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9.出生の秘密

一件落着。

―数日後、


そういえば、あの少年ってどうなったんだっけ...?


...気づいたら、姿が見えなくなってたんだよな。

リリィはずっと探していたけど、結局見つからなかった。

気がついて、家にでも帰ったのだろう。

あれだけの力を放出したのだから、気が動転して、挨拶も忘れてしまったのではないだろうか。

そういうことにしておこう。深くは考えたくない。


リリィは、あの光の珠を練り上げた際に、

何か幻を見たらしく、彼は無事に生きているし、また会えると言っていた。


しかし、この一連の出来事を、リリィはうっすらとしか覚えていない。

一晩寝たら、記憶がいくつか抜け落ちてしまったようだった。


神聖力を無理に覚醒させたことによる部分的な記憶喪失なのかもしれないし、

本格的な覚醒をしないよう記憶を無意識に封印しているのかもしれない。

とにかく、神聖力のことに関しては一切忘れていて、

あの光の珠はあの少年がくれた水晶か何かだと思っているらしかった。

中に僕の霊体がいることも忘れてしまったようなので、声をかけずに見守っていた。


ただ、その少年と道中話した内容は、はっきりと覚えているらしく、ときおり思い出しては切なそうに、そして愛しそうに光の珠を見ている。

あのはた迷惑な少年に惚れているのは明らかだった。

おそらく、リリィにとっては初恋だろう。

なぜだか、僕はとても悲しかった。


それから、


…このことに関して、僕にはリリィには決して言いたくないことが一つあった。

重要な部分をほとんど忘れてしまっているリリィには、もちろん言わないけれど、

もし一切を思い出したとしても、リリィには絶対に言わない、と心に決めている。


―あの迷惑事件は羽みがえりの最終段階のときに起ったため、

僕自身には、とくに精神にものすごく影響があった。ドミノの再構築だ。

新しいドミノをとりいれて、大量になった(パイ)を新たに並べ直すような、繊細な構築が僕の中で起こり、僕の神聖力は大きく書き替えられていった。


あのとき、まず、リリィとあの少年の神聖力を融合させた。

それも特大の濃いエネルギーだった。


そして、そのエネルギーを僕の神聖力と馴染ませ、光の珠として固定化させ、

僕はそれを一週間、たっぷりとあびるように吸収しながら、孵化を迎えた。


加えて、僕らセント・イーグルは、鳥体を持つものの、生命としてはほぼ精霊に近い存在であり、

食べ物ではなく、神聖力によって構築され、生きている。

つまり、物理的な鳥体の性質よりも、神聖力の性質のほうが僕らの個性に大きな影響を及ぼしている。


端的にいえば、

僕はあの羽みがえりの際に、

リリィと少年の性質が融合された神聖力を受け継いだことで、新しい個体となった、といえる。

新しい個体でありながら、そのうえで、古い自分の記憶も有しているという、極めて特殊なセント・イーグルとなったのだった。


それを言い替えれば、、、言い替えたくもないが、

実質、僕は、あの少年とリリィの子どものような存在として生まれ変わった、

造り変えられた、とも言えるのだ。


二つの異なる神聖力を受け継いで生まれた、ということは、ほぼ単体のまま種を存続しているセント・イーグルにとって、交配によって生まれた新しい個体と同じだと認識される。


しかも、別々に受け継いだのではなく、すでに二つが融合されていた状態で受け継いだのだから、より一層そんなかんじになる…。


リリィの性質とも少年の性質とも違う、融合によりさらに強力になった神聖力を僕は受け継いでしまったのだ。


はぁ…。

リリィが母親なのは嬉しいし、構わないけど、

あんな得体の知れない少年が父親なのかと思うと、何だか複雑な気持ちで素直に喜べない。

受け継いだ神聖力により、性格なども多少似てしまうだろう。


まあ、自分のルーツ(性質)を知るという意味では、僕もあの少年(父親もどき)に会いたいのかもしれない。



************************


それから、3年の月日が経った。


リリィは17歳の成人を迎え、

ちょうどその時、島にお忍びで来ていたらしい帝国の第二王子が、誕生パーティで見たリリィに一目惚れをしたそうで、リリィを追いかけまわして口説いている。

はた迷惑な王子だ。

普段は、高い身分の者にも臆することなく接するリリィだが、

なぜか王子を非常に怖がり、誕生日を境に再覚醒させた神聖力を駆使して、必死で逃げ回っている…。


...そういえば、あの少年も、最近現れた第二王子と似たような髪色だった気がする。


鳶色と白金色の混ざった独特の色味は珍しい。

年齢的にも同じくらいだろうか。

あの時は霊体だったから、遠目で見た視覚的な情報しかわからないが。

まぁ、とくに関係はないだろう。


...ほんとに、はた迷惑な少年だった。

あいつが僕の父親だなんて...

しかもこんなことを話したら、リリィはきっと頬を染めて喜んでしまう。

あんなやつのことなんて、早く忘れてほしいのに。

こんな話はリリィには絶対に言えない。言いたくない。


と、出生の秘密を抱える僕なのであった。


聖獣の口調が初めのころと少し変わったりしているのは、羽みがえりの副作用みたいなものです。


幼鳥なのに老齢、ということを繰り返してるショタ爺鳥なので、もともと本人のアイデンティティも揺れやすいのですが、

さらに、ごちゃ混ぜになった...というかんじです。

わりと自分を見失いがちです。



番外編はこれで完結です。

本編が始まらないなかにも関わらず、

読んでくださってありがとうございます(^-^ゞ


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本当にありがとうございます。

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