95.瞬身、スリアドを訪ねる。(ギルドマスター、冒険心をくすぐられる。)
side エリオ
街を歩きながら雰囲気を確認する。
宿場町スリアド。
俺も別に初めての場所ではない。
俺がハンターとしての拠点を置いているコウナードから半日も馬を走らせれば着く距離だ。
依頼を受けて立ち寄ることもあるし、スリアドのギルドから要請を受けて尋ねることもある。
今回は後者だ。
フレンブリード領…なんでも領主である辺境伯が国家反逆罪だかで捕まって代わりの領主が決まり次第名称も変更になるらしい。が魔族の攻勢を受けているとの事だった。
魔族の拠点は分かっているらしく、近々打って出るための戦力を集めているらしい。
そこで近場に居るAランクハンターの俺に声が掛かったわけだ。
街の雰囲気はやはり、というか以前の活気はない。
最近は町を出ると魔族の襲撃を受ける可能性が高まっているらしく、物資の搬入もままならない状況だとか…。
ハンターでもやられているケースがあるらしく、俺も移動には注意を払っていた。
そうこうしている内にギルドに着く。
俺はその門を開けた。
「あ、エリオさん。」
ギルドに入ってすぐに声を掛けられた。
スリアドのギルドのサブマスターのミリアだ。
存在感が希薄なのは彼女が隠密に長けた元ハンターで、普段から気配を消すのが癖になっているとか。
「久しぶりだな。【指定依頼】の件で来た。マスターは居るか?」
ミリアは無言で歩き出す。
ついて来いという事だろう。
ミリアはバックヤードに入り、ある部屋の前で止まる。
ギルドマスター室だ。
「マスター。コウナードからエリオさんが到着しました。」
「おう。入ってくれ。」
そうして部屋に通された俺はソファに座る。
向かいのソファにはギルドマスターのアセットが座る。
「わざわざすまんな。」
「いいさ、Aランクに上がるからにはこう言った内容の依頼が増えることも覚悟はしている。」
「その心構えのAランクが増えると助かるんだがな…。まぁそれはいい。来てくれたこともそうだが、もう一つ謝ることがある。今回の依頼の件はキャンセルになる。」
「は?」
「実はな、今フレンブリード領内のギルド全体に今回の魔族への攻撃作戦の中止と魔境への接近禁止を展開してるんだ。俺の首をかけてな。」
「…どういうことだ?」
魔族の襲撃を受けている状況で反撃の予定を取りやめるなんて常軌を逸している。
このままでは好きにやられるだけだ。
あまつさえ魔境への接近禁止?
魔族側へはプレッシャーもかけないという事か?なぜ?
「説明が難しいんだがな…。まぁお前さんはAランクだし知る権利があるわな。」
そうしてアセットは今回の件の対処について一人のハンターに任せる方針であることを説明しだした。
最初は気が狂ったのかと思っていた。
俺はAランクとしてギルドとの付き合いも多い。
ギルドマスターの中でもこのアセットとライラックのカルザンは切れ者との印象があったが…。
だが、話を聞いていくうちに一人のハンターが思い浮かんできた。
「という訳だ。…信じられんだろうがな。」
「にわかにはな…。なぁ、その【亜竜】2匹を赤黒い光線で跡形もなく吹き飛ばして魔境を消滅させるって言ったハンターの名前はなんて言うんだ?」
「2人組のハンターで、ジークとシファだ。」
俺は納得した。
まさかと言うかやはりというか…。
「なんだ、知り合いか?」
俺の顔色を見ていたアセットが訝し気に聞いてくる。
「コウナードで共同作戦をな。そうか、最初は気が狂ったんじゃないかと思っていたが、納得したよ。俺はこの件から降りるぜ。」
俺のその言葉を聞いてアセットは少し安心したようだ。
出した【指定依頼】のキャンセルなんてそうそうない。
一方的に打ち切ればトラブルにもなる。
ギルドとしてもAランクと険悪になるのは避けたかったのだろう。
「そうか。本当にすまんな。もちろん準備にかかった費用や交通費はこちらで負担する。申請しといてくれ。」
「…一つだけいいか?」
「なんだ?」
「名無し…、ジークはどうやって魔境を消滅させるつもりなんだ?」
俺が知っているジークは魔法も使うが基本は剣士だった。
シファは魔法がメインだったが、派手な攻撃魔法は使っていなかったはずだ。
その二人が広大な森を消滅させるという言い方が少し気になった。
「聞くか…?」
アセットは苦虫を嚙みつぶしたような顔をしていた。
◇◇◇◇◇
side アセット
俺はジークから聞いた方法をエリオに説明する。
説明が終わった後顔色を確認すると、…一言で言うと青ざめていた。
エリオにはそのヤバさが伝わったらしい。
普通の人なら経験することはないだろうが、ハンターともなれば各地を回るためどこかでそう言った知識を得ていたのかもしれない。
「…そんなことが可能だと思うか?もしそんなことが出来れば…、奴らは事実上、国だって一瞬で滅ぼせれる事になるぞ?」
エリオが俺に聞いてくる。
「俺はあいつならやりかねないと思っている。お前はどうだ?」
エリオはジークたちと共同作戦に参加していたらしい。
恐らく、ギルドマスターとして接していた俺よりそのあたりの感覚があるだろう。
「…強さの底が知れないという意味では不思議ではないな。だが、そうなるとあの時も大分実力を隠していたという事になるか。赤黒い光線と言うのも知らないしな。」
良く分からないがそうであっても不思議ではないという所か。
「エリオ、この後どうする?」
俺の質問に少し思慮した後、エリオは答える。
「明日なんだろ?せっかくだからその天変地異とやらを見ていくさ。」
そう言ってエリオは笑う。
今の彼は不安や恐怖と言った感情より、期待の方が勝っているようだった。
俺も後始末とかが無けりゃ同じ気持ちで居られたのにな。残念だ。
エリオさんの回書きたかったんですよね。
彼は決して弱いわけでも浅はかなわけでもないのです。
ジークさんとの出会いの印象が悪いだけなのです!!
と言う想いで書いてます。
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