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56.鬼神、悟る。

side シュラ(阿修羅王)


我は元々ダンジョンボスとして召喚され、そのダンジョンでジークと出会った。

彼は、和の神にルーツを持つ、木っ端とは言え神族である我を圧倒する強さを持っていた。

彼の強さに惹かれその行く末を見たくなった我は同行を申し入れ、了承された。


それから何があったかと言うと、気が狂いそうになるほどの退屈な時間が待っておった。

ジークは新しスキルを手に入れる度に、それを限界まで鍛えるのだ。

スキルは使用すればするほど熟練度が上がっていく。

特定のスキルは熟練度が上限まで上がると上位スキルに進化もする。

それをもう熟練度が上がらなくなるまで徹底的に鍛えるのじゃ。

普通、一つのスキルを極めるのに人族はその一生をかけると聞いたことがある。

剣の道は一生修行という言葉があったが、剣術スキルは剣豪、剣聖、そして剣神へと進化するスキルじゃ。

人族の一生では、その全てを修練に充てなければ剣神スキルを極められない(もしくは一生かけても極められないもの)という教えなのじゃ。


じゃが、ジークは時間の流れが遅いという【アビス】の特徴を最大限生かし、複数のスキルを極めている。

無論、ここに来れば誰でもそれが可能かと言うとそれは否じゃ。

普通の人間であれば1年と持たず気が触れてしまうだろう。

私ですら気が狂いそうな状況だったのじゃ。


ジークには孤独に対する耐性があったのだろう。

もしかしたら【アビス】へ来る前に何か経験していたのかもしれない。

予想外だったのは、彼が孤独を紛らわせるために我を仲間にしたわけではなかったという事じゃ。


だって話しかけても無視されるんじゃぞ?

2人で造る孤独に意味あるの?

後で聞くと鍛錬中は集中しているから気付かなかったとか言うんじゃよ?

酷くない?


スキルを極めた後はダンジョンを最初から攻略し直して次のボスへ。

ボスを倒した後はひたすらスキルを鍛えて、鍛え終わったらダンジョンへ。

結局【アビス】攻略までジークはルーティーンを変えることはなかったのじゃ。


今思い起こせば、70階層ボスのフェニックス戦は酷かった。

他に方法がないのだから、ただひたすら蘇生する相手を倒し続けるという手段は分かる。

じゃが、燃え盛る敵の体を何百万回と切りつける我はただ熱かった。

最終的にはこのままハンマーでたたいたら形状変わりますよってくらい赤熱するところまで行ったからの。

もうちょっと蘇生され続けてたら溶けてた。

あれは危なかった。


もう1つは100階層じゃな。

シファ自身が我とは比べられん程の高位の存在であることもあったが、彼女の使った【神の盾(ルーラー・シールド)】は最高位クラスの防御魔法じゃ。

ジークは気付いておらんかったが、空間遮断を行う魔法なので如何様にも攻撃を通さない魔法なのだ。

にもかかわらず、ジークはそこへ我を叩きつけたのじゃ。

それも何度も。

剛力スキルまで発動させてじゃよ?

その力で【神の盾(ルーラー・シールド)】に刀を叩きつける衝撃は全部我に返ってくるんじゃよ?

刀身はギリギリ保ったが精神は折れてしまったの。


だが、ジークは我の事をただの武器として見ているかと言えばそうでもない。

王女の誘拐に動いていた弟の打倒時には我のストレス発散の為と言って雑魚掃除をやらせてくれたのじゃ。

本来の姿に戻って暴れるのは正直ストレス発散になったの。

相手にもう少し戦い甲斐があれば良かったのじゃが、贅沢は言うまい。

そしてこの1件で彼が同族に対しても非情に刃を振るう存在となっていることを認識した。

シルバによる王女襲撃の際にも襲撃者を迷いなくその手にかけていたからもしやとは思ったが…。

ジークは敵とみれば容赦しないタイプのようじゃ。

もしくは【アビス】がそうさせたかじゃが…。

いずれにせよ敵対しないように気を付けねばの。


とは言え、待遇の改善は要求すべきかもしれない。

今日はダンジョンで拾った娘っ子を鍛えるために平原に来ていたのだが、何の話の流れかジーク自身が召喚を試すと言い始めた。


『何故か我も嫌な予感がしてきたぞ…。』


我の声はシファにしか拾われなかったようじゃ。

彼女の顔には諦めの色が浮かんでおる。

その気持ちも分かるのじゃ。


召喚の結果は予想通り大失敗。

失敗どころではない。

目的の幻獣ではなくより高位の魔神を呼んでしまうなど、逆にどうやったらそんな器用なことができるのか聞いてみたいわ。


まぁ、いくら高位の魔神とは言っても、ジークに敵うレベルではないじゃろう。





結果は予想通り、一方的にジークが魔神を蹂躙して戦いは終わった。

地に落ちた魔神に向かってジークは大胆に近づく。

その瞬間、地に突っ伏していた魔神が顔を上げる。

その瞳に諦めの色はない。


『のうのうと近づいてきたお前の負けだ!!【嵐刃(サイクロン)】【雷轟(サンダー・ストラック)】!!』


どうやら最後の逆転を信じ、高出力の魔法を躱しようのない至近距離から浴びせることを考えていたようじゃ。

じゃが、鉄壁のスキルを持つジークには魔法攻撃も通用せん。

我にはこの結果がどうなるかはっきりと(・・・・・)わかっておる(・・・・・・)


結果は、一切ダメージを追うことなく立っているジークが悠然と物語っていた。

魔神も攻撃が通用しないとみて諦めたようじゃ。


まったく、無駄な攻撃をしてくるような輩には困ったものじゃ。

ジークには一切の攻撃が通用しないというのに。


やはり我の予想通りの結果になったようじゃ。

ジークには一切のダメージがない。

そして、ジークが所持している我には(・・・)しっかりダメージが入っておる。

…もう我は死にかけじゃ。

魔神諦めろと心の中で連呼しておったことは内緒じゃ。


…誰か助けてたもれ!!

シュラさんはいじめられっ子が定着したと思います。

これからもどんどん悲惨な目にあってもらいましょう!!

もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、自分から武器になることを志願したんだけどな
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