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77.踏破者、竜種に遭遇する。

レベッカが【大角鹿(ハンマーディア)】の肉に夢中になっているのを横目に見ながら俺とシファも食事を済ませる。


確かに旨いな。

普通の鹿肉を食べたことがないので比較はできないが…。

同系統の生物で比べた場合、一般的に動物肉より魔物肉の方が柔らかく、濃厚な味になるらしい。


「魔物肉がこんなの美味しいとは知りませんでした。」


串を空っぽにしたレベッカがつぶやく。


「まぁハンター職でもなければ味わう機会がないからな。中には魅入られすぎて魔物肉を食べるために森に住んでる奴もいるとかっていうしな。」


「わざわざ危険な所に住んでまで求めるようになっちゃうんですか…。」


「一例だがな。だがうちの場合は心配要らんぞ。シファが新鮮な状態のまま魔物肉を持ち運べるからな。」


俺は親指で隣にいるシファを指す。

シファの異空間収納は本人曰く無限に近い容量と、収納物の時を停止することが出来るらしい。

地竜(アースドラゴン)】もまるまる収納してるし、保管してもらってた魔物肉を取り出して食べても劣化はしていないしで多分本当なんだろう。


…世の中には一辺1mの立方体位の容量で時間遅延付きの魔法袋(マジックバック)遺物(アーティファクト)が国宝とされているんだがな…。


「シファさん!!ボク魔物肉いっぱい食べたいので持ち運びお願いします!!いっぱい狩って来ますね!!」


「主殿に(恋愛感情的に)手を出さないと約束するのであれば手を貸しますよ?」


「ジークさんにですか?そんな(物理的に)手を出すようなことしませんよ!!第一(殴ったりしても)効かないじゃないですか。」


「確かに(小娘の誘惑が)効くとは思わないけど、念のためにね。」


2人のやり取りを聞いてため息が出る。


「レベッカ相手に何言ってんだ。レベッカも目的を忘れるなよ?今回はあくまで【有角馬(ユニコーン)】だ。」


「はい!!【有角馬(ユニコーン)】のお肉どんな味がするのか楽しみです!!」


うん。

この子はそのうち野生に帰るな。


「それじゃあダンジョン攻略を開始しよう。」


俺達は結界を解除し、次の階層を目指して歩き始めた。





◇◇◇◇◇




「主殿、【竜種(ドラゴン)】です。」


「ん?確かか?」


俺の問いにシファが首肯する。


確かに事前情報では【有角馬(ユニコーン)】の角を得るために送ったハンターが【竜種(ドラゴン)】にやられたかもしれないということだったが…。


「6階層までの魔物は問題なく素材回収できているから7階層以降に出るのではって話だったんだがな。」


今俺たちが居るのは5階層だ。

アルカディア魔道具研究所のジルオールが言うには6階層までは安全だろうという事だったが…。

いや、更に前に遡れば【有角馬(ユニコーン)】も普通に討伐できていたという話だ。

それがある時から失敗が続くようになった。


「まさか、階層を移動しているのか…?」


そう考えれば一応説明がつく。

ダンジョンの魔物は階層間を移動しないのが普通だが、例外もいる。

ダンジョンの(コア)になった魔物と、突然変異で生まれたそのダンジョンのレベルに合っていない強大な魔物がこれに該当するらしい。

だがそうすると、この【竜種(ドラゴン)】は相当ヤバい奴だということになる。


「放っておくわけにはいかんな。要らぬ被害が増える。シファ、どっちだ?」


俺はシュラを抜き出すとシファに尋ねる。

シファは若干呆れたようにしながら森の一方を指さす。


「方角はあっち。距離は500mくらい。…それと、その嬉しそうな顔引き締めた方が良いよ?」


む。顔に出ていたか。


「ジークさんはなんで嬉しそうなんですか?」


「主殿は強い人や魔物と戦っていっぱい怪我したいっていう性癖を持ってるのよ。変態さんね。」


「おいコラ。」


「違わないでしょう?」


ぐ、正面切って言われるとなぜ強い奴と戦いたいのかって理由が出てこない。

怪我したいわけじゃないが…。

ほら、何かあるだろう?血沸き肉躍るみたいな感情。

うん。口での説明は困難だな。


「あ、気付かれたかも。こっちに真っすぐ向かってくるわ。」


「シファはレベッカのガードを。少し離れていてくれ。」


「了解。」


そう言うとシファはレベッカと共に【天翔(フライ)】を使って距離を取る。


間もなく、木々がなぎ倒される音と共に巨体の【竜種(ドラゴン)】が現れた。

フォルムは4足歩行のトカゲだが、胴が異様に膨らんでいる。

そして特筆すべきはその口だ。

何でも丸のみにできそうなほどの大きな口が付いている。


俺は過去に読んだ文献から該当しそうな魔物を思い出す。


「【暴食竜(グラトニー・ドラゴン)】か?大罪の名を冠したSランク魔物だったはず…。」


「グロォォォォォォォ!!」


暴食竜(グラトニー・ドラゴン)】がその大きな口を広げて俺を丸のみにせんと覆いかぶさってくる。

縮地をつかってその攻撃をかわし、すぐに反撃に移る。


「【空断】」


ズモ


!!??


やけに大きな胴目掛けて振り下ろした【空断】は表皮を割くこともなく受けられてしまった。


どうも皮膚が異様に伸縮性に富んでいるようだ。

しかもすさまじく柔らかい。


書物にあった【暴食竜(グラトニー・ドラゴン)】は人・魔物問わず何でも食べる大食漢で、その体は食べれば食べるだけ大きく膨らむとあったな。

つまり、あの皮膚は空断の圧に対して伸びることで裂けることを防いだわけだ。

これは戦い方を変えねばならんな。

この分だと直接切りかかっても奴を切り裂くのは難しそうだ。


『我、なにやら凄く嫌な予感がするのじゃが…。』


大当たりだよ、シュラ君。

大罪の名を冠した竜…。

他の種類を考えると、傲慢って対応する悪魔がシファさんなんですよね。

丸くなったもんだ。

もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!

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