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55.堕天使、俯瞰する。

side シファ(ルシフェル)


私は今ジーク、レベッカと一緒にコウナードの街を離れて平原に来ている。

簡単な依頼は受けているが、今日の目的はレベッカの強化だ。

戦闘をするうえで一番のネックになるであろう眼の問題は先ほど【単眼翼幻獣(アーリマン)】と契約を交わすことでクリアしている。


彼女はハーフ・エルフというだけあって普通の人族より魔力量が多い。

初めての召喚術もその適正と豊富な魔力で好結果を残している。

今は弓の飛距離が出ないという問題に当たっているが、さっき私が施した強化魔法(バフ)により何とか戦えるレベルにまでなっている。


彼女はジークの期待に応えている。

ジークも彼女の成果に満足しているようだ。

表情がいつもより柔らかい気がする。


…ジークの気が彼女に向く可能性はあるか?

それはあるだろう。

今は妹くらいの感覚だろうが、いずれ女性として彼女を見る時が来る気がする。

これは女の勘だが…。

いずれライバルになるのであれば、蹴落とす方法を考えておいた方が良さそうだ…。


そんなことを考えているうちにジークが召喚魔法を試してみると言い始めた。

要求されるまま魔術書を渡す。

これはこの世に2冊と無い禁書の1種だ。

まだ私が天界に居る時のコレクションの一つ。


「風魔法が得意な幻獣…。フレスベルク、こいつにしてみるか。」


彼が選んだのは大鷲の幻獣だった。


「フレスベルク!?流石に高位過ぎないか?恐らくだが人族に伝わる召喚魔法の書物には記載のないレベルのものだと思うぞ!?」


驚きのあまりつい口出ししてしまう。

フレスベルクは神族をルーツに持つ準神族のような幻獣だ。

風を操り、優雅に空を飛ぶ様は空の王者と呼ぶにふさわしい風格がある。


「ダメでも別に何も召喚されないだけだろ?一回やってみよう。」


召喚失敗した場合は確かに「召喚されないだけ」のはずだが、何か嫌な予感がする。

この男が動いて「失敗しました。何も起こりませんでした」となる未来が見えない。

止めるべきか?

だが彼は私が何を言っても止めないだろう。


『何故か我も嫌な予感がしてきたぞ…。』


今は刀剣モードのシュラも同じ感覚を持ったようだ。

私よりジークとの付き合いも長いだけあって良く分かっている。


そのジークはと言うと、闇魔法で生み出した暗雲を魔法陣の形に形成していた。

彼は【アビス】で膨大な時間修練を積んでいただけあり、魔力や魔法の制御が非常に上手い。

初めて行うであろう魔法陣の形成も問題なく済んだようだ。


「行くぞ。これに魔力を…流す!!」


瞬間、世界が変わった。

そう感じる程の濃密な魔力が辺りに放出される。


「ちょっと!!これ流石に流し過ぎなんじゃ!?」


焦った私は彼に声をかけるがその声は届いていないようだ。

周囲がまるで魔境にでもいるかのような状況になっていることにも気づいていなさそうだ。


「召喚!!」


彼が魔法陣に込めていた魔力が飽和したかのように大きく膨れ上がる。

その瞬間、魔法陣の形が変わる。


私も禁書の中身は何度も読んでいる。

だから分かった。

あれは魔神召喚の魔法陣だった。


魔法陣から大量の紫煙が吐き出される。

それにはジークの魔力が大量に込められている。


どうやら悪い予感は当たってしまったようだ。


『久しぶりの現世だな。』


わずかな威圧が込められた声が響く。

耐性のないものはこれだけですくみ上ってしまうだろう。


やがて煙が晴れ、声の主が現れる。

召喚されたのは獅子の頭に人の体、そして二対の羽を背に持つ異形の者だった。


『我は【嵐の魔神(パズズ)】!! 召喚者は誰だ!?我を現世に顕現させた礼に最初に食らうてやるわ!!』


私はすぐさま【解析(アナライズ)を行使する。


<><><><><><><><><><><><><><><><>

嵐の魔神(パズズ)

種族:魔神族


Lv.:625

魔力量:4658852


スキル:雷魔法Lv.MAX. 風魔法Lv.MAX. 闇魔法Lv.5 召喚魔法Lv.3 魔力自動回復Lv.4 

<><><><><><><><><><><><><><><><>


やはり高レベルの魔神だった。

Lv.850の私でも油断すればやられかねない相手だ。

魔神も相手を人族とみて完全に見下している。

だが、それも無理はない。

普通(・・)、人族はLv.で言う所の3桁を越えない程度の力しかない。

魔神からしたら取るに足りない相手なのだろう。


「俺が召喚者だ。」


ジークが一歩前へ出る。

通常、人族が魔神レベルの上位者を召喚する際には大人数が多くの時間を費やす【儀式召喚】を行わなければならない。

にもかかわらず、ジークは1人で召喚したと宣言した。

この異常性に魔神は気付かなかったようだ。


『ほう、我を呼び出すだけのことはあるな。なかなかどうして、強そうではないか。』


それはそうだろう。

ジークのLv.は1000を超えている。


「そりゃどうも。そういうアンタは弱そうだがな。」


それはそうだろう。

ジークからすれば相手は自分のレベルの半分ほどしかない相手なのだから。


『人間ごときが魔神に不遜な態度…』

「俺に協力する気はないんだな?」


ジークの雰囲気が変わる。

どうやら、魔神の未来が決まってしまったようだ。


『貴様、今すぐ殺して…』

「じゃあ死ね。【空断】」


そこからはジークによる蹂躙ショーが開催された。

Lv.を視ることが出来る私からすればやっぱりなというだけなのだが。

1点予想外なことがあったとしたら、ジークが魔神を眷属にしたという所だろうか。

魔神もジークに忠誠を誓ったようだ。


まぁ流石にあれは私のライバルにはならないだろう。

レベッカの元へ飛んでいくパズズを見送りながら1人息を吐いた。

シファさんの目標は神サマの打倒…のはず。

もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!

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