7.覚醒
迷惑対処回です。リリィの能力が一時的にフル稼働します。
『よし、いい調子だよ。
そのなかに、僕とリリィが入れるようにしてくれ。
そして、そのバリア空間が僕たちを包んだまま、空に浮かんだり、飛んだりできるようにしてもらえるかな?』
「うん、やってみる。」
リリィは全身を巡る神聖力を練りあげ、僕たちをバリアで包むと、それを浮かせて空中に進めるようにした。
(わぁ。あっという間にできちゃった。
普通は、聖女といっても習得するのに何年もかかる構築なんだけどな。)
『…言いたいことはいろいろあるけど、うん。
すごくよくできてるよ!』
「ありがとう、白い鷲さん。
これで崖の上まで行けばいいのね?」
そう言うと、僕が答えないうちに、バリアは高スピードで上昇し、あっという間に少年が見える位置まで辿り着いた。
「白い鷲さん、彼のまわりに何か電流のようなものが見えるわ。あれは…?」
『神聖力の暴走だよ。未熟な体や精神で大きな神聖力が覚醒すると制御できなくなるんだ。
リリィも、無茶するとああなってしまう危険があるから、気をつけて。』
リリィは青ざめながらも、少年をしっかりと見つめ、何かできることはないかと訊いてきた。
『うん、少しむずかしいかもしれないけど。
リリィ。彼のエネルギーをリリィのエネルギーで包み込むんだ。
散らないように、破れないように、エネルギーの円で取り囲むようにして、徐々に彼のエネルギーをリリィのエネルギーに吸収させるんだよ。』
「わかったわ」
そう短く返事をすると、
リリィは目を閉じて巨大な神聖力の円形の膜を練り上げた。
直径10メートルほどだろうか。うん、でかすぎる。それ以上、何も言うまい。
その円形の膜でゆっくりと少年を全方位から包み込む。
そして、徐々に膜を厚くして、円を小さくしていく。
少年の稲光のような神聖力は、リリィの練り上げた膜に絡めとられ、触れたところから融合し吸収されていく。
神聖力の融合は、相性にもよるが、かなり難しいコントロールが必要だ。
少なくとも、こんな短時間にできることではないのだが、
リリィの集中力は凄まじいものだった。
(きっと、あの少年をそれほど助けたいのだろう。
優しく強い、僕の聖女。我が主として誇りに思うよ、リリィ...)
そんなことを考えるのは不謹慎かもしれないが、リリィの圧倒的な制御力に思わず目を見開いて感嘆するばかりだった。
みるみるうちに、
円は小さくなり、少年の神聖力を十分に吸収し、さらに練り上げられた神聖力の融合エネルギーができていた。
これほど練られた密度の濃い神聖力、それも融合された神聖力なんて、見たことも聞いたこともない。
その融合エネルギーは、
少年の身体を守るように覆い、今も溢れる神聖力を吸収している。
難易度でいうと、落雷の蓄電に成功したほどの快挙なのだが、
見た目は暖かそうな光に包まれているようにしか見えない。
少年の全身は汗ばみ、全身が赤く、気を失っていた。
どちらかというと、サウナでのぼせてしまった様に似ている。
『うん、それでもう大丈夫だよ、リリィ。
彼の意識はないけど、暴走は止まっているから、そのうち目を覚ますと思う。』
リリィはほっとした顔で嬉しそうにはにかんだ。
僕もほっとした。これで暴走の影響を受けずに無事、羽みがえりできるというものだ。
「本当によかったわ。ありがとう、白い鷲さん。
白い鷲さんがいなかったら、きっと彼に近づくこともできなくて、取り返しのつかないことになっていたわ。」
―うん、僕のほうこそ、リリィがいてくれて本当によかった。―
『ううん。お安い御用さ。
それよりもこの融合したこのエネルギーをどうにかしなくちゃ。
…リリィ。あのね、ちょっと色んな意味で気がひけるんだけど、
そのエネルギーを、僕の霊体と融合させてくれないかな??』
読んでくださってありがとうございます。
実際のところ、聖獣が異変に気づいてから、そんなに時間は経っていません。15~20分くらいです。
精鋭レスキュー隊並みの迅速な対応でした。




