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4.名のない聖獣

番外編は聖獣視点がメインになります。

リリィに初めて出逢ったとき、

僕は今の白いふわふわ幼鳥の姿ではなく、475歳の老鳥の姿だった。


僕たちセント・イーグルの種族は生まれながらに階級があり

―僕はクラウン―

つまり最上位に位置する階級に属していた。


子孫を残すにはセント・イーグルの中でも同じ階級のメスを探さなくてはならないので、

めったにつがいにはなれない。

しかも、上位階級になるほど数も少なくなるのだ。


だがそのため、僕たちの種族は単体でも種を存続させることができる。

再生核という、自分と同じ(多少経験値などにより改善・修復された)遺伝子と記憶をもった個体を卵(核)として産み落とす。


その周期は、7の70倍の年、ちょうど490歳になると、つがいを見つけたかどうかに関わらず、

自分の分身となる卵を産み出す。

一年間、卵の状態で再生核の孵化期間に入るのだ。

この現象を僕たちセント・イーグルは「()みがえり」と呼んでいる。


それから7年かけてゆっくりと成長していく。


僕がリリィと出逢ったのは、457歳。リリィは胎児であった。もちろん、偶然ではない。

クラウンには、創造神から付与された使命があり、守護対象であり主となる聖者・聖女が生まれる際には、主が胎児の段階から、主の居場所とその潜在能力を正確に把握することができる。

出逢った、というより、間近で認識した、というほうが正確だが。。


僕の場合は、千年にも及ぶ長い生涯でリリィが2人目の主として与えられた。

ちょうど、僕が二度目の()みがえりを間近に控えたころ、リリィが受胎したのだった。


当時は帝都近くの森に住んでいたのだが、主の出現と同時に主のいる方角と距離を察知した僕は、新しい主が美しいクレモント島にいると予想した。

すぐに南へと渡ったが、その頃の僕は老いていて速く飛べなかった。

帝都から5600kmほど離れたこのクレモント島まで来るのに、3ヶ月ほどかかってしまった。


くたくたになりながらクレモント島の領主邸にたどりついた頃、

すでに天――創造神の祝福が敷地内にも満ちていた。

クレモント夫妻はようやく妊娠に気づいた頃だったようで、

(やしき)はめでたい空気に包まれていた。

庭には、答え合わせをするようにレッドベリーの芽が小さな小さな葉を揺らしていた。

聖霊力が強いところにいつの間にか生えてくる植物の代表格だ。


とくに聖女が近くに住む場合はレッドベリーが育つ。

聖者の場合はライトベリーという黄金に近い輝きをもつ実をつける木が育つ。


そういえば、帝都にいた頃、王城の近くでライトベリーの苗を見かけた。

王家か臣下に聖者がいるのか、それとも、たまたま聖霊力が強い場所になったのかはわからないが祝福には違いない。喜ばしいことだ。


もしかしたら... 私のつがいも、帝都にいれば見つかったのかもしれない。


言い伝えによれば、

聖者にはメスのセント・イーグルが、聖女にはオスのセント・イーグルが仕えることが多いとされている。

帝都の近くに聖者が生まれたとすれば、

その周りにはメスのセント・イーグルがいる可能性が高い。

ただ、千年近く生きてきて、同格のクラウンどころか、他のセント・イーグルにすらまだ逢ったことないのだから、会える確率はそんなに期待していないけれど。


また、ちなみに

セント・イーグルはその長命も影響し、人間より高い知性をもつとされているが、

人に仕えているその性質ゆえか、性格や趣味嗜好は人間に近いものが多く、オスとメスでは若干特徴に違いがあり、人間の男女の傾向性に似ているのだそうだ。


一説によると、主が伴侶に出会うまでの馴らしというか、

主の疑似的なパートナーとしての役割を果たすものと考えられている。

実際に主となった聖者・聖女は、仕えてきたセント・イーグルとよく似た性格の人を選ぶ傾向性があるようだ。


…まるでヒナの刷り込みではないか…

と、自分が鳥でありながら主の父親か恋人にでもなったような気恥しさに、上気した羽根がふるふると逆立つ。


ともかく、そんな訳で、僕は出産前からリリィを見守っていた。

読んでくださって、ありがとうございます。

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