57.踏破者、半妖の少女を鍛える(4)
レベッカとパズズはすぐに打ち解けたようで、2人で相談しながら戦闘スタイルを模索している。
こうなると俺は何もすることが無くなってしまうんだよなぁ…。
「また何か召喚してみようかな。」
「絶対にやめてくれ。」『絶対にやめるのじゃ。』
俺の横に立つシファと腰のシュラから同時にやめるよう言われてしまった。
なんでそんな嫌がっているんだろう。
確かに召喚は失敗したと言わざるを得ないが、結果オーライだった。
魔力には余裕があるし、何だったらもう何匹か有能な使い魔を用意してもいいかと思ったんだが…
「また私のライバルを増やすつもりか?」「我を殺す気か?」
俺が怪訝そうな顔をしていたからだろう。
2人は追い打ちをかけるように言葉を重ねてくる。
だが、何を言っているかは分からない。
ライバルってなんだ?
シュラが死ぬって何故?
良く分からんが、2人ともやめるべきだというのならやめておくか…。
確固たる目的があってやるべきである、というわけでもない。
仕方ない、俺も素振りでもするか。
俺はシュラを構えると自身に向けて【圧】をかける。
そして幼き頃に指導されたその型をなぞるように素振りを始めた。
シファが呆れたような顔をしていたが、それは放っておこう。
◇◇◇◇◇
「ジークさん、形になったと思います!!」
そう言ってパズズを肩に載せたレベッカが俺の元に来たのは素振りを始めて数時間が経過したころだろうか。
パズズと訓練を続けていた成果が出たようだ。
俺は【圧】を解除する。
「よし、見せてくれ。」
「はい!!」
そう言うと彼女はその場で膝立ちになり弓を構え、矢をつがえる。
すぐさま彼女の左肩にとまっているパズズが矢に魔法をかける。
「行きます!!」
レベッカが矢を放つと、その矢は低い弾道を維持したまま凄まじい速度で飛び、100mは離れている場所にある大岩に突き刺さる。
そして、矢が突き刺さった瞬間稲光が発生した。
「どうでしょう。パズズおじちゃんに風魔法を付与してもらって矢の飛距離を伸ばしたんです。あと、雷魔法を付与することで、矢が刺さった時に電撃が発生するようになっています。」
「我はおじちゃんではない。」
「ふむ、急所を外しても動きを止めることが出来るというわけだな。良いんじゃないか?」
「やった!!」
レベッカがパズズとハイタッチを交わす。
パズズの方は鷲の姿なので片足を上げてのタッチなのだが…。
それにしてもパズズの鷲姿、そこそこの大きさなのだが重くないのだろうか。
「狙いはどうだ?例えば、あの先にある木に当てるくらいはできるか?」
そう言って俺はターゲットに向けて指を向ける。
その指の先には平原にポツンと木が1本立っていた。
距離にしておおよそ150m。
木の幹の太さはガタイの良い兄ちゃん位だろうか。
つまり、ここからあの木に問題無く当てられるレベルであれば対人の実践に対応できる基礎はあるという事だ。
「ちょっと遠いですがやってみます!!パズズおじちゃんお願い!!」
「我はおじちゃんではない。」
もう2度目だが、清々しいくらいパズズの主張を無視してレベッカが弓を構える。
そしてパズズが魔法を付与する。
「ふっ!!」
レベッカが放った矢は先ほどと同じく低空を凄まじい速度で飛び、狙い通り木に突き刺さる。
風魔法付与のお陰で自由落下しにくくしたという所だろうか?
そのため目標を直線に近い狙いで打てるようになって命中精度が上がっているんだろう。
逆に山なりの軌道での狙撃が出来ないから射線には気を配らなければならんだろうが、まぁ立ち回りはまた実践でだな。
この腕と魔法の補助、そして眼があれば戦場にも出れるだろう。
予想外のプラスのアクシデントはあったものの1日で目途が立つところまで来たのは行幸だな。
「あの、ジークさん?」
レベッカが矢を放ったままの姿勢で声をかけてくる。
「ん?どうした?」
「あの木…動いてませんか?」
あの木とは、彼女が先ほど射った木の事だ。
「ああ、あれは魔物だ。【魔樹】というDランクの魔物だな。」
俺は何でもない事のようにそう告げる。
見ると【魔樹】は木の根をうねらせながらこちらへと向かってきているようだ。
「【魔樹】は蔦や枝を使った多角的な攻撃が厄介な魔物で、単純な近接での戦闘力はCランクレベルである反面、足が遅い。」
実際、【魔樹】の移動速度は子供が歩く程度の速度だ。
「スペースのない空間で戦うのは脅威だが、広いスペースで奴の攻撃範囲外から攻撃できる手段があればあれはただの的に成り下がる。レベッカ、あいつを倒してみろ。」
「や、やってみます。」
そう言うと彼女は立て続けに矢を放つ。
パズズの魔法付与速度も大したものだ。
3秒に1本くらいのペースで放たれる矢に次々と付与を施していっている。
このペースで魔法矢を放てるなら、索敵さえ怠らなければほとんどの敵は接近される前に倒せそうだな。
「よしっ!!」
見ると、【魔樹】はその身を大きく揺らして倒れる所だった。
矢とは相性も悪いが、それでも30本ほど射ったところで倒せたようだな。
「問題ないな。シファ、【魔樹】回収頼む。レベッカは【小鬼】と【原生生物】を探して討伐してみよう。」
「え、でも今、より強い【魔樹】倒したところですよ?弱い魔物を探すんですか?」
レベッカのその物言いに俺は苦笑を返す。
「ちゃんと動く魔物を射る訓練になるのと、あとは単純に依頼を達成しなければならんからな。ちゃんと依頼を達成しないと、金欠で飢えてしまうぞ。」
「なるほどです!!パズズおじちゃん。行こう!!」
「我はおじちゃんではないと何度言えば…っておい!!」
パズズを無視して走り出したレベッカを追いかけて飛んでいく様を見ながら、仲いいなぁと思った。
パズズさんは体重のコントロールも出来るのでレベッカちゃんに乗っているときは小鳥位の重さになっているそうです。
もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!




