78.踏破者、暴食竜を討伐する。
「さて、こいつを倒す方法を考えよう。特殊な外皮によって切断系の攻撃が効かない【暴食竜】を倒す方法は?シュラ君。」
【暴食竜】は鎌首をもたげると、すさまじい速度で頭を俺の方へと伸ばしてくる。
空歩を使って空中へ逃れ、【暴食竜】の状態を確認する。
首が異様に伸びているな…。
骨がないのか?
どうやら首より上だけで周囲を攻撃できるような手段があるようだ。
胴が異様にデカいせいで重鈍に見えるが、範囲内の敵に対してはかなり素早く攻撃を繰り出せるようだ。
『【虚無】を使えばいいのではないか?』
「却下。周囲に被害が出過ぎる。」
【虚無】は闇魔法の一つで、全てを吸い込む黒点を生み出す魔法だ。
吸い込んでしまえば外皮の性質がどうとか関係なく処理できるのだが、問題点が2点ある。
1つは無差別攻撃であるという事。
術者以外の全てを飲み込む魔法なので、仮に発動すれば仲間が飲み込まれる可能性がある。
また、周囲にある物質も全て飲み込むためお宝なんかがあっても入手できなくなる。
2つ目は攻撃対象が消えてしまうという事。
つまり、素材の剥ぎ取りが出来ず、討伐証明も出来ないという事だ。
何のために戦っているか分からなくなる。
『【採魂】はどうじゃ?あれなら外皮は関係ない。』
「却下。あれ程だと【採魂】だけで倒すには時間が掛かりそうだ。その間攻撃を避け続けるのは面倒だ。」
そう、こんな話をしている間も【暴食竜】は絶え間なく攻撃をし続けている。
俺はそれを空歩と縮地で避けながら、攻撃パターンと攻撃可能範囲を見極めていく。
というかコイツ噛みつき?飲み込み?攻撃しかしてこないな。
どうやらこちらを敵と言うか捕食対象として見ているようだ。
『ではいよいよ【魔法剣】の出番か?我にも被害が出るがやむかたなしかのぅ。』
「却下。そんな大技、こいつに使う必要なんてないだろ。」
『では、どうするのじゃ?』
「外からの攻撃が通じないのであれば、内側から攻撃すればいい。」
『ほう。道理じゃな。じゃが、具体的にはどうするのじゃ?あれに丸のみにでもされるのか?』
「そのために確認しておきたいことがあるんだよな。」
【暴食竜】はこの間も攻撃を続けているが、間合いを見切った俺にそれが当たることはない。
奴もそれを悟ったのか攻撃パターンを変えてきたようだ。
今まで伸ばしっぱなしだった首を縮める。
かと思えばそれを一気に伸ばし、口の中から何かを吐き出す。
「来た!!文献通りだ!!」
【暴食竜】が吐き出した薄緑色の液体をシュラで振り払う。
振り払われた液体は周囲の地面や木々に付着するとジュと音を立ててそれらを溶かす。
『あっちぃぃぃぃいいいい!!なんじゃ!?何が起こったのじゃ!?』
手元でシュラが喚く。
ダメージはあるようだが、致命傷と言うほどではない。
「さすが頑丈だ。今のは胃酸攻撃だな。」
『胃酸!?』
「【暴食竜】は形あるものなら何でも食べ、その強力な胃酸で全て溶かし消化するらしい。そしてその胃酸は攻撃方法の一つにも使われるんだと。」
『あらかじめ分かっているなら避けるのじゃ!!』
「それじゃ確認にならないだろ?さっきの続きだが、【暴食竜】を倒すためには内側から攻撃すればいい。でもあれに飲み込まれると強力な胃酸に晒されてしまう。」
『分かりたくはないが…、何を言わんとしているか何となく分かってきたぞ?』
「さすがだな、だから中に入って大丈夫か先に確認しておきたかったんだ。」
『嘘じゃよな?流石に其方もそんな鬼畜な事せんよな?』
「俺の考えた手っ取り早くあいつを倒す方法は、シュラをあいつに飲み込ませて、腹の中で本来の姿にもどってもらい、攻撃するという事だ。」
『じょ、冗談だと言ってくれぇ!!』
【暴食竜】が再度攻撃を仕掛けてくる。
飲み込み攻撃と胃酸攻撃を織り交ぜてだ。
俺は飲み込み攻撃の一つにタイミングを合わせると、大きく振りかぶってシュラを投擲した。
「行ってこい!!」
『ぎゃぁぁぁぁあああ!!鬼!!この鬼畜生!!』
投擲されたシュラは【暴食竜】に飲み込まれる。
カウンターで口の中に異物を放り込まれた【暴食竜】は攻撃を止め訝しがる。
異変はすぐに起きた。
「グゲェェェエエ!!」
【暴食竜】の体が更に一回り大きくなると同時に、頭を振り回しながら苦しみだす。
すぐに大きくなった体がぼこぼこと変形しだす、母親のおなかの中にいる胎児が蹴りを入れているような、そんな変形だ。
その光景をただ眺めていると、最後には【暴食竜】が大きく口を膨らませ、自身が取り込んでいた内容物を吐き出す。
それは大量の魔物の死骸だった。
どうも【暴食竜】は他の魔物を片っ端から捕食していたらしい。
案外階層移動をしてきたのは、下層の魔物を食べ尽くしてしまったからというような理由なのかもしれない。
そしてその死骸の中から本来の姿へと戻った胃酸まみれのシュラが現れる。
見ただけでちょっと引く光景だった。
『死ぬ!!熱い!!焼ける!!誰か!!誰か助けてたもう!!』
胃酸まみれのシュラは1、2歩歩いてその場に倒れこんでしまった。
【暴食竜】は体の中をずたずたに切り裂かれたことで絶命していた。
シュラも必死に攻撃したのだろう、体の中は凄まじい傷つきっぷりだった。
予想していたとはいえ。
「やっぱり直接行かなくて正解だったな。」
俺は汚物まみれで悶えるシュラを見下ろしながらつぶやいた。
出ましたね!!シュラさん拷問回!!
今後も定期的にシュラさんには明るくひどい目にあってもらいます!!お楽しみに!!
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