92.踏破者、フレンブリード領へ戻る。
「たっけ~」
俺は眼下に広がる荒野や村を眺めなる。
今はバハムートに乗ってフレンブリード領への移動中だが、ドラゴンが飛んでいるところを見るだけで人族はパニックになるので飛行高度をかなり上げてもらっている。
「ううう…。」
意外だったのが、シファはこの高度がダメらしい。
【天翔】で高所へ移動したりしていたが、これは話が違うとの事。
今は必死に俺の腰にしがみついている。
「しかも大分早いなこれ。直線移動もできるし、早馬の10倍以上の速度出てるよな。」
『馬なんぞと比べられるとはな。儂は幻獣の中では【有翼獅子】に次いで早く飛べるぞ?』
「あ、【有翼獅子】の方が早いんだ。」
『あ奴らは飛ぶことに特化しておるからの。その代わり戦闘力では儂の足元にも及ばん。』
対抗意識燃やしちゃったよ。
俺からしたらこの速度で十分すぎるんだがな。
因みに、空気抵抗はシファの【神の盾】で受けないようにしている。
最初はそんなことも分からずに飛んでもらったため、シファと一緒に振り落とされてしまったのだ。
【無重力】で落下は免れたが、シファの高所恐怖症はそのせいで悪化したかもしれない。
「しかし凄い景色だ。」
俺は初めて見る高所からの視界に見惚れていた。
お、あれはコウナードの街じゃないか?
「ジーク、右上前方から鳥型の魔物が2体来るよ。」
地上にばかりに目が行っていて気付かなかった。
というかシファは空中で人の腰にしがみつきながらも【探索】は忘れず使っていてくれてたんだな。
シファが指し示した方向に視線を向けると確かに小さな影が2つ見える。
向こうもこちらに近づいてきているようで、その姿形が徐々に判別できるようになってくる。
「んん??あれ、【竜種】じゃないか?」
『あれは【亜竜】だな。近いがドラゴンではない。』
【竜種】ではないらしい。
ギルドの魔物分類では【竜種】だったような気がするが…。
まぁそのあたりはバハムートにも拘りがあるのかもしれない。
『あんな紛い物など我のブレスで撃ち落としてくれよう。』
そう言って口に炎を溜めるバハムート。
だが、俺はそれを制する。
「ここで倒すなら消し炭にするくらいでないと。死体が地上に落下するのは危険だ。俺がやる。」
『む、確かに。では任せようかの。』
「ああ、バハムートはそのまま真っすぐ飛んでいてくれ。」
そう言って俺は【亜竜】に手かざす。
「【終焉の息吹】」
『は?』
俺のかざした手の先から熱線が照射される。
そしてその熱線が【亜竜】2体を捉えるように薙ぎ払う。
【亜竜】はそれぞれ熱線を浴びた瞬間に発生した大爆発により四散した。
あ、しっぽの先が爆散せずに残って落ちていく…。
まぁあれくらいなら大丈夫だろう。
運悪く誰かに当たったりしない事を祈るだけだ。
『…主よ、儂の背から【終焉の息吹】を使う時は先に言ってくれ。間違って照射先に翼でも触れようものなら儂が木っ端みじんになる。』
「え?そうなの?」
『主の【終焉の息吹】の威力ならな。儂の防御力じゃ耐えられんだろう。』
そうなのか…。
「…私の事を忘れていない?そうなったらもちろん私も助からないから使いどころは気を付けてよ。」
相変わらず俺の腰にしがみついたままのシファもそう言ってくる。
スキルレベルも上げたいのだが…周りに被害の出ない状況でないと使えないか。
いつ使えるんだ??
そんなことを考えている間に俺が生まれ育った町の上空へと到着する。
早馬で一週間かかるかって距離を数時間か。
思っていたよりはるかに速かったな。
「バハムート、あっちへ行ってくれるか?」
俺は真っすぐ北を指さす。
「まずは魔境を見ておきたい。上空からなら全容が確認できるだろう。」
『承知した。』
魔境まではすぐだった。
俺は上空から森を観察する。
確かに街側に建築物が見えるな。
恐らくあれが魔族の建設している拠点だろう。
視線をずらし森の奥へ。
森自体は楕円形をしている。
人族の中ではどこかに魔族の住む町があるのではないかと噂されていたが、特にそう言ったものは見られない。
今拠点を建設している魔族はどこからきているのだろう?
出来れば働きアリだけでなく巣の方も潰しておきたかったが分からないのなら仕方ない。
幸い森の方は何とかなる大きさだ。
それが分かっただけ良しとしよう。
「バハムート、一旦戻るぞ。」
『このまま攻撃を仕掛けるのではないのか?』
「まだティアとの約束の日時まで時間があるからな。まだ攻撃は仕掛けられない。町で状況把握だ。」
そして俺はバハムートに宿場町【スリアド】へ行くように指示する。
今フレンブリード領へ派遣されている代官とは面識がないので単独で話を聞きに行っても情報が得られない可能性がある。
それなら面識があって貸しもあるスリアドのハンターギルドへ行く方が情報を得られるだろうという判断だ。
スリアドから少し離れた所でバハムートから降り、徒歩で街へ入る。
少し騒がしいな。
町人の顔には不安が浮かび、普段より多そうに見えるハンターの顔には緊張感が漂っている。
魔族との戦闘でも起こったのだろうか。
俺とティアはそのままギルドへ入る。
ギルドの中では職員とハンターが協力して武器防具をまとめたり、回復役等の物資を集めたりしていた。
これは魔族の侵攻があったのかもしれんな。
「ジーク君か!?」
声を掛けられた方を向くとスリアドのギルドマスターのアセットが居た。
その顔に余裕はなく、やはり少し焦っているように見える。
「ちょうどいい所に!!申し訳ないが少し手伝ってくれないか?魔族か分からないんだが、何かの脅威が近くに現れたみたいなんだ。」
「脅威…ですか?」
「ああ、さっきの事なんだけど、このスリアドの上空で急に赤黒い閃光が走ったかと思うと大爆発が起こって、あれが落ちて来たんだ。」
アセットの指さす方を見るとそこにはどこかで見たような爬虫類のしっぽの様なものが見える。
「あれは鑑定の結果【亜竜】のものらしいんだが、この上空にBランク魔物を木っ端微塵にできるレベルの存在が居るようなんだ。ミリアが言うには【竜種】のような影が見えたとの事なんだが…もしかしたらこの町も襲われる可能性があるから防衛体制を整えている所だ。」
おれの頬を嫌な汗が流れる。
「ソレハ…。タイヘンデスネ。」
それを言うのが精いっぱいだった。
ドラゴンの背に乗り空を飛ぶ。
ファンタジーの王道ですね。
最初はドラゴンじゃなく別の生き物にしようかと思ったんですが、アイデア沸きませんでした。
ペガサスに乗ったジーク…無理がありますよね。
作者は想像力の欠如を治す方法を探します。
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