公務執行妨害〟〝暴行〟も、かしら?」


 ラッピンはようやく口を噤んだ。

 美しい黒曜石の瞳が、バンデーラを睨めつける。

 バンデーラは意に介さず、ほほ笑んで返すとサンデルスに軽く腕を振って命じた。


「連行して」

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