79.踏破者、ダンジョンを崩壊させる。
シュラは何とか一命をとりとめた。
冗談で言っているのかと思ったら意外と真面目に死にかけていたようだ。
【暴食竜】の胃酸は思ったより強力で、自称神族であるシュラを殺傷し得るものだったという訳だ。
まぁ自称だしな。
シファに【洗浄】を使ってもらい、綺麗になったシュラを刀剣モードに戻して腰に差す。
シュラは何か文句を言っていたがそれは無視だ。
因みにシファとレベッカはシュラの状態を見てそれなりに引いていた。
特にシファは眷属状態の為、同じような扱いを受ける可能性があることに怯えているようだった。
まぁ流石に見た目人間の女性を同じように扱う勇気はないが…。
「それにしても、魔素の濃度が下がったか?やっぱりこいつが核」だったのかね?」
「魔素濃度が下がってるのは間違いないわね。もうこの辺は平地と大差ないわ。間もなく崩壊が起きるわね。」
「じゃあその前に戦利品の回収だな。」
ダンジョンは強力な魔物、又は旧時代の遺物をコアとして自然発生するものだと言われている。
それはダンジョン内でボスと言われる特定の存在を倒したり、超が付くほどのお宝である遺物を持ち出すことでダンジョンがその機能を失う事から考察されている。
機能を失ったダンジョンは異空間に広げたその容量を維持することが出来なくなり、最下層から順次縮小し、最終的には消滅する。
これがいわゆるダンジョン崩壊という現象だ。
そしてダンジョン崩壊にはもう一つのパターンがある。
ダンジョンは活性している限り無尽蔵に魔素を生成し、魔物を生み出す。
この生み出された魔物の量がダンジョンの容量を超えると、ダンジョンから魔物が外に出てしまうという現象が起こる。
最初は浅層の弱い魔物が溢れ出るだけだが、次第に深層の強力な魔物が溢れ出てくる。
これもダンジョン崩壊という。
区別するために前者を踏破、後者を溢れ出しと呼称することもある。
因みに踏破した後、ダンジョン消滅の際に中に居る人がどうなるかと言うと、ダンジョン消滅と同時に外に押し出される形で地上に帰還できるらしい。
書物ではそう書いてあるが実際に経験はないから少しドキドキしているのは内緒だ。
もし書いてることが嘘だったらここで死んでしまうかもしれないが、実際にダンジョン踏破して帰還するハンターが居るという事は、真実である可能性の方が高いだろうとは思うが…。
「回収するのは【暴食竜】だけで良いのか?」
シファが若干嫌そうな顔をしながら【暴食竜】を異空間収納に納める。
あのシュラの姿を思い起こせば創育感情になるのも無理はない。
俺だってあの死体を持てと言われればいい思いはしないだろう。
っと忘れる所だった。
「これも回収しといてくれ。」
俺はそこに転がっているものを指さし、シファに収納させた。
◇◇◇◇◇
気が付くと俺たちは【幻獣園】の入り口があった祠の前に居た。
「ふぅ。無事に戻れたみたいだな。」
俺は周りを見てシファ、シュラ、レベッカ、パズズの全員が居ることに安堵した。
ダンジョン崩壊の際にはダンジョン内に残っている魔物が外に押し出されないことが知られているが、何を基準に外に出れるものと出れないものが決まっているかが解明されていないのだ。
ワンチャン神族のシファやシュラ、魔神のパズズ辺りはダンジョンと一緒に消滅する可能性があったのだ。
「何やら急に寒気がしたぞ?主殿、何か良からぬことを考えていないか?」
『我もだ、刀身が縮こまってしまった。』
流石に付き合いの長い2人は勘が鋭いな。
というかシュラさん、刀身が縮こまるってなんだ?そういう仕様か?
流石に戦闘中に刀身が変化するようなことがあると戦いにくくて仕方ないぞ?
「おい、あんたら!!無事なのか!?」
そんなタイミングで声をかけられる。
声のした方を見ると、このダンジョンの守護・管理を任されている衛兵が2人、こちらに向かってきていた。
近づく衛兵に返事を返す。
「ああ、こっちは特に問題ない。…が、何があったんだ?」
勿論すっとぼけだ。
成り行きとは言え、ダンジョンを消滅させてしまったのだ。
多くの貴族にとって、ダンジョンは危険なものでありながらもしっかりと管理運用すれば豊富な富を生み出す資源として捉えられている。
それを勝手に崩壊させたとなれば問題となる可能性が高い。
ヴァン侯爵の裏が取れていない状態で揉めるのは避けたいところだ。
衛兵は俺たちの無事を確認した後ダンジョンの調査を行う。
「こりゃ、ダンジョン崩壊か?もう消滅してるみたいだ。中に入れない。」
「本当か?…1週間前に入った調査隊の奴らか?でも帰ってきてないぞ?」
「だが他に入った奴らなんて、この3人だけだぞ?それも今日入ったところだ。」
「そうだよな。流石に今日入ったところで踏破なんて無理だし…。」
「なぁあんた、ダンジョン内の様子がどうだったか教えてくれないか?」
衛兵は2人で意見を交わした後俺の方に話を振ってきた。
どうも俺たちがダンジョン崩壊を引き起こしたとは考えていないようだ。
まぁ普通の感覚なら1日でというのは無理だろうからそういう方向に流れるのは助かる。
それに、調査隊なるものが1週間前に入っているという情報。
今ここにいないという事は全滅しているのだろうが、彼らに責任を取ってもらおう。
「ダンジョン内と言っても普通だな。3階層までしか進んでないし。ここに入るのは初めてだからいつもとの違いとかは分からない。そろそろキャンプの設営をするかと考えてたタイミングで何故か気づいたらここにいたって感じだ。」
「そうか。やっぱりそうだよな。じゃあ調査隊なんだろうが…。」
「…もしかして、相打ちになった。とか?」
「ああ~。一番ありえそうだ。」
「悪い。この後このことを管理貴族様に報告しなければならんから俺たちはここで。あんたたちも気を付けてな。」
そういうと衛兵2人は詰め所に戻っていった。
どうやら要らぬ疑いをかけられずに済みそうだ。
俺達も一旦王都に戻ることにした。
因みに衛兵さんはもし溢れ出しが発生した場合はすぐ退避していいという事になっています。
駐在しているのは2人だけですが、ブラック職場という訳ではないのでご安心を。
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